謎の部へようこそ

五川静夢

第1話 謎の部へようこそ

 ある私立高校の昼休み。

 いつものごとく、北村一樹は中庭で仲間たちと談笑をしていた。


「なるほど。木村は野球部に入ったのか」

「へぇ、美紀ちゃんは茶道部に入ったの? 渋いねぇ」

「お、裕二はサッカー部に入ったのか。お前、中学の頃からサッカーうまかったからなー。がんばれよ」

「田中はバスケ部かぁ。いいじゃん」

「小野さんは卓球部なんだ。卓球も面白そうだな」



 ――――すると、北村と談笑していた仲間たちの会話がぴたりと止まる。



「ん、みんなどうしたの?」

「……」

「え、おまえは一体なんの部活に入っているんだって?」

「……」

「俺? 俺はまだなんの部活にも入ってないけど」



 ――――その言葉を聞くや否や、仲間たちの顔色が一変する。



「え、部活に入ってないやつは話に入ってこないでくれって?」

「別にいいじゃねえかよ……」

「なにぃ、このメンバーで、部活に入ってないやつは俺だけ?」

「正直、部活に入ってない人って軽蔑の対象だよね……だと。女子から一番モテないタイプだよね……だと!? 美紀ちゃんまでそんなこと言う!?」



 ――――そのうち談笑メンバーの誰となくして、北村に差別的な言葉を吐き始め、罵倒し始める。 



 信頼していたはずの仲間たちから一斉に言葉の刃を向けられて、後ずさりする北村。



「なんだよ。みんな……。俺が部活に入ってないと知った途端、急に態度変えやがって。わかった……。わかったから落ち着けよ。部活に入れば文句ないんだろ!?」



 北村は動揺する。

 もはやダメかと思われた、その時。

 一種の暴徒と化したその集団から離れて、向かい側の休憩室のテーブルに見覚えのある顔の少女がくつろいでいるのが目に入った。



「あ! そこにいるの……。もしかしてマリアじゃないか?」

 そこにいたのは、北村の双子の妹。マリアであった。


「むぅ……」


 シャープな輪郭に、少しウェーブのかかった髪。

 いつも冷静沈着。彫りの深い整った顔立ちで女子でありながら、この高校の女子たちの人気を一身に集めている北村とは似ても似つかぬ彼の妹こそ、マリアなのである。

 そのマリアが、こちらへと視線を向ける。


「ようマリア」


 休憩室に向かって手を振ると、救世主の座るテーブルに一目散に駆け寄っていく北村。

 激昂していた談笑仲間たちも、さすがにそこまで追ってくることはなかった。

「ああ、おにぃ……」


「久しぶり。ここ座ってもいいか?」


「構わないよ」

「よかったー。マリアがいて。さっきまで、あいつらと話していたんだけれどさぁ、俺を除いた全員が部活に入っているからって横暴な態度とりやがってよ……。やれやれだぜ全く……」


 思わず、冷や汗を拭う北村。

 そんな、北村に双子の妹は落ち着いた口調で言う。

「災難だったね……。この高校は、特に部活が盛んな私立だからね。部活に入っていなければ、そいつは村八分にされることもあるのよ」


「えええ、そんな……。本当か!」

 北村の目が大きく見開かれる。


「む。おにぃ、そのことを承知でこの高校に来たんじゃないの?」

「ちがうよ! てか、なにそれ。暗黙のルールか?」


「いや……、この高校の校則のひとつだよ」


「校則かよ! どうなってんだよ。この高校は」


 すると、マリアは手にした缶コーヒーを一口飲み、話し始める。

「この高校では、最低でも一年以内に何らかの部活に入らなければならないんだよ……。だから……、そこにいる田崎くんは、フィッシング部に、あっちの鈴木くんは射撃部に、むこうの村田村くんなんか超能力部に入ったらしいよ」


