最終章 ちゃんと伝えて

「お父さん...」


黒子の顔を隠すマスクを外して机の上に置いた


父は子供のように泣きじゃくった


「...そうだったんだな...ごめんな...なんもわかってやれなかった...」


「ううん...僕こそ一人で育ててくれてありがとう」


「育てたなんて言えないよ...だってお前は一人で生きたようなものじゃないか...」


「...お父さん...」


息子はとても泣きました


ふたりは涙を流して今のお話をしました


いま息子さんは精神科医を目指していて自分のような人を助けたいと...


お父さんは前と同じ職場で働いていてもうすぐ定年であるけれど何もしてあげられなかったことを悔いていたことを...


息子はこれから目指すものは多分自分と同じ傷を味わったことのある人だからきっと理解してあげられる...お仕事を真面目に昔のお父さんみたいに頑張るね、と言いました


お父さんは泣きながら抱きしめて


「もしちゃんと資格が取れて仕事安定したらまた二人で暮らさないか?...昔は辛く当たってしまって嫌ならいいのだが...」


「僕今ね、お付き合いをしている人がいてその人といつか結婚を考えているんだ。そこで家族4人で暮らしたい」


「4人?」


「僕と彼女の子供だよ、結婚するんだから子供の一人ぐらい欲しいよ全くお父さんは」


「あぁ、そうだな...お前ならちゃんと育てられそうだよ、俺みたいにならないでくれよ」


「僕はお父さんの息子だからそれは無理だよ、正直親と子育ては似るものなんだ。それはどうしようもないけれど」


「...けれど?」


「僕はお父さんの真面目なところが大好きだった、当たられた時も少し落ち着いて考えたらお父さんは忙しいんだ...わがまま言っちゃダメなんだって思ったんだ」


「...ちゃんと分かってくれてたのか...」


「だけど僕は我慢しすぎた、だから自閉症っていう精神疾患になってしまってそれから連鎖するようにパニック障害と総合失調症まで起きてしまった」



「...俺は精神病のことは無知と言ってもいいほど分からないんだ...悪いが教えてくれるか」


「自閉症はね、人と関係を作るのが苦手だったり特定のもの以外の興味が全くなくなったりする病気で集団生活をして行くのが困難になる病気」


「それは生まれつきではないだろう?」


「うん...多分...」


「...初めてお前がお友達連れてきた時すごく嬉しかった」


「...僕覚えてないや」


「あのとき、この子ちゃんと学校馴染めてて良かったって思ったんだ」


「あんまり話さなかったもんね」


「だからすごく喜んだの覚えてる」


「いつからかはわからないんだ...精神病院でわかったから。ほかは自分で調べてわかった」


「ほかの症状は?」


「パニック障害は激しい不安によって自律神経がおかしくなって呼吸困難になったりするんだ。総合失調症は感情表現が乏しくなったりやる気などがおきなくなったりするんだ」


「パニック障害は病気じゃないのか?」


「パニック障害は体を調べても異常がないのが特徴なんだ」


「じゃあ仮病だと思っていたとしたらそれはもしかしたらパニック障害かもしれないってことか?」


「そうだね。そういう事だよ。」


「なら...お前がしんどい時ってのはあったのか?」


「あった...けど感情表現ができなかったんだ」


「それが統合失調症...?」


「そう。そのふたつが同時に起こるとまるで何も無いようだけど本人は死ぬほど苦しいよ。痛みの表現ができない痛みなんて。」



「そりゃそうだよな...タンスの角に小指ぶつけたら痛いけど痛いって言えなかったら辛いよな」


「フフっ確かにそうだね」


「な、なにがおかしい!わかりやすいだろうが!」


「いや、面白かったんだ。けどそういうことだよ


だから僕は家を出たんだ。なんでしんどいか調べたくて。」


「...立派になったな」


「お父さんは変わらないから安心するけどね」


「...あぁ、ありがとうよ」


「お父さん、紹介したい人がいるんだ。してもいいかい?」


「あ、あぁ」


息子はドアを開けてどこかへ行ったと思ったらすぐ帰ってきて入口にいたナースを連れてきた


「初めまして。お父様。息子様とお付き合いをさせて頂いているものです。」


「こ、これはどうもご丁寧にありがとうございます!えっと、ち、父です!!!」








こうやってひとはちゃんと幸せになれるんです


あなたはどうですか


わかるってところありましたか?


あったらいつでも誰でも話してください


話されたら嫌な顔しないであげてください


それが人生での助けを求める唯一の方法です

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生態子孫 @Regnet44

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