第13話


 33才、独身。咲子は私を羨んでる。


 そりゃそうだ。私はココって時に失敗しなかった。

見た目はソレこそ褒められる事も無かったけど、絵も演劇も評価されなかったけど、恋愛だけは失敗しなかった。分相応って言うか、男選びも高望みしなかった。

その判断が結婚に繋がって、子供を2人も産んで、新築の一戸建ても買えた。

見た目を褒められるだけの咲子には、得られなかったものだ。


(男は皆、咲子の見た目を好きになる。でも、美人は3日で飽きるってからね)


「咲子は美人なんだから、自信もたなきゃ!」

「美人って私を煽てますけど、メイクパワーですから。素顔、コレですから」

「充分キレイだよぉ?」

「やっぱり瑠璃チャンは、優菜チャンの褒め上手が遺伝したのね。

でも、私には無理だわ……だって、例え結婚したって、ママ友とか町内会があるでしょ?」

「まぁね」

「ソレって回避できない?」

「無理でしょぉ」

「なら無理。絶対に無理」

「何でぇ?」

「面倒臭い」

「えぇ?」

「ソレに、好かれないもの。絶対にママ友に村八分にされる」

「ぃ、いや、咲子は大丈夫だと思うよ? 寧ろ好かれる方だと思う。咲子みたいなのは」


 咲子みたないのは、却って気取り屋のママ友に好かれる。

美魔女です、みたいなママ軍団を作りたがるのがいるから、美人ママは即戦力。

主婦になったって、女を捨てたワケじゃない。女として見られたい。

旦那に期待できないなら、他所の男で良いからチヤホヤされたい。

だから、私みたいに見た目もドン臭いのは戦力外で、ママ友からも見下されやすい。


(ってか、その前に相手見つけなきゃ、結婚以前にデートすら出来ないから心配いらないと思うけど)


 あぁ、何かお腹空いて来た……私もケーキ頼んじゃお。


「そうだ。大里サンとこ、待望の第一子が生まれたって。咲子、連絡来た?」

「ううん。私、連絡先 変わってから教えてないから」

「教えてないの!? 何で!?」

「何でって、必要があると思わなかったから」

「……」


 散々 可愛がられて、その仕打ちって……やっぱり咲子は無神経すぎる!


「私、大里サン達には気ばかり遣わせて、申し訳なかったなって、

だから、優菜チャンの友達だからって、関わり続けるのは厚かましいように思えて……」

「咲子、なに言ってんのっ? そんな事 思ってたのっ?」

「優菜チャンにも いっぱい迷惑かけてたよね、今更だけど ごめんね。

でも、また良い話し聞けたぁ! 目出度いねぇ! 大里サンもコレでパパかぁ!」

「……」


 私が覚えてる思い出と、咲子から聞かされる思い出が重ならない。

私、咲子の何を見て来た?

もしかして、咲子は、私の思っていた咲子とは違うの……?

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悪意 坂戸樹水 @Kimi-Sakato

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