泉のあと


「白化したところが森の中にありそうだな」


「だな、コジョウ・・・でも誰が見に行く? 馬は入れないだろう? 」


「いや・・・ ギリギリ通れそうな道がある。ラランも行って見たいだろう? 」


「ええ、リュウリ。行かなければならない、でも馬はあまり近くまではいかない方がいいと思うけれど」


「大丈夫さ、ララン。危険と思ったら自分で止まるよな、リック」

「ブルブル」、とまるで馬は答えたようだった。


 森の中に入る道は馬一頭分の幅で、ラランはリックを降りなければならないと皆思っていたが、そばの木々は枝が払われているようで案外簡単に通ることができた。そう長く歩くこともなく、先頭を行っていたキザンが他のみんなの方へ手の平を向け「止まって」という仕草をしたが、同じことを考えてか、馬はほぼ同時に歩くのをやめていた。

コジョウは手慣れたようにラランを支えながら馬から降ろし、ある一方を食い入るように見ているキザンとリュウリに加わった。


「何だ? 聖域の山みたいに上に白煙が立ち上っている」キザンは驚いて


「森の中に? 」リュウリも今までに見たことのない光景だった。


「水が・・・白化しているんだ、きっと。文献でしか読んだことはないが」


「だから森に入ってから朝もやのような、しっとりとした感じだったんですね」


「ラランはちょっとそこで待っていて、とにかく近くで見てくるよ」と男三人はすぐそばまで行ってみることにした。



「もともと・・・池か何かだったのか? 」

大きくはなかった。小さめの部屋ぐらいでそこが白化し、白い大きな木がまっすぐに生えているような感じだったが、もちろんそれには木の肌も何もなく、のっぺらぼうだった。狭い範囲なはずなのに、反対側にいる人間は全く見えず、まさにここだけの

「聖域の山」だった。

しかし、三人はしばらく見回って、すぐに引き返し、

「さあ、ラランちゃん、ここを離れよう」とすっとキザンがラランを馬に乗せもと来た道を帰っていった。大きな道に出てもしばらく何も話さずにいると、急に大きな声がし始めた


「ギャアギャア」

「カカカカ」

「カチカチカチ」


その声を聞いて、誰よりも優しく微笑んだのはラランだった。


「こいつら・・・全く頭がいいよな・・・もう降参だよ」


「ハハハ、そのまま警察に行けって言うんでしょう。他の国でもこんなですか?」


「ああ、でも、もしかしたら我が国のマグマがスピードでは一番優秀かもしれない」


「フフフ、褒められているわよマグマ、ありがとう、警察署まで案内してね」


ラランは楽しそうに空を見上げた。一行の周りにはもう十数羽のマグマが集まって、ついてきているもの、先導してくれているようなものと色々だった。


 姿はなかなか美しい鳥である。大きさはカラスぐらいで、お腹だけが真っ白で翼も嘴も青黒い、尾羽は長くその先は三本白の縞がある。羽の色は暗いが光沢があり、日を受けると美しく光る。羽を広げると、縁の黒と内側の白が一層鮮やかになり、鳴き声はけたたましいが、それ以上のものが彼らにはある。


「全くもう、話せないのをいいことに「自分たちがこの人たちを白化したところにまで連れて行きました、そして警察まで連れてきました」的なんだろ、餌のために」


「餌、というのは失礼だ。食事と呼んでやれよ、キザン」


「キザン、旅をするのにマグマを敵に回したら絶対にダメって言うじゃないないか」


「リュウリは大丈夫か? このずる賢さ」


「フフフ・・・でも違うかもしれない」


「違うって? ラランちゃん」


「待っていたのかも、白化したものを見つけて警察に話に言ってくれる人を」


その言葉に三人は黙ったが、マグマの数はどんどん増えているっている。


「こらこら警察鳥じゃない奴まで来てるだろう! いくら何でもこの数は警察から嫌な顔されるぜ! 走ろう! コジョウはいいよな、馬に乗れて! 」


「二人とも覚えろよ、じゃあラランと先に行っているからな、警察署で会おう! 」さっと馬に乗ったコジョウはあっという間に駆けてゆき、それに数が三十以上になったマグマがあまり高くないところを美しく一緒に飛んでいたが、リュウリたちの側にもまだ残っていた。


「僕たちを案内するために残ったものもいるってことなのかな? 」


「まあ・・・知恵の神は怖すぎる・・・」


マグマ、それはこの世界を代表するかのような存在なのだ。


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