騒霊少女と怪異殺しと過眠大学生と

柞原由奈

第2話 初月迷子

私、初月迷子みかづきめいこはお姉ちゃんが嫌いだった。

長くて艶々した黒髪に白磁の肌、赤く色付く唇に高くも低くもないスっと通った鼻筋。黒目の大きな目はパッチリした二重瞼で愛らしく、手足はほっそりして長いのに出るとこは出て引っ込むところは引っ込むといった何とも羨ましいスタイル。勉強は常に学年トップで運動も得意、趣味で始めたピアノはコンクール常連。賞も総なめしてると聞いて溜息が出たぐらい。

片や私ときたら色素が薄く細いだけで艶のない癖毛に雀斑だらけの顔、目付きはよろしくなく鼻筋はまぁまぁ整っているけど、手足は短く寸胴と真逆だった。せめてもの抵抗でバレエに連れていかれたけども長続きせず、ピアノもお姉ちゃんのように賞は取れずじまい。せめて不在の両親に変わって家事の一つでもと思ったら、そのまま任されてしまい今では私が主婦のポジションに。お姉ちゃんの料理下手なのは愛嬌で裁縫が出来ずとも白魚のような手を傷付けずに済むからそれでいいそうだ。夕ご飯はあなたが作りなさいって言葉に泣きそうになったのは中学生に上がるかその前だったか。お姉ちゃんのピアノのレッスンがあるからその日は夕ご飯を作ってちょうだいと言われて以来、作り続けて早三年となった。

蝶よ花よと育てられたお姉ちゃんに対して、出来る上がいるコンプレックスに悩まされ続けた私は彼女と同じレールに沿うのを止めさせてもらえずに数年が過ぎ、諦めた母からいらない子の烙印を押された。流石に泣きそうにもなったけど、もういいやと諦めの境地に至る。お父さんは何も言わないから私は初月家の次女ではなくただの家政婦代わりとなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

騒霊少女と怪異殺しと過眠大学生と 柞原由奈 @potetopie840

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る