二杯のコーヒーと匂い

 あなたの中の私は、以外と小さかったみたいだ。

 多分優先度でいったら、三番目くらいかな。

 私の中ではあなたは一番なのに。

 そういったすれ違いが、積み重なってこうなったんだ。

 あなたは私の家に泊まっても、私の匂いを持ち帰ってはくれなかった。

 コーヒーは飲めないと言ったのにあなたは毎朝二杯のコーヒーを淹れる。

 何度もあなたが口にした好きを残してあなたは消えてしまった。


 私の口にはあなたの味が。

 私の頭にはあなたとの思い出が。

 私の心にはあなたとの幸せが。

 私の足にはあなたの歩幅が。

 私の手にはあなたと繋いだ温度が。

 私の声にはあなたの口癖が。

 私の胸にはあなたがつけたキスマークが。

 私の、中には。

 沢山のあなたがいる。


 三十六度が一人分足りない部屋には、いつも隣にいた猫背の匂いがまだ残っている。

 私の部屋には自分の匂いを残すくせに。


 強引に進む時間が、もうあなたが帰ってこないことを突きつける。

 あぁ、本気だったのは私だけか。

 愚かな会話を重ねたものだ。

 甘えすぎたかな。

 わがまま言い過ぎたかな。

 違う。


 最初から。

 あなたの中に私は少ししかいなかった。

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君と、僕。 しみしみ @shimishimi6666

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