第51話2-13-3. インターハイ全国大会③

さて大分時間が空いたが僕らの第2戦開始だ。

アフロさん、今度こそ棄権するよね?



先鋒戦―――ダークアリスがまた辛勝だ、また格上を倒した。

次鋒戦―――遠距離戦同士だったが、アフロが快勝だ。

中堅ダブルス―――赤の巨人が結界外まで響く攻撃力で闘技場に大穴開けて完勝。

副将―――オールバッカ―は要所要所で失敗し敗北。

大将―――すでにチームは勝っており僕は勝った。


何故だ?


2戦目も勝っちゃったよ。

何やねんこれは・・・。明日のインターハイ本戦へ進むメリットは全く何もない。であればアフロがみんなを戦わせる理由は一体なんだ??


考えてもよく分からないが。まさか思い出作りのために全員勝利させる気では?

なるほど、思い出作り・・・きっとそうだ。であれば星崎さんとオールバッカ―にはまだ個人では勝ち星がない・・・。

次に2人とも出すつもりか?・・・2人が勝つまでやるの?




そうこう思っているうちに3戦目開始だ。今度はインターバル短かった。

どういうつもりか、隣にいる緑アフロに聞いてもいいが、どうせ3戦するなら勝っても負けてもいいのだろう。まあ思い出作りは大事なのだろう・・・しかし今回、僕は気合が違う・・・恐らく人生最後の東京観光になるのだ・・・きっとおいしいものをタイガーセンセがおごってくれるはずだ。


先鋒戦はダークアリスだが、固定していく気なのか。

ダークアリスは魔装武器はまだ使用できない、身体能力と自己回復能力は中々高めだがスピードの制御もできてはいない。来年は活躍できるだろう・・・このまま伸び続ければ、その僕の評価は変わらない。近接で打撃しか攻撃方法が無いのであれば相手からすればいくらでも戦いようはある。


今ダークアリスが戦っている相手は何がしたいのか。足を止めて闘技場中央でアリスはキック、向こうは両手にショートソードを持って攻撃し合っている。アリスもわざと攻撃を避けないし、向こうの選手もそれに触発されるかのように攻撃を避けない。

経験、TMPAは向こうが上、竜族であるアリスは防御耐性と自己回復で防御は上だろう。


・・・相手がムキにならなければ負けたのはアリスだっただろう。


「はぁはぁ」戻ってきた有栖は上半身が傷だらけ・・ボロボロだ・・・。

あとは僕が組んだアリスの魔装鎧もかなり硬い。その辺がアリスの勝因か。

「すぐ回復するね、有栖ちゃん」星崎さんの回復力なら問題ないだろうけど。

「勝ったよ、先輩」ズタズタのダークアリスはこっち向いて親指を立てている。

「ああ、うん」僕は気の無い返事をするが・・・全国大会が終わったら一度駆け引きも教えないといけないな・・・こんな命の削り合いは・・・。


次鋒はオールバッカ―だ。

相手は強敵、向こうのチームのポイントゲッターだ。いつもは大将をしているが次鋒で出てきた。


相手は試合巧者だ、距離感が上手い。

オールバッカ―は離れた相手に近接攻撃で切り込み、近づかれると遠距離攻撃を慌ててしている。それでもオールバッカ―は結構相手の攻撃を避けたしガードしたし、そこまで悪くは無い。

「おおお!覚醒魔法!」

無理だよ、奇跡はそんなに起きないし密着されていて時間のかかる覚醒魔法はただの的になる。

オールバッカ―は敗北した。



中堅ダブルスの青木・村上ペアは強い。かなりの強さだ。

赤ノ巨人と鉄棒のコンビはダブルスではトップクラスかもしれない。


相手は近接攻撃と遠距離攻撃のバランスコンビだが初手で赤の巨人の鉄棒ブンブンをくらい、近接攻撃担当がバトルスーツが半分消し飛ぶほどの衝撃で気絶。遠距離担当は逃げつつ魔法を撃ちまくったが、あっという間に追い詰められて撃沈した(地面にめりこんだ)。


2勝1敗。



副将戦―――アフロは相性が悪かった。ガードしつつ接近する金竜の召喚士が相手だったのだ。アフロの攻撃は遠距離でも攻撃力が落ちにくく弾速が早いのが特徴だ。近距離で張り付いてくる相手とは相性が悪い、実戦では反撃不可能の距離を保つのも可能だろうが闘技場では無理だ。アフロは惜敗した。