 北村は、驚愕の表情を浮かべる。

「うそ、超能力部なんてあるのかよ。ていうか村田村、超能力使えんのかよ……」

「いや、あの人は全く超能力なんて使えないよ」


「意味ねえじゃねえか」 


「あの人は、単に部活に入る目的で入ったらしいからね」

「部活に入る目的……だと」

「あの人も先ほどのおにぃと同じ状況で村八分にされかけたんだろうね」


「村田村もか……」


 深刻な顔つきになる北村。


「つまり、経歴目当てで無理やり入部というわけかよ」

「うむ。ただ、その超能力部は問題があって……」

「超能力部が、どうかしたのか?」 

 二人の間に、何ともいえない空気が流れる。

 ごくりと、唾を飲み込む北村。

 やがて、マリアは重たい口を開く。

「最近はサッカーばかりやってるんだよ……」

 北村の目が点になる。


「へ、サッカー!?」


「サッカーで県大会上位入賞を目指して練習しているらしい。毎日、遅くまでグラウンドに残っているし……。超能力部のサッカーに対する情熱には、皆が素直に感心しているよ」


「いや、もうそれサッカー部だろ! 超能力一切関係ないじゃん!」

「そうだね。昔の、空中浮遊できると豪語するヨガが得意な髭面部長に対するあつい信仰はどこへいったのやら……」


「それは、それで、危ない光景だが! というか……、おれがグラウンドで毎回見かけていたのは、サッカー部じゃなくて、超能力部だったのかよ」

「そうだね。ただ、普通のサッカー部と彼らとはやはり少し違うのだけれど……」

「え、少し違うって……。やっぱり、試合中に超能力とか使うのか?」


「いや……、彼らはシュートやパスを放つたびに、『マッガーレ』と爽やかな声で言わなければならないの」


「おのだいっ……いや、小泉!」


 思わず、大きな声を出す北村。

 マリアは淡々と話を続ける。


「まぁ、似た例で言うのなら野球部だよね」

「野球部? 野球部も、どこかおかしいのか?」

「うん。野球部は卓球ばかりしてるからね。基本は」


「えええ」


「バットやボールが消えても気にしないくせに、ラケットに傷が付いたら大騒ぎして……。そんな連中なの」


「どんな連中だよ!」


「他には、美術部が水泳ばかりやってる……」


「おいおい!」


「学校のプールは彼女らで貸しきりの状態で、本来の水泳部はもはやプールを使えていないよ」

「もう完全に美術と関係ないよそれ! 美術することを放棄してるよ」

「あの人らに言わせると、水泳は水中のアートだということらしいね……」

「もういっそ、水泳部に改名しろよ美術部は! てか、本来の水泳部はどうなったんだよ」


「ああ、あの人らはもっぱら山登りに出かけているかな……」

「完全なる山岳部じゃねえか!」


「そうだね。ただ、水泳部の名残としてなのか、山登りの時は皆がスクール水着着用だそうで」

「凍え死ぬ気か! そんなところで水泳部の名残を残してどうすんだよ!」

「うむ……。ところでおにぃ」


「なんだ?」


「私のところにわざわざ来たということは、おにぃも部活に入りたいという強い意思があるのかな?」

 突如、マリアがまっすぐな眼差しを北村に向ける。


 そんなマリアに対して、顎に手を当てて、考えるそぶりを見せる北村。


「……どうなの?」


 心の中を見透かされるような感覚すら受ける、マリアの大きな瞳。

 その瞳にじっと見つめられると、北村はもはやこう言うしかなかった。

「……そうなんだよ」

「ふむ。それならば、いくつか紹介してあげようか」

「……ありがとう」

「射撃部はどう?」

「射撃部……? なかなか格好よさそうだな」

