もう一度、この異世界で!

霜月 タクト

第1話 2度目のアレか?

 俺、水無月 優斗みなづき ゆうとは、勉強は中の下程度でスポーツもそれほど出来るわけでもない。もちろん誰にも負けないものなどあるわけがない。

 でも、そんな俺だが一つだけ自慢出来る事があった。俺は"異世界を救った"事があるのだ!


「はあ……あれから三年経つのか。長いような短いような」


 中学二年になりたての始業式の日。優斗は、いや優斗は異世界へ飛ばされた。


「なんか懐かしいな。たしかあの日もこんな感じの晴天だったよな?」


 同じく異世界を救った勇者であり親友の有村 鈴菜ありむら すずなに話を振った。


「ええ。あの日も今日みたいな晴天……ってそんな事言ってる場合じゃないでしょ?! 遅刻するわよ!」


 制限時間が残りわずかなことを思い出し、この状態を引き起こした元凶である優斗に強い視線を送る。


「そーいえばそうだった。始業式って何時から始まるんだ?」


「始業式が始まるまではまだ余裕があるけど、着席完了の時間まであと十分よ!」


「やべえ初日から遅刻はまずい。鈴菜走るぞ!」


「誰のせいだと思ってるのよ」


「悪かったよ! 今度飯奢るから許してくれ!」


 そう。

 二人は初日から遅刻しそうになっていた。

 理由は至極単純で優斗の寝坊だったりする。


——————九分後——————

教室内。


 教室内では仲のいい友達同士で盛り上がっているグループがちらほらみえる。


「はあはあ……間に合ったな」


「ギリギリ……だけど……ね」


 優斗は窓際の最奥で鈴菜の席はその隣だ。

 二人は席に着き一息つく。

 そして優斗は今の心境を呟いた。


「何はともあれ鈴菜と同じクラスで良かったよ」


「そう? 私は優斗と同じクラスで残念だわ」


「嘘だよな? さっきはホントすまん」


「ふふ、冗談よ」


 そんな話をしていると黒板側のドアを開き担任と思わしき女性が入ってきた。


「お前ら席に着け。今から点呼取って自己紹介するからなー」


 クラスメイトたちは先生の指示どうり、ぞろぞろと席に着く。


「よし、みんな席に着いたな。それじゃ自己紹介だ。まず私はこの二年四組の担任になった浅見 彩葉あさみ いろはだ。教師は二年目だがその前は自衛隊に所属していた。年齢は27歳、趣味はサバゲーと酒を飲むことだ。これからよろしくな」


 髪はお尻あたりまであるロングヘアー。身長は170cmはありそうだ。目は良い意味で鋭く、口角を上げてニヤリと笑った姿は、プロのスポーツ選手の様にも見える。

 優斗は鈴菜の肩をとんとんつついて小声で声をかけた。


「なあ鈴菜」


「なに?」


「あの先生強そうじゃね?」


 唐突な話に鈴菜は苦笑いで応じた。


「強いかどうかはさておき、どことなく来夏さんに似てるような気がしない?」


 来夏とは水瀬 来夏みなせ らいかの事で俺らと一緒に異世界を救った勇者の一人だ。


「たしかに言われてみれば!」


 優斗はついつい大声で返答してしまった。

 すると浅見は優斗をジロリと見て、


「ほほーう。水無月 優斗、お前は人の自己紹介も聞かずに有村と何を話してたんだ?」


「浅見先生、俺……じゃなくて自分は先生の自己紹介聞いてましたよ」


(座席表を見ないで俺の名前呼んだけど、生徒の名前もう覚えたのか?)


「なら言ってみろ」


 ニヤリと笑い、試すように聞いてくる浅見だが、優斗は気にも留めずに答えた。


「えーっと、名前は浅見彩葉。教師は二年目で前は自衛隊に所属。歳は27で趣味はサバゲーと酒を飲むこと、ですよね?」


「聞いていたのならいいが、私語は慎めよ」


「はい、すいませんでした」


 (めんどくさそうな人だな……)


「よし、次はお前らの自己紹介だ。まずは、そうだな水無月からやろうか」


 そうなるわな、と心で肩を落とした優斗だが、すぐに気持ちを切り替えて自己紹介を始める。


「自分は水無月優斗といいます。趣味は読書と体を動かすことで————」


 ピリッと。

 一瞬、静電気が発生した時のような感覚が肌を突く。

 それから数秒後だ。肌にピリピリとした違和感が伝わってくる。

 だが、この違和感の正体を優斗は知っていた。


「優斗! これって……!」


 鈴菜も感じた。普通に生活していても感じることの出来ない第六感とも言える感覚。


「ああ、間違いない!」


 


 その時、教室の床に大きな魔法陣が現れ次の瞬間、俺たちは床に吸い込まれるように落ちた。

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もう一度、この異世界で! 霜月 タクト @ShimotsukiTakuto

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