ゆるラブっ lovers!

オギオウギ

大と唯 お家デート

「さて、説明してもらおうか」


休日の昼下がり。普通のカップルのお家デートであるならば、


「えへへ…。ゆうー」


「ちょ、美咲。ちょっと重いんだけど…っていてぇ!?」


「ゆうってばー、恥ずかしいからってそんな失礼なこと言わなくてもいいんだよ?…確かに最近ちょっとお腹が不安だけど…」


「いや、美咲は細いんだからそんなの気にしなくていいだろうに」


「えへへ…」


と、こんな感じで只々イチャイチャする展開になるのだろうが。

それに対しこの2人の男女は、


「だ、だって!火を消すには水が一番だって思ったから!」


「だからって何で俺に水をぶっかけたかなぁ!?」


片やびしょ濡れ、片や正座という普通のカップルではまあ無いであろう状態に陥っていた。


★ ★ ★ ★ ★


「で、何かいうことはないのかな?」


タオルで濡れた体を拭きつつ、男の方――雨水うすい ゆたかは目の前に正座をしている彼女――大城おおしろ ゆいに向かってそう尋ねた。


「えっと…み、水も滴るいい男、だね!」


「…………」


「ごめんなさい…」


【少し前】


事の発端はお家デート定番イベント、普通は逆かもしれないが彼氏が彼女に手料理を振舞おうとしたことから始まるのだった。


「唯、昼飯は何がいい?」


「おにく!」


「お肉ってお前……。もうちょっと具体的になんかないのかよ…」


 と言いつつもちゃっちゃと準備を始めようとするあたり自分の彼女の性格をよく分かっていたりするのだが。


「しっかしなぁ。肉か…。シンプルにステーキにでもしてみるかね」


「ステーキ!!素敵だね!」


ドヤ顔だ。ドヤ顔だぞこの人!?


「…………」


「何か言ってくれると嬉しいんだけどなぁ」


めんどくさいなぁと思ったりしてるので無視することにしたゆたか


「ゆー君は照れ屋だなぁ」


「どこが!?」


 どっちかって言うと失敗したのは唯の方のはずなのだが。


「♪~」


全く気にしていない様子で、笑顔で鼻歌なんかを歌ったりしている。無駄に上手いなこいつ。


★ ★ ★ ★ ★



 お肉の下ごしらえをしていると、リビングの方から視線を感じた。


「どした?」


「んーん。ただゆー君の料理してる姿ってかっこいいから見てただけー」


「………」


 流石に顔が赤くなった。いきなりこういうことを言われるとどう反応を返したら良いのか分からなくなる。照れながらも料理を再開する。

ステーキは普通にスーパーなどで売っているお肉を使う。唯が食べたいんじゃないかと思って買い込んでおいてあるものだ。


『あとは香り付けでもしてしてみるかな』


 そう考え、ブランデーを取り出し大さじ三杯程度フライパンに投入。

フライパンを素早く回し、全体に行き渡ったことを確認してフランベを行う。


「よっと」


 着火。鮮やかな火が上がる。


『これなら満足してくれたかな?』


 そう思い、ちらっと後ろを確認すると――


「えーいっ!!!」


 何故か金魚鉢を振りかぶった唯の姿が見え、そして……


【今】


 まあ、こうなったというわけだ。頭から盛大に水をかけられ、びしょ濡れになってしまっている。ちなみに余波でフランベも無事(?)消火。キッチンがまあとんでもないことになっているのだが。


「………」

 

 とても申し訳なさそうな顔でこちらを見る彼女。


「はぁ」


 ビクッ。肩を震えさせる唯。ゆたかはそれを見て苦笑いし、


「ま、心配してくれてありがとな」


 そう言って唯の頭をなでる。


「ほんとにごめんね?」


「良いって良いって。おれを心配してくれたんだろ?だったらまあ良いよ。ありがとな」


 別に悪気があってやったのでないのなら問題ない。服が濡れて食材が駄目になっただけだ。唯は悪くない。


「えへへ…ゆー君やっぱり優しいね……」


 そう言ってゆたかの手のひらに頬ずりをする唯。甘え癖は相変わらずのようだった。

 若干どころかかなり空気がピンク色になったがまだ昼ご飯を食べれていない。


「それじゃ、気を取り直して昼飯作りますか!」


「うん!私も手伝うよ!!」


 元気に拳を握る唯。そんな唯に笑いかけ、

 改めて、キッチンに向かうゆたかなのだった。

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