「高度な銃器のテクニックも要求されるけれど、そのまま自衛隊に入る子もいるくらいの本格的な部だよ」

「おお! そこいいな。俺、銃器好きだし」

「そうか。ならば今度、歓迎会があるから、参加してみるといいかもね」

「うん。よかったー。これで一件落着だな」

「あ、ただひとつ……」

「ん?」

「あそこの歓迎会は新入生が入ってきたら、上級生が改造ガンで新入生を狙い撃ちにする習慣があるから、くれぐれも、防弾チョッキは忘れないようにね」

「え……」

「去年の歓迎会では、新入生15人中13人が重傷を負って病院送りになったというニュースがあってだね……。いまだに復帰していないのです」

「後輩を殺る気満々じゃねえか! それを最初に言ってよ! 絶対入らないから」

「そうか。残念……」

「他の部たのむよ」

「ふむ……」

 顎に手を当てて考えるマリア。

 学年一の秀才美少女だけあって、その様子もかなりサマになる。

「ひまわり倶楽部なんか、どう?」

「なんか、名前がしょぼいなぁ……。何やってるのそこは?」

「主に、賭博麻雀だよ」

「……な!」

 一瞬、唖然とする北村。

 だが、即座に声を荒げる。

「名前からは想像できない悪いやつらじゃねえか! かわいらしい名前して平気で法律を破るなよ!」

「……」

「というか、もしかしたら、俺、昨日の夕方、そういう感じのやつらが賭博麻雀してるの見かけたかもしれ……」

 北村の言葉の途中、マリアはそれを遮るように、微笑みながら言った。

「ひまわり倶楽部の部室の前には、有名な看板が置いてあるんだよ」

「看板……だと?」

「そうだよ。そこにはこう書いてあるの」

「!?」


「『この先、日本国憲法は通用せず』って」


「……こわっ」

「でもこの間、ひまわり倶楽部の人が、普通に二人捕まってパトカーに乗せられていたのには笑ったよ。顔には後でモザイクがかけられたらしいけど」

「日本国憲法、通用してるっ!」

 もはや、完全なる突っ込み役と化した北村を尻目に、マリアは缶コーヒーを手に取ると一口飲む。 

 マリアの小さな白い喉が上下した。

「ところで、マリア」

「ん。なに?」

「学校も学校じゃねえか? ひまわり倶楽部みたいな危険な奴らを野放しにしておいてもいいのかよ……」

「……ふむ」

「学校もそういう奴らを取り締まってくれよって、思うのは俺だけかね?」

「それは無理だねー」

 即答するマリア。

「え……! どうして」

 マリアは続ける。

「ひまわり倶楽部には政府OBもいて、非公式にだけど、世界的にも容認されつつある。もはや学校にもひまわり倶楽部の手は伸びているかもしれないんだよ」

「ええええ! 学校もグルかよ」

「まぁ、私は前から気づいていたけど……」

「ど、どういうことだ」

「二週間前に、うちの学校自体もひまわり倶楽部に加入していたことを会見でさりげなく暗号的に発表したんだよね」

 北村の顔が青ざめる。

「そ、そんな一大事だったのかよ。俺は全く気づかなかった……。くそ、馬鹿だぜ。俺ってやつは……」

 すると、マリアは、渋い顔つきで天井を見上げる。

 そして、ため息混じりに言った。

「おにぃ。無理もないよ……。ひまわり倶楽部の暗号事件は、テレビでは深夜の放送でちょこっと流されただけだったからね……」

「なんでだよ!」

「かなり、マイナーなニュースだったんだよ……」


「え、どうして! うちの高校の教師たちが賭博麻雀やっているってことを大々的に放送するべきだろマスコミも! まさか、世界的な信仰を盾に裏で手をまわしやがったのか! そ、それでもやつら非公式なのには変わりないはず」


