醜い人間

華也(カヤ)

第1話

『醜い人間』



著・華也



元々、気づいていた。

私があまり良い感情を人に思わない事に。

他者の幸せを心から喜べない事に。

それが友達なら尚更だ。

自分の中でこの人はどうなろうと、どうでもいいと棲み分けしている人であれば、本当にどうでもいいって思えるのかもしれない。

でも、近しければ、近しい人程に、負の感情というのは、素直に表に滲み出てくる。

いくら、洗い流しても、取れない黒いインクのように、私の感情という名のシャツは、真っ黒に染め上がっているのであろう。

どこか、優位性を持っていたかった。

私が1歩先へ、いや、同じラインにいる状態をキープしていたかった。

勉強もスポーツも恋愛も…。

キッカケなんて些細な事。

いつもは見ないTwitterのタイムライン。

たまたま時間があったので、なんとなくスクロールしてみたら、"彼氏ができました"との呟きを見てしまった。

きっと、LINEや面と向かって、「彼氏できたよ!」と報告されたら、素直に「おめでとう。でも、ムカつく」

そういう風に言えたのかもしれない。

だが、別の形で見てしまった。

私が良い出会いが無く、日々の作業に追われる毎日。そんな中、1人だけ幸せになろうとしている。

これは、純粋なる嫉妬、妬みだ。

醜い。とても醜い。

芸能人やアイドルなどに負の感情を思うことは大にしてある事。

誰にでもある、羨ましいと言った感情なのだろう。

だから、私はSNSというものが大嫌いだ。

知らなくてもいい、知人友人の情報を目にしてしまうから。

人一倍気にしいの自分が、もっとも手を出してはいけないツール。

それがSNSだと悟っていた。

たまたまだ。なんとなくのつもりでタイムラインを見てしまった。

疲れてヘトヘトになりながらも、今日の復習や明日の予習などに追われて、恋人なんて作る暇もない。

作ったとしても、デートの時間を作ってあげることすらできないかもしれない。

常々、友達に話していた事。

本音を言えば、彼氏は欲しい。

でも、今はいるととても邪魔になりそうだからいいや…。

そんなスタンスを取っていたのに、いざ人の幸せを目の前に差し出されると、漂白して、綺麗になったシャツに、また黒いシミが滲んでいくのがわかる。

私は、私以外の人が幸福になる事が許せないんだ。


───────


幸せなんて、誰にでも訪れるもの。

幸せの形なんて、人それぞれ。

それはわかっている。

でも、私は身近な人の幸せを願えない、本当の意味での屑野郎なんだ…。

自分のことは、私が一番わかっている。

良い人?話しやすい?博学?優しい?彼氏さんが羨ましい?楽しそうだね?

そんなの、全て嘘で塗りたくったシャツを着ているだけの、醜い人間です。

私は、友達に彼氏ができた事が嫌なわけでは無い。

友達をその彼氏に取られそうで嫌なんだ。

そういう意味での嫉妬なんだと思う。

嘘です。幸せになってなってほしく無い。

早く別れてしまえと、負の感情が渦巻いてます。

私は王様か何かかな?と思うぐらい傲慢な考え。嫌になる。

自分のこの醜い想いが嫌になる。

私は、私が自分自身で本当に幸せになった時に、初めて、他者の幸せを喜べると思う。

そんな心の余裕のカケラもない人間に、本当の幸せなんて訪れるのだろうか?

私は無理だと思う。

この感情を、醜い感情を、心の奥の奥に隠して、隠し通して、私はこれからも友達として振舞っていけるのかな?

そして、私が抱えてるストレスは、どうやったら分散していくのだろうか?

Yahoo!知恵袋に聞けばわかるのかな?

ベストアンサーが出るのかな?

私は、私以外の人間が幸せを手にしている事が許せない。

他人であればあるほど、どうでもよく、親しければ親しいほど許せなく憎く思ってしまう。

私は醜い人間だ。

私が世界の中心でないと気が済まない。

私はどこかおかしいのかな?

私は幸せになってはいけないのかな?

私は本当に、彼女の事を友達と思っているのかな?

そして、私の…右手に持っているナイフは…どこに突き刺せば心が晴れるのかな?



END

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

醜い人間 華也(カヤ) @kaya_666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