2-4 夕方に目覚めて

 水とお湯の出し方を間違えて悲鳴を上げたりすることなどもなく、無事に入浴を終えたナユカが、バスローブをまとってバスルームから出てくると、事前にアネットから聞かされていたように、ベッドの横にある台に自分の衣類が置いてあった。わりとゆっくり入浴していたとはいえ、それらがその間にきれいに洗濯され、かつきっちり乾いているのはすばらしい! 情けないことに、現状、唯一のコーディネートなのだから……。仕上がりも非の打ち所なく、まさに魔法のよう。それとも、それは……文字通りだったりする? 最新の「洗濯乾燥機」なるものを使うと言っていたからそれのおかげだろうが、時として魔法と科学は区別がつかないといわれるのもわかる気がする……。というより、実際、ここでは区別がない……らしい。

 それにしても、魔法……。ここがもしも異世界なら、自分にも使えるのだろうか? 洗濯……は、さておき、便利なものなら、自分も使ってみたい気がする。そう思い、自らが魔法を使っている姿を想像してみる……。すると、なんだかおかしくなって、ナユカは苦笑い。ここが異世界だっていうことは、もう受け入れ始めてはいても、さすがに、自分が魔法を使うなんて……あまりにも現実離れしている。魔法少女ナユカですか……ありえない。それに……さすがに、魔法少女っていうのは……無理。いくらなんでも、あんな服は着られない……と、一人で照れる「魔法少女」。想像の自分に「あんな服」を着せたのは、紛れもなく本人なのだが……。

 とりあえず、いったん、頭の中のそれを取り消し、現実の魔法使いのお姉さんのことを思い浮かべる……もちろん、「あんな服」は着ていない。リンディさん……もう目が覚めたかな? 元気になってればいいけど……。しばらくしたら、下に見に行こう……でも、今はもう少し……。


 そのまま、気持ちよくロッキングチェアに揺られていたナユカは、いつの間にかうつらうつらしてしまった……ようだ。パタンというドアの音でゆっくり目を覚ますと、目の前には……魔法お姉さんがいた。

「あ、起こしちゃった? ごめん。でも、風邪ひくよ」

 どこの世界でも、風呂上りの湿ったバスローブを着たまま寝るのはよくない。よほど暑くない限り。

「ふぁい……リンディさん」

 眠くて自動的に返事をしただけと思われるナユカを、回復したセデイターがちょっとからかう。

「おはよう、ユーカ」

「もう朝ですかぁ?」

 時間がよくわからない……。そこへ、少し離れたところでなにかを取り出しているアネットから訂正が入る。

「いえ、夕方です」

「寝るならベッドに行かないと。連れてってあげるよ」

 なんだか優しい……。ドアを蹴っていたときとは雲泥の差だ。

「あ……今……立ちます……」

 ボーっとしつつも、椅子から立とうとする眠り姫。すると、この宿泊施設の管理人、いわば温泉女将に似た役割のアネットが、浴衣のような寝間着を差し出す。やはり、旅館のよう……。入浴で生き返ったので、天国のではない。

「こちらに着替えられてはいかがでしょう? そのままでは風邪をひきますから」

「はあ……」

 眠気に抗いながら生返事をして立ち上がったところ、その拍子にバスローブが脱げて落ちる。風呂上りのバスローブ……ということは、その中は……。

「あらら」

 リンディの声。いったん固まった温泉女将のほうは、取り急ぎ浴衣を広げて背後に回り、それをあられもない姿へ被せる。

「あ……どうも……」

 無意識に袖を通したところで、アネットが後ろから帯を締める。どうやら着られたような感じ……なので、ナユカは自力でふらふらとベッドへ向かっていく。その傍らを、つまずいたら支えられるように、「御付き」のリンディが随行。多少の助力により、無事ベッドに腰掛けた半睡の君は、寝ぼけ眼で従者を見上げる。