「それがさ……」


 深刻な顔つきになるマリア。

 北村にも、周囲の空気が重くなるのがよく分かった。


 マリアとしても、そのことは悔しいのだろう。

「その日に限って、ものすごく重要なニュースが相次ぎやがったんだよね」


「……く、なるほどな」


「例えば、中犬パチ公は、中型犬だったことが判明とか……」

「え……」


「チキンナゲットを現地で初めて買ったインド人(97歳)死去」

「……」


「胸あきタートルネック、世界中で大人気。在庫がないため、それを目的とした強盗事件が相次ぐ」

「……」


「『ランボウ最新作・ランボウ怒りの休日出勤』公開」

「……」


「劇場版、鈴宮カルビ『チョン。わたしの竹島とったでしょ。返しなさいよ』のセリフに抗議が殺到」

「……」


「美少女アイドル、クラフト麻衣ちゃん。握手会で倒れた、大きなお友達を完全スルー」

「……」


「このくらいかな……」


 マリアが深刻な表情のまま、その時の主なビックニュースを言い終えた。


「それは、確かにビッグニュース……なはずあるかいっ!」


 すかさず、突っ込む北村。

「今の世の中は恐ろしいからね。あはは……」

 微笑を浮かべつつ、缶コーヒーに手を伸ばすマリア。

 どうやら、缶コーヒーがこの美少女の動力源であるようだ。

 マリアの口ぶりはわざとなのか、それとも完全な天然なのかがよく分からない。もはや北村は妹に振り回されている様な気すらしてきていた。

「もう、ひまわり倶楽部は放っておいて、他の部を紹介してくれ! 他の部を」

 額の汗をぬぐいながら、北村は言った。


「まかせて」


 周囲に設置された自動販売機の無機質な音がやたらと強く響く中、マリアはその口を開いた。

「茶道部はどう?」

「茶道部かぁ……。結構、良さそうだな……。雰囲気も他の部と違って落ち着いていそうだし」


「確かに落ち着いてはいる……。ただし……」


「ただし……?」

 マリアの『ただし』にはロクなことがない。

 この辺になると、さすがの北村も感づいてくる。


「どんなオマケ付きなんだ? 茶道部とやらは?」

 額を手で押さえる北村。


「彼らは茶道部と名乗っているけれど、飲んでいるのは、ほとんどがコーヒーばかりなのですよ」


「茶道部でコーヒー……。外道どもめ……」

「今度辺りはキリマンジャロ産の豆を仕入れたいらしいね。というか、茶道部の部員同士で交わされている会話の9割がコーヒー豆についてだったりする」

「完全なコーヒー中毒者さんの巣窟だな。ここにも一人いるが……」

 そんな皮肉を言う兄を尻目に、マリアは言葉を続ける。

「まぁ、そこが気にいらんなら、パソコン部なんてどう?」

「どんなやつだ。もう、パソコン部といっても、パソコンをやっているとは到底、思えんよ」


「うむ……。今はもっぱら、部員一丸となってグラサンをかけてギターを弾いているよ。ナガブーチを」


「とりあえず、パソコン部の連中はギターを床に置いて、グラサンを取れ! 話はそれからだ」


「他には、幹部とかあるねー」

「なに、それ?」

「ひまわり倶楽部の幹部」

「ひまわり倶楽部もういい! ひまわり倶楽部の話は、もう禁止!」

「ふむ……」

「というか、マリア。もう、そういったふざけた部活はいいから、一番おすすめのところを紹介してくれよ。俺、そこに入るわ」

 すると、マリアは短く言った。

「いいよ。私が部長をしている最高の部を紹介してあげる……」


「おお」


「それはね……」


(ごくり……)


 緊張した様子でマリアの言葉を待つ北村。

 心臓が激しく鼓動を打つ。


「シベリア分校強制連行部隊」


「シベリア分校強制連行部隊……?」

「そう」

「いったい、どんな活動をするんだよ。そこは……」

 聞きなれない部名であるため、北村はマリアに問いただす。

 すると、マリアは手にした缶コーヒーをゆっくりと飲み始めた。

 その間、小さく上下するマリアの白い喉。

 やがてマリアは、空になったその缶をテーブルに軽く置きながら、暗い顔つきで言った。


「……活動内容は簡単なの。一年以上、部活に入っていない人間を見つけて、シベリアにある分校に強制的に連行するだけ。多少、暴力的になってもかまわない。相手は所詮、愚か者だからね。てへ」


