She is mine - 02

 妹を引き取った際、僕は本気でどうしたものか悩んだ記憶がある。

 あの時の妹は物臭な僕を超えるほど、自堕落としていたからね。


 物臭な僕と、自堕落な妹との生活は僅か三日にして破綻する。


「……なんじゃ、こりゃ」

 往年の名優の台詞をなぞらえ、やって来たのは姉さんだった。

「おい、お前ら、おま、死んでる!?」


 失礼な、生きてるよ。

「姉ちゃん、タスケテ」

「大丈夫か二人とも、どうせ物臭で自堕落なお前らのことだから」

 姉さんは地面に散乱したゴミを足で掻き分けながら僕達に近づく。


「掃除しなかったんだな、面倒だからか?」

 うん。

「こういうのは年上の仕事でしょ」

 妹の屁理屈に対して僕は丸い目を向けた。


 妹が今言った世迷言をどこの社会通念が導き出したのか、ありえない。

 僕は妹の無責任な発言を疑うばかりだ。


「御託はいいんだよお前ら、何でこうなる前に掃除しなかった」

 姉さんは「たかが三日不在しただけでよくもここまで汚すな」と言い。

「今から大掃除をするー、異存はないなお前ら?」

 抑揚のない声音で小首をかしげ、僕らの恐怖心を煽って腰をあげさせた。


 黙々と掃除機を掛ける僕に対し、ぶつくさと愚痴を零しながらゴミを仕分ける妹。

 僕達は本当に血が通っている姉妹であっているのか?

「姉さん、掃除機掛けるの楽しい?」

 妹は僕を『姉さん』と呼び、姉さんのことは『姉ちゃん』と使い分けていた。


「口を動かすより手を動かせお前ら、お前らはこの世に存在する価値もない人間の屑に成り下がりたいのか? 違うのならサーイエッサー、だぞ」


 掃除している間、姉さんは往年の名優の物まねをしながら僕達のお尻を叩いた。

 妹は「馬には人参の方が効果あるよ、姉ちゃん」と猫なで声を繰っている。


「四季ぃ、お前が望む人参とは?」

「パソコン、あれがないと私生きていけないよ」


 ここで妹に付いて注釈を入れよう。

 彼女は姉さんと同様に草摩姓だが、僕との血の繋がりは分からない。

 身長は一六四センチで、僕よりやや上背がある。

 病的な痩躯と、特徴的なのは目に付けている近眼用の丸眼鏡。

 今年で一六歳になるらしいけど、学校には通ってないみたいだ。

 姉さんは彼女に弱くて、いつも彼女の甘言に翻弄されている。

 特技はPC全般の不登校少女、それが僕の妹の正体だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

物臭僕の愛猫は美しい サカイヌツク @minimum

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