第18話 休憩

探検家用のホテルにつく頃には大石も自分で自分の歩き、簡単な受け答えなら出来るようになってきた。


「うーん・・・、早めに寝よう・・・疲れてる・・・」


「まあ、そうだな 寝てれば少しは良くなるかもな」


深川はそう言って部屋の鍵を渡した。


「それ、お前の部屋のだからな」


いつもならいらない忠告も、今日に限っては意味をなしたかもしれない。


「あー・・・それじゃ」


そう言って大石はゆっくりと部屋へ、深川は先に温泉へと向かっていった。



まずは深川の様子はと言うと「ったく・・・」など独り言をつぶやきながら(原因の9割9分は大石だが)風呂場へと向かっていった。ここは日本人向けのホテルなので廊下には所々に書が掛けられていたり、生け花が飾られていたりする。そこが受けて日本人だけではなく、外国の人もよく来ている。


そんな廊下を進んでいくと、『男湯』と書かれたのれんがかけられた場所があり、そののれんをくぐっていった。



深川の悩みの種となっている大石はというと、なんとか無事に部屋にたどり着き、ちゃぶ台が置かれていたりする和室に荷物を置き(どちらかというと荷物を落とし、だが)寝室となっている洋室へと入り、ベットにダイブした。


「あーーー・・・」


うつ伏せになっているため、声がくぐもって周りに伝わっている。


しばらく手足をばたつかせ、時々声を発していたが、そのうちすっかり夢の中へと入ってしまった。



大石の部屋に置かれていた(落とされていた)荷物の中から、滑らかな音楽が奏でられる。


が、夢の中に入っている大石を現実へと引き戻すには非力すぎた。


しかしその音が大石を起こすのを諦めた後、比較的大きく、先程より威圧を感じるような音が鳴り響いた。


「んああ・・・ったく、なんだよ・・・」


大石がゆっくりと顔を上げ、音の鳴る方を探す。


音を発していたのはベットとベットの間に置かれていた電話だった。


「あーはい・・・?」


「おい・・・はやくしろ・・・あと30分でチェックアウトするぞ」


電話の相手は深川だった。


「は!?まじかよ早すぎだろ!」


「いきまり今日ベル博士達が学会で発表になったから来てほしいって言われたんだよ!早く来ねえと置いてくぞ!」


「わかった待て!すぐ準備する!」


そう言うと投げるように受話器を置き、着替えをし、お茶を一気に飲み、荷物をつかんでドアを開けた。


そして廊下を走り、ロビーで待っていた深川に飛び蹴りをかました。


「いってえ!」


「どうだ!早いだろ?」


「まあな、飛び蹴りをかまさなければ100点だ」


「さー!行くんだろ?」


「待たせといて・・・」



二人はホテルを出て、駅へと向かった。

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