「……もう大丈夫……ですかぁ? リンディさん」

 今、大丈夫かと聞きたいのはこっちだけど……。

「うん。あたしは元気。もうすっきりした……その……」

 なにかを言い足そうとして逡巡している旧眠り姫に、新眠り姫が言葉をかぶせる。

「よかった……です……」なんだか眠くてたまらない……まるで時差ぼけのよう。ほっとしたせいかな……。「ふぁ……すみません、眠くて……」

「そう。それなら、休んでなよ……夕食まで」

「夕食……」

 眠気が勝って、空腹を感じていない。そこは、食道楽とは違う。

「後で食べに行こ」

「はい……じゃ、それまで……」

「うん。休んでて」

「それでは……おやすみ……なさい……」

 ベッドに寝転がって、布団に沈み込むナユカ。よほど眠いようで、早々に半開きの目を閉じる。その姿を見つめつつ、リンディが独り言のようにささやく。

「ありがとね、ユーカ」

 その声に、入眠直前の姫が重いまぶたを少しだけ上げたとき、声の主はすでにバスルームへ向かっていた。


「ユーカ……ユーカ……」

 自分を呼ぶ声に、今度はまぶたをゆっくり……それでもきっちり上げると、リンディが瞳に映った。

「あ、起きた」

 顔を覗き込んでいたブロンドの頭を引っ込めるのが見えた。

「そろそろ、ご飯食べに行かない?」

 目覚めた眠り姫はうなずいて伸びをし、ゆっくり上体を起こす。すると、リンディがぷっと吹き出した。何事かと思って見つめると、笑いながらナユカの頭を指差している。

「髪、髪」

 指された先に触る……鏡がなくてもわかる。これはおそらく「爆発」というやつだ。

「乾かさなかったでしょ?」

 ご指摘どおり、眠さにかまけて、まともに乾かさずに寝てしまった。ショートカットでも、ぐちゃぐちゃになるときにはなる。その余地のあるボブ系だ。そして、それならではの、収拾つかない状態。ロングなら重さに負けても、ショートだと重力に打ち勝てる。

 一方、同じく入浴後のはずなのに、目に映るブロンド美女の長髪はすでにきっちり乾いて、きれいにスタイリングしてある。その美髪の持ち主が手近にある手鏡を差し出したので、ベッドの上でそれを受け取り、恐る恐る自分の姿をのぞく。……筆舌に尽くし……たくは決してならない。そんな衝撃の事実に直面したおかげで、幸いにも目は覚めた……ぱっちりと。それにしても、どうやって収拾しろというのだろう……こんなもの……こんな……残念を通り越したもの……。手鏡を握るナユカの指に、ぐっと力が入る……。

「それ、スタイリングするのは、時間かかるね」

 その見通しに疑いの余地はない……。目覚めの一声は、ため息に終わる。

「……はぁ」

「でも、この世にはいいものがあってね」

「え?」

 希望が爆発頭の中に涌いてくる。そうだ、この世界には魔法がある。おそらく、一瞬で直す方法が……。

「その名を帽子という……用途は頭に被る」

 がっくりするナユカ。それでもいちおう聞いてみる。

「……なんかないんですか?」もう受け入れているとはいえ、この単語が指し示すものを声にして要求するのは、抵抗がある。「……魔法……とか」

「あるけど、美容師じゃないと無理」

 返ってきたのは、無慈悲なお言葉。魔法があるからといって、誰でも何でも都合よく使いこなせるわけではないようだ……。爆発頭を抱える。

「そうなんだ……」

 魔法にもプロの技というものがある。その核になるのは、術者の魔法イメージだ。美容師には、出来上がったヘアスタイルとそれに至るまでの過程についての微に入り細に入ったイメージが必要とされる。どこでどういう魔法をどう使うかというような……。にもかかわらず、それをないがしろにした悪例をリンディは思い出した。