2勝2敗だ。


大将戦―――僕の出番だ。全く戦う意味が無いので棄権するか迷ったが、わざと負けるのは時間がかかるので勝つことにした。負けてもこの予選、Z班が本戦に進む可能性が高く大学への推薦のこともあるしな。

相手は背の高いヒョッロっとした紫の鎧が特徴的な毒竜の召喚士だったが・・・既に僕は対戦相手の真横にいるが、あまりのスピードに見えていない・・・というわけで掌底を腹部に決めて相手は吹き飛んで勝利した。


3勝2敗で一応、このチーム戦も勝って予選3戦全勝で明日の本戦に進むことになってしまった。なんでやねん。


予選は82チームが参加予定であったが参加したのは80チームで本日の予選で20チームに絞られた。江上明日萌さんが来ていてもしやと思ったがチーム“ドラゴンディセンダント”も全国大会に参加しており、つまり校内予選に出ていなかったから地区大会へ出ていたわけだ。“ドラゴンディセンダント”も本戦に駒を進めた。

1高の超強豪チーム“ブラインドガーディアン”は“Z班第二部”と同じグループにいて負けたようだ。なんと“Z班第二部”も本戦へ駒を進めた。“ブラインドガーディアン”は校内予選ではグループAに出ており“ホーリーライト”に負けている。


まあそんなことどうでも良いのだ。

観光はみんな疲れており行く雰囲気ではなかった。まあ明日があるが。




ホテルにチェックインというのを自分で初めてした。Z班9人で5部屋借りたようだ。全員9階の部屋だった。


僕らは部屋に荷物を置いて休んだら18:30にホテルのレストランで食事だとのことでタイガー曰く遅れないようにとのことだった。


「まだ時間あるね?アフロ?、食事後、今晩は誰かの部屋に集まるのかな?」

「もけ、まあとりあえず少し休め」

「ダークアリスと村上君は疲れてるだろうね」

「1時間寝るのである」そう言ってアフロはさっさと寝てしまった。


トゥルルルー。

備え付けの電話が鳴っている・・・。

アフロは既に寝ているんかーい。


仕方ない、電話に出よう。

「はい905号室です」

「ああ、よかったジンメクン、無事ね?」

「はあ?」

「すぐに912号室に来てくれる?危険が迫っているの、すぐよ」

「危険が?先生たちにですか?ではアフロも・・・」「いいえ1人で来て、来れば分かるわ」


何も察知できないが・・・タイガーセンセの部屋で何かあったのだろうか。

そんなに会話に緊迫感も無かったし・・・魔力探知ミスとか?

なんだろう?危険って・・・星崎さんも一緒にいるはずだが。


察知できないもの・・・魔力の帯びてない時限爆弾とか?解除なら確かにアフロより自分は適任だろうか。


えっととりあえずカードキーだけは持って行かないと。



コンコン。

慎重に僕は912号室をノックする・・・何も感じないが。

「はいはい、もけキュン。どうぞ」

「ああ。星崎さんも」なんだ?緊張感の無い?・・・危険ってなんだ?

この部屋じゃないのか?もう一人の女性は・・・ダークアリスは別の部屋に1人で泊ってるのか。


なんだ?この言わばほのぼのしたような雰囲気は。

「じんめクン、まあお茶でも飲んで飲んで」

「はい・・・鳥井先生」

よく分からないが紅茶を入れてくれたようだ。2人ともすでに着替えている。

「じんめクン、大丈夫なの?」

「もけキュン?大丈夫なの?」よくわからない面持ちで2人は僕の顔を観察してくる。

「なにがですか?なにか危険が?」


なんか妙な雰囲気で2人とも困ってしまっている様子だ・・・精神感応系は竜族には効かないし・・・タイガーセンセは僕より匂いに敏感だし、星崎さんは僕が見えないものを見ている可能性がある。だとすれば空間歪曲魔法か何かの干渉が・・・。

「先生しくじったわ。星崎さんに言われて気が付くなんて」

「はあ?」

目を閉じで祈るようにしてタイガーセンセは謝ってくる。

「男子なんかと同じ部屋にしちゃってごめんね」

「もけキュン危ないよ」

「はあ?」なんで・・・なんでやねん。


「いっしょにお風呂とか、まさか寝るなんて危なすぎるでしょう、先生が気づいていれば」

「もけキュン、そんなの絶対だめ」

「はあ?あの危険というのは?・・・」何の話やねん。

さてはどうでもいいな・・・この話し・・・聞き流そうか。


「お風呂に誘われたりしなかった?2人きりになっちゃだめよ」

「先生?お風呂は大浴場があるんでしょう?このホテル」

「ぶはぁ!・・・吹いちゃった。だめよ、もけキュン。大浴場。それだけはダメ」

なんなんだ?この2人の状態は?


