魔法少年マジカルまどか

@hyottoko920

僕の名前は九条円




「だ、騙された〜〜〜〜〜〜〜〜!!」




鏡に映る自分の姿を見た僕は、思わずそう叫んだ。


事の始まりは1週間前、僕とアイツの出会いに遡る。








「おはようございます、円(まどか)様」


執事の斎藤がリモコンで寝室のカーテンを開け、朝陽の光が部屋の中を照らす。


「うーん、もうちょっとだけ」


「ダメです、ちゃんと起きてください」


斎藤が容赦なく僕の体から布団を引っぺがす。


この容赦のない男の名前は斎藤 寿衛(さいとう としえ)、26歳独身、身長は180cmの細マッチョ、顔は俗に言うイケメンだ。

きっとこの憂に帯びたエロい顔に泣かされた女の子は多いと思う。


僕?僕の名前は九条 円(くじょう まどか)、ここ日本が誇る大企業、九条グループを統べる九条公爵家の長男にしてその跡取りとされている。

歳は15歳、身長は160cmとちょっと小さめだけどこれから大きくなる予定だから問題ないよね。

顔は自分ではいけてると思うんだけど、何故かみんなからは可愛いって言われるんだよね、解せぬ、ちなみに今日から高校一年生なのだ。


僕はこの執事の斎藤と、虎ノ門にある高級タワーマンションの最上階に住んでいる。

松濤にある本家のお屋敷から通ってもいいのだけど、高校生といったらやっぱり一人暮らしだよね!と思い立ち、両親にものすご〜く反対されたけど無理を言って押し切った。

そのかわり、条件としてお目付役にお邪魔虫の斎藤押し付けられたけどね、ちぇっ、折角の一人暮らしだと思ったのにな。


そんなこんなで、あれよあれよという間に、僕の服はお気に入りのヒツジ柄のパジャマから、制服へと着替えされられていた。


「ほら、シャキッとしてください、朝食の準備はもうできてますから」


「うん、わかった」


僕は洗面台へと行き、少しよだれのついた口元を吹き取り顔を洗い、ダイニングへと向かった。


今日の朝食は純和風だ。

ご飯に、春キャベツのお漬物と梅干し、アサリのお味噌汁に、ちんげん菜のおひたし、甘ーい卵焼きにサワラの塩焼きと言った4月を感じさせるメニューとなっている。


朝食をささっと食べると歯を磨きに再び洗面台へ行く。

歯を磨いてると寝癖がついてたらしく、斎藤が手早くセットする。


「それじゃ、行ってくるよ!」


「円様、何かあればすぐに連絡するのですよ、くれぐれも知らない人について行ってはダメですよ」


「トシは心配性だなあ、僕だってもう子供じゃないから大丈夫だよ!」


少しむくれた僕は、これ以上の小言は聞きたくないのでさっさとこの場を退散した。







家を出た僕は駅へと向かう、永田町にある高校には電車で通う予定だ。

え?金持ちならなんで送迎じゃないって?そんなの電車に乗りたいからに決まってるよね!

最初は、学校から近い平河町のタワーマンションから通わせられる予定だったんだけど、それじゃ電車にのれないからね。

電車通学は物凄く反対されたのだけど、僕はそのためにエスカレーター式の私立の高校から受験して公立の高校に編入した、我儘かもしれないけどこれも押し切った、だって高校生活は人生で一度きりだもの、後悔は残したくない。


駅に着いた僕は迷わず銀座線に飛び乗ると、電車の中は通勤通学時間だけあってそれなりに混んでいた。

赤坂見附まで3分くらいだから、そんなに距離ないんだけどね。

でも、高校生活に電車イベントは欠かせない!

僕はすかさず、可愛い女の子に痴漢を働く不届きものがいないか周囲を見回す。

かっこよく助けて、連絡先交換して、お礼にカフェでデートとかしたりして、いきなり彼女とかできちゃうかもね、さすが僕、計画どおり!!




ん?




なんだろう、何かお尻の辺に凄く違和感を感じる。




え?もしかして僕が痴漢されてる?