「そういえば……去年、ほんの数分でスタイリングする魔法機器ってのが開発されたんだけどさ」

 ボタンを押してお好みの髪型に……的な。

「魔法の……?」

「ひどい欠陥品でね。失敗してぼさぼさになるだけならまだしも、場合によっては髪がほとんどなくなることも……」

「うわ……」

 強すぎたパーマみたいなものかな……。それよりもひどそう。

「で、開発段階で断念。だれも頭を提供しなくなったから」

 頭の外も中身も。つまりは、完全な企画倒れ。

「……でしょうね」

 危険すぎる。それでも、髪だけで済んだのだから、まだましなようにも思える……。なんといっても、使われているのは魔法。ナユカにとっては得体が知れないもの。

「やっぱりこういうことは、それなりに時間をかけて、手動でやるのがいいということで」

「……そうなりますか」

 なにはともあれ、今日はもう、帽子で我慢するしかない。借りられれば。

「ま、そんなわけで……帽子ならあたしのスペアがあるから。たぶん、似合うと思うよ」

 道中被っていたようなやつだろう。コスプレでよくある魔女の三角帽的なものなどではなく、カウボーイハットのようなつば広の帽子。リンディの見立てに反して、自分にはあまり似合いそうな気がしないナユカだが、この際仕方がない……典型的なとんがり帽よりも、まだよさそうだ。少なくとも、中途半端なコスプレにはならない。

「すみません。お借りします」

「後で出すね」


 少しして、頭以外の支度はきっちりと終えたナユカは、リンディと一緒にアネットのいる一階へと降りてゆく。

 問題の髪については、多少の努力はしてみたものの、夕食の時間としてはやや遅くなりつつある今、手間を掛けてはいられず、やむなく断念。とりあえずは、爆発の規模はほんの少し小さくなった……ような……。やはり、アネットに笑われるだろうか……いや……もう、そのくらいは、どうってことないかな。すでにブロンド美女から、したたかに笑われている……。

 一階へ降りたふたりに気づいたアネットが……振り向く……視界に入るナユカの頭。施設管理者は絶句し、笑うでもなく、声を絞り出す。

「ど、どうしたんですか……その頭……」

「そ、その……寝癖で……」

 爆発を両手で押さえるナユカ。それほどまでに驚かれるよりは、いっそ大笑いされたほうが、救いがあった。やっぱり、そんなにひどい……? 自分では見慣れてしまっただけ? 

「なにか不都合がありましたか? ドライヤーが壊れていたとか……」

「ドライヤー? いえ、そんなことは……。乾かさないで寝ちゃっただけで……」

 睡魔に負けたのがすべての元凶だ。手を離すと、再爆発。

「そうなんですか? それにしてもひどい……」アネットの哀れみの視線は、頭部へ向けられたまま。「もしかして、見つからなかったんですか? それで……そんな……。わたしが出しておくべきでした……」

「いえ……探す前に寝てしまって」

 つまるところ、やはり睡魔のせいだ。ドライヤーは洗面台周辺のあるべきところにあり、ナユカの後に入浴したリンディが使った。その証拠に、使用者の髪はきれいにスタイリングしてある。比べるにつけ、今の自分の状態は……。再び頭を押さえる。

「起きてからは、使わなかったのですか? まだその状態だということは、もしかして……やはり故障していたとか?」

 施設管理者としてどうしても気になり、この話題を引き伸ばしたくない爆発被害者の当該部位を見つめ続ける。

 そのドライヤーはといえば、ブロンドの証拠が指し示すとおり、故障はしていない。しかし、ギミックや使用方法が向こうのものとは異なり、ナユカには使い方が困難な代物だ。ゆえに、ある程度の慣れが必要となる。

 リンディによれば、ここのドライヤーは、かざすと風などなしに水分が蒸発するものらしい。魔法テクノロジーによって熱と水分を操作するため、効率よくダメージなしに乾かすことができる優れもの。熱風で水分を乾かすものではないので音もせず、近くにいる人の眠りを妨げることもない。形状もまったく違って、小さめの手鏡ような形で、仮に爆発頭が事前に目に留めたとしても、それがなにかは知る由もなかっただろう。これを使ってスタイリングした後は、あまり時間をおかずに寝てしまっても、頭は爆発しにくいとのこと。