「じんめクン、今晩はここで3人で寝ましょう。」

「はあ?」「鳥井先生、それはそれでまずいんじゃないでしょうか。いろんな意味で、もけキュンを守って。ミイロミューン」

なんのコントなんだこれは・・・まあどうでもいいけど危険って・・・なんだったんだ?お茶したかっただけ?


うーん?謎だが・・・まあいいか・・・なんのリスク要因も見つからない。

ふう・・・茶でも飲むか・・・差し当たって9階って結構見晴らしいいなあ。



その後、ホテルの2階のレストランで食べた夕食はとても美味しかった。

まあ移動もあったし、予選はみんな疲れたようだ。

その夜、ダークアリスと村上君は予想通りダウンした、あっという間に寝たようだ。

タイガーは教師たちの集まりに呼ばれたとのこと。


とりあえず他のメンバーは青木君とオールバッカ―の2人部屋に集まることにした。

僕とアフロと青木君とオールバッカ―、そして星崎さんが集まりトランプをしながら怪談話をするという会になったが青木君が寝落ちしてオールバッカ―も眠そうで23時には終了した。むう・・・しかし・・・トランプ透けて見えるのに・・・またアフロに負けた・・・なんなんだ?


「よし、さっさと寝るぞ、もけ。明日は早い」

「OKアフロ」僕はどうせ左肩の呪詛の疼痛で寝れないのでなにか新しい術式でも考えるとしようか。




―――二日目、本戦リーグ開始なわけだが。

あれ、Z班は朝からサボって観光じゃないのか?

なるほど一応顔だけ出してからエスケープするのか。

ん?やっぱり昨日よりも観客が増えてきているな。


っていうか大会関係者はバカだよな、リーグ戦の次はふつうトーナメントだろ。

また20チームを5つのグループに分けるのか。そしてまたリーグ戦で総当たり戦。


Z班は20チームまで残っただけ本当に大したものだが、TMPA平均値を見ていくともううちのZ班は20チーム中かなり弱い部類だ。もし戦うにしてもどこのグループでもきついだろう。


誰か近づいてくる。

「お手柔らかに・・・じんめクン」DD-starsの不知火玲麻さんだ。なんだかうれしそうだが罰ゲームで僕に結婚を前提にお付き合いしたいとか言ってきた子だ。全くそんな罰ゲームをさせるなんて。恋人の纐纈君も大概だな・・・人として失格だな。

「いえいえこちらこそ」


また誰か後ろから来た。こんどは2人だ、ピンクのツインテールが僕の後ろで揺れている。

「おはようございます。神明サマ、由良でございます。あんな安いホテルに泊まってらっしゃるとは気が利かず申し訳ございませんでした」花屋敷華聯さんといっしょに丁寧にあいさつしてきた。由良は今のところ信用できるかもしれない。