想定外の状況に思わずテンパって顔が赤くなる。


「おい、お前なにやってんだ!」


誰かが僕のお尻を触っていた痴漢男の手を掴む。

しかし、それと同時に電車の扉が開き、痴漢男は手を払って走って逃げる。

追いかけようとしたが足が動かず、思わずその場で立ち止まってしまう。


「ごめん、逃げられた!」


振り払われた勢いで尻餅をついた痴漢を止めてくれた男の子が僕に謝る。


「ううん、君が謝る事はないよ、僕の方こそ助けてくれてありがとう」


僕は手を伸ばし引き上げる。


「その制服、俺と同じ一年生だよな?俺、近衛 幹(このえ つかさ)っていうんだ、つかさって呼んでくれよろしくな」


「はじめまして、僕は九条 円、同じ1年だよ!僕の事もまどかって呼んでよ、よろしくね」


お互いに自己紹介を済ませると目的の駅についたので電車を降りる。


「なぁ、駅員とかに言わなくてよかったのか?」


「う、うん、入学式に遅れるのはどうかと思うしね」


「そうか、わかった、次みかけたらとっ捕まえてやろうな!」


ニカっと笑うつかさに、うん、と返事を返す。

駅員に言おうものなら、どこから家の者に情報が伝わるかわからない。

そうなると電車通学はおろか、一人暮らしも辞めさせられてしまうかもしれない、うちの親は過保護だし、それだけは避けたい。

次からは気をつけようと気合を入れ直した。







「そこの君達、新入生だね、花つけてあげるからこっちきて」


学校についた僕たちに先輩らしき男の人が呼びかける。


「あ、ありがとうございまふ、僕、九条 円って言います、よろしくお願いします」

「はじめまして、俺、近衛 幹って言います、今日からお世話になります!」


「ふふっ、九条くんは緊張しすぎだよ、リラックス、リラックス、僕は2年の姉小路 周(あねがこうじ あまね)です、2人ともあねがこうじって言いにくいから下の名前で呼んでくれていいからね」


「はい!あまね先輩」


「うんうん、あっちに貼り出してあるクラス表を確認して、自分の教室に行ってね」


花をつけてもらった僕たちは、あまね先輩にお礼をいってクラス表が貼り出されている場所へと向かった。


「九条、九条、九条と.....あ、あった!2組だ」

「お、俺も同じ2組だ、よろしくな、まどか!」


2人で顔を見合わせると、教室へと向かった。







教室につくと黒板に座席表が貼り出されている、どうやら名前順のようだ。

僕は九条、つかさは近衛なので席が前後ろでホッと胸をなでおろす。


「やったな!まどか隣同士だぞ!」


1人でも知り合いがいるとやっぱり違うね、ぼっちは嫌だもん。

僕の席は、通路側で教室の一番右端の列になる。

前の席の女子に挨拶すると、なぜか挙動不審だったけど、何かおかしいところがあったのかな?

まぁ、向こうも緊張してたかもしれないし、おいおい仲良くなればいいよね。

気を取り直して今度は左側の席の人に挨拶してみる。


「ええっと、僕、九条、九条 円て言うんだ、よろしくね!」


僕が彼に声をかけると、何人かの人間が凍りつく。


「.....チッ」


彼は舌打ちすると席から立ち上がり教室から出ようとする。


「え、えぇっと、し、島津 幸世(しまづ ゆきよ)くん?もうそろそろ先生くるけど、トイレかな?言っておくね」


僕は黒板に貼り出された座席表に書いてある名前をみて呼び止める、そのせいで思わずフルネームで呼んでしまった。


「おい」


鬼の形相で島津くんがこっちに振り返り詰め寄ってくる。


「俺の下の名前を呼ぶんじゃねぇ」


「じゃあ、ゆ、ユッキー?」


「お、おまー


ユッキーが何か言いかけたけど、丁度そのタイミングで先生が入ってくる。


「全員そろってるかー?」


島津くんは何か言いたそうな表情だったが、舌打ちをしてそのまま席に座る。

あれ?トイレはいいのかな?我慢は良くないと思うんだけどな、だから、ユッキー、トイレはもういいの?恥ずかしがっちゃダメだよって、ヒソヒソ声で話しかけたのになぜか睨まれちゃった。


さて、次はいよいよ入学式だ!


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