「いえ、わたしは……うまく使えなくて……リンディさんは使いましたけど……」

 結局、まともに操作できず、この有様。悲しげな爆発頭からブロンドの美髪へと視線を移したアネットは、機器の故障ではなかったと確信。……この哀れな爆発さんは、よほど不器用なのだろうか? それならそれで、ドライヤーの取り扱いに慣れていると思われる、きれいに整ったブロンドさんが手伝えば、もっとまともな状態になっていたはずでは……。

「まぁ、いいじゃない……後でゆっくり直せば。明日の朝にでも」

 ここで、リンディが割って入ったため、アネットには多少の疑念がわく。もしかして……わざと手伝わなかった……? この悲惨な頭を笑いものにするため……とか。瘴気のせいとはいえ、そもそも、少し前に大騒ぎしていた人だ……そのくらいのことはするかもしれない……。そんな疑惑の視線をセデイターに向けている責任者が口を開く前に、ナユカはやけに素直に答える。

「はい、そうします。今は帽子で」

 本人がそれでいいのなら、ここで余計なことを口にするのは避けたほうがいいのかもしれない……。そう思ったアネットは、そこまでで、この頭への言及はやめる。実のところ、ナユカはもう髪のことを俎上に載せてほしくなかっただけ。それが同情であっても、これ以上は痛すぎる。

「先にご飯だよね、ご飯♪」

 浮き立つリンディの声には、紛れもなく音符マークがついていた。とどのつまり、彼女の最優先事項は夕食。ナユカのヘアスタイリングも、手伝ってはみたものの、すぐにあきらめた。あまりに時間がかかりそうで、きちんとやると食いっぱぐれてしまいそう……。身勝手なようではあっても、先ほどまでの瘴気の影響でセデイターは消耗しており、食事をしっかり取らないとまた別の迷惑をかけてしまう……という気遣いもあるにはある。たとえ、食欲という、より大きな衝動に隠れてはいても。


 ともあれ、早く夕食へ出かけたい食道楽は、さっさと手荷物のところへ向かい、中を引っ掻き回すということもなく、爆発頭を覆い隠す帽子を取り出して持ってくる。わりときっちりとバッグの中を整理してあるようで、何でもかんでも適当の突っ込んでおくというような、大雑把なタイプではないらしい。

「あ、それですか?」

 出された帽子は、キャスケット風。借り手が予想していたカウボーイハットではない。確かにこれなら似合いそう……。持ち主のセンスを信用しなかったのは悪かったかも。

「そう。かさばらないからスペアはそれなんだ。防具としては多少落ちるけど」

「防具?」

「そうだよ。ちゃんと耐魔法コーティングしてある」

 専門的なことは異邦人にはわからないが、防具だそうだ。とはいえ、見かけではそうは見えないし、被ってみても重いなどということもなく、ふつうの帽子と比べて違和感はない。

「似合う、似合う。ねえ?」

 リンディに同意を求められたアネットも、素直に賛同。

「よくお似合いですね。髪もちゃんと隠れてます」

「そうですか?」

 少し気分を好転させたナユカは、施設管理人から渡された手鏡で自分の姿を見る……結構いい感じ。これなら問題ないかな……髪のことを考えると、外で脱げないのが不便だけど……。


 現状、可能な限りの身支度を終え、街の地図を手にした食の探求者は、隠れ爆発頭を連れ立って街へ繰り出す。すでにアネットからお勧めの店を聞いており、ハンターの目を持って現場へと直行。後に続くナユカは、時折、帽子……というよりも、その下を気にしつつ、ただ付き従うのみ。