「2人ともおはよ」軽くあいさつしておこう。


微妙に由良の目が妖しく光る・・・獲物を狩る猫科のような雰囲気だ。

「あーら誰かとおもえばワンモアレマさんじゃないですか、わたくしのチームメイトの神明サマに何か御用でしたら・・・こちらで伺いますけれど?」

対するレマさんは目を閉じてるが自信満々の表情だ。

「わたしとこの方の進む道はいずれ未来で交差するが約定、もともと不知火家は竜神明王に仕える巫女の家系ですからね。調べてみたらウキウキしてきましたわ」

何だか分からないが巻き込まれるのはゴメンだな・・・。

「ふぅ~ん?はぁ~ん?恋人の纐纈さんはどうなさったの?」

「ふふ、だれの話ですか?」

相対している2人が一歩ずつ近づくだけで一気に空間が狭くなるような濃密な気配だ・・・戦う気か?どう考えても僕は関係ないから・・・逃げようか、どうするか・・・。

なんか城嶋由良と不知火玲麻さんはなんだか相性悪そうだな。さらにだんだん2人は近づいていく。顔がぶつかりそうになるところまで近づく。

「ホホホホホ。レマさんって結構節操ないんですのね」

「わたしは一途ですよ、い・ち・ず、ね?」こっちを向かれても・・・巻き込まれるのはゴメンだ。

最期は・・・2人ともニッコリと僕を見て笑い・・・戻っていった・・・怖い・・・。



―――Z班はグループ2にグループ分けされた。

我々をいれて全部で4チームいる。

グループ分けされ本日リーグ戦で対戦するチームは3つとも強豪だ。


まず正徳学園高校、召喚学科だ。全国大会常連だ。この高校の召喚士は120人程だがチームは自由に作れず1チームしかない。チーム名は“アルカナム”だ。全員が“アルカナム”に所属し全員丸坊主で全員古流拳法を叩き込まれている。覚える魔法も決まっている。個性をすり潰すのを教育とはき違えているのだろう。レギュラー全員がTMPA27000前後で全員が平均的に強いが・・・個性は全くない・・・全員同じ弱点があるわけだ。


空ヶ丘北高校のチーム“孝宗訓佳”全国大会は初参戦のようだが、ここまで来て弱いわけがない。TMPAはバラツキがあるが一人突出しているのがいるな。中堅ダブルスだろうと思う2人もそこそこ強い。20名ほどのチームだ。


山中学院高校、召喚学科の1チーム“残影”だ。先鋒と大将のポイントゲッターが非常に強いようだ。山中学院高校自体は全国大会ではよく見られるがチーム“残影”は聞いた覚えがない。“飛影”というチームが有名なのだが・・・分裂したのかもしれないな。



まあどうでもいいけど。まだ勝ち星がないのはオールバッカ―と星崎さんだが・・・まさか2人とも勝つまで真面目にリーグ戦する気じゃないよね?アフロ・・・。本戦は観客も多く報道陣も多いのであれば露骨にサボるのはまずい・・・等と考えているのかもしれないな、アフロは・・・であれば形にこだわるのなら2連敗して3戦目は怪我人多数とかにして全員で棄権して観光に行けばいいし。とにかくクズの集まりZ班に戦う理由は全然ない。


・・・さて今日こそ観光だ。


「オッシ!やるぜ!今日はやるぜ!おれっち負けてばっかりいられねえ!」

「す、すごいねえ。みんな緊張しないのですか?僕はまたちょっとおトイレに」


「燃えてきた・・・気合では負ける気しねえんだ・・・星崎先輩・・・回復は頼むわ」

「もちろん回復は任せて黒川さん。・・・みんな気を付けて。」


「グモモン!グモモン!」

「キエ――!ダイブツくんは・・・秘密兵器である・・・必要まで待機である」

「グモッフ?フフフン?」


タイガーセンセが何か持って戻ってきた、抽選の結果かな?・・・それよりタワー系も捨てがたいな・・・近くで見てみたい。

「みんな、組み合わせが決まったわ。初戦は正徳学園高校、古豪。強敵よ。昔からここは体術に優れて近距離から中距離で戦います。特徴としては―――」


そしてこのハゲは全く聞いていない・・・聞いてるふりくらいしようよ。

「真名子。今日の青木小空は一味ちがいますよ。触ってください。比べ物にならないくらい硬くなります、例えるならトンネルに―――」

「めっちゃくちゃ気持ち悪いから青木君だけは回復しません」

「くっくくくく」怪しい面持ちで星崎さんの足先から頭のてっぺんまで見ている青木君・・・応援してるよ・・・影ながら・・・まあどうでもいいけど。


(お台場ってところもいいみたいだな・・・)


相変わらず姿勢のいいアフロは自信ありげだな・・・頼もしい。

「キエ~‼余裕ではないか。青木?」

「ふふふ、この青木小空は基本的に動きませんからね」キランと頭が光っている。


「ときにもけ。なにかアドバイスはあるか?」

「え?アフロ?ああ、そうねなるべく速攻でね。さっさとね」観光にいきたい・・・わかるよね?

「なるほど速攻・・・であるか・・・確かにのう。長引けば消耗する、控えの選手もおらんからな。各人よく聞け。一度闘技場に上がれば頼れるのは己だけである。敵は格上、必要に応じて創意工夫せよ」なんだこのブロッコリースマイルは・・・意味ありげだな。

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