「な……」

「ねぇ、おにぃ。この部隊に入らない? 本当にいいところだよ……。愚か者どもの悲痛な断末魔がいつでも聞けるし……」


「こ、断る!」

 思わず立ち上がり、テーブルに両手を叩きつける北村。


「そうかー、残念かな……」


「残念もくそもあるか! 正気の人間の入る部じゃないだろう。それは!」


「私の敬愛する、おにぃ、なら理解を示して、必ず私たちの部に入ってくれると思っていたのに……」


 マリアは、非常に悲しげな表情で兄を見つめながら言った。

 その瞳は憂いの色で満ちている。


「マリア! 正直、おまえには失望したぜ! 腐ったやつらだらけのうちの高校の部活の中でも、特にその部活は腐っていそうだな!」


「ふむ……。おにぃ……。とりあえず、おにぃは、どの部活にも入る気はないということかなー?」


「……ああ。正直なところな。聞いていて、がっかりしたぜ。この高校の部活動の腐れ具合にな。もうこうなれば、帰宅部しかねえよ!」

「そう……」

 マリアは、静かにため息をついた。

 そして、言った。


「ならば、仕方がないね」


「え……!?」


 いつの間にか、北村の周囲を先ほどまでの談笑メンバー達、そして武装した屈強な兵士達が取り囲んでいた。

「な、なんなんだこいつらは! 美紀ちゃんたちまで!」

「北村くん。君が部活動に入らないままの状態で、すでに一年以上が経過しているんだよね。でも、妹のマリアちゃんが、どうしても北村くんにラストチャンスを与えたいっていうから付き合ったの。いいお友達でいたかったのに、がっかりだよ、美紀は……」

 集団の中の美紀と呼ばれた女子生徒が言った。

「……うっ!」

 北村の額から大量の汗が噴出す。

 そんな北村の様子を見ながら、マリアは冷たく言って手を振った。

「おにぃー。シベリアでも元気にねー」

「マリア、貴様ぁっ。兄をなんだと思ってやがる!」

 この事態に、北村は激昂した。

 そのまま、マリアの胸倉を掴もうと手を伸ばす。

 しかし、行動を起こす前に北村の肩や腕を屈強な武装兵士達が掴んでいた。

「やっ、やめろおおおおおおお! 離せええええ!」

 暴れる北村。

 しかし、それもまた、屈強な兵士たちの前には全く意味をなさなかった。

「どうしますか?」


 兵士の一人がマリアに聞いた。

「とりあえず、シベリアに直送でー。えへへ」


「イエッサー」

 そのまま、兵士たちに抱えられる形で北村は休憩室から姿を消した。


「うわああああああああああああ!」


 室外からは、北村の長い断末魔がしばらく聞こえていた。

 

 



 ◆◇◆





 放課後。

 ひときわ大きな部室の前には二人分の人影があった。

 一方はマリア。

 そしてもう一方は、先ほどの美紀と呼ばれた女子生徒である。

「校則違反をする人は、これだからいけないね……」

 マリアは、そう言うと空となったコーヒー缶を足元に置き、軽く踏み潰す。


「そうね。それにしても、マリアちゃん……。シベリア分校強制連行部隊って何? そんな部ないよね。笑いそうになっちゃった……」


「……ああ、あれは、適当に思いついたのを言っただけだよ。でも、おにぃはたぶん、シベリアっぽいところに連れて行かれて、放置されるのだろうね」


「そっか……。かわいそう。でも、さすがに。わたしたちの本当の部名はなかなか言い出しにくいものね」


「そうだね……。とりあえず、おにぃにあのまま、昨日の賭け麻雀のことを通報されていたら、みんなしてやばかったからね。背に腹は代えられないよ」

「うん。そうだね。まさか、あの現場の目撃者がいたなんてねー。まぁ、とりあえず続きは部室に入ってから話そうよ。マリアちゃん」


「だね……」

 二人の姿がその大きな部室へと吸い込まれる。


 同時に分厚い扉が閉められ、内側から鍵がかけられる。


 そんな部室のすぐ脇には木製の古びた看板がひっそりと置かれていた。

 そして、そこに記されていたのは……。


「この先、日本国憲法は通用せず」

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謎の部へようこそ 五川静夢 @sizumu0326

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