 一方、施設管理責任のあるアネットは、リンディとナユカが宿泊室に泊まることとなったため、今夜は帰宅せず、宿直しなければならない。そして、宿泊客が急遽現れたときはいつもそうするように、今夜も、夕食は出張所にストックしてある食料で済ますことにする。ふたりと一緒に外で食事するという選択肢もあり、実際、誘われもしたが、さすがにそこは遠慮しておいた。ここの管理者として、初対面の相手との距離感ではないように思えたためだ。それに、留守番するほうが、消灯や戸締りなどの面倒な作業もなく、外出するよりは楽である。加えて、宿直の際に利用できる備蓄食料は潤沢なこともあり、調理をすれば貧相な食事にはならない。料理は時間つぶしにもなるし、夕食代も浮く。堅実な彼女らしい選択ではある。

 通常、ここの宿泊室を使うのは、たいていは魔法省から派遣された者たちで、事前に連絡があるのが通例だ。ただ、今日のような、いわゆる「飛び込み」に対応するのも業務の範囲内であり、その際はそれ相応の手当てが上乗せされる。予定さえなければ、職員にとっては臨時収入が得られるので、忌避すべきものでもない。同居人のいる同僚と違って、今のところ一人暮らしのアネットには、ここに泊まることに特段の抵抗感はなく、そのようなケースに備えて、着替えも宿直室に数点用意してある。よって、翌日も同じ服……などというまずいことにはならない。職員として、来訪者から妙な勘繰りをされないためにも、必要なことだ。

 とはいえ、もしも、今日のように同僚が病欠中のときに、自分にもなにかの予定……たとえばデート……などがあったりすると事だが、幸いにも、まったくない、全然ない、さらさらない……幸いじゃない! ……ため息が漏れる。「ない」を畳み掛けてどうする……。

 実のところ、短くない間、浮いた話のひとつもない。職場が忙しくないにもかかわらず、任されているという誇りが持てるのは悪くはないけれど、いかんせん、出会いがない。魔法省からの派遣など滅多にないし、セデイターもそうは来ない。この街に自分好みの遊興施設はあまりないし、街から出る機会もない。出ても、街道の片側には建設中の「宿場」しかない。「ない」がどんどん積み重なっていく……ないないづくしだ……あっはっは! ……自嘲の笑いに頬が引きつる。

 あの二人はどうなんだろう。ふたりともきれいなだったけど、旅先での出会いとか……ロマンスとかは? そういえば、しばらく旅行にも行ってないな……同僚が戻ってきたら、ちょっとひとりで旅にでも出ようか……そして……。

 料理をしながら、まずは、妄想の世界へとアネットは旅立っていった。


 こちら現実世界では、食のハンターが隠れ爆発頭を従えて現場、すなわち、目当てのレストランを急襲。入り口を通り抜けて見回せば、人気店ゆえにすでに満席だ。ただ、予約を必要とするほどではないというアネットの情報どおり、待っている人はいない。時間が遅めだったため、ちょうど席が空くところで、どうやら、待つことなく食事にありつけそう。これによって救われたのは、空腹のリンディの勢いに立ち向かわざるを得ないウエイターだったのかもしれない。

「お帽子は、いかがいたしましょう?」

 案内のウエイターに声をかけられ、あわてるナユカ。

「え? いか、いか……いかがって?」

「帽子を預かるかってことだけど?」

 リンディの説明に、この世の終わりのような表情を返す異世界人。これを取ったら、爆発……。

「そ、そ、それは……どうしてもってことですか……? 絶対にしなきゃいけないの……?」

 口調に泣きが入る。こういうときの異文化って……。

「いや、別にどっちでもいいんだけど……」帽子を両手で押さえている爆発頭の主を見る限り、どっちでもよくはなさそう。リンディはウエイターに告げる。「あ、いいです」

 魔法の一言でナユカの世界は救われた。

「承知いたしました。では、こちらへ」

 何事もなかったかのように……実際に何事もなかったのだが……ウエイターは二人を空いた席へと誘導する。


 案内された席でメニューを見つめているセデイターは、瘴気という「憑き物」を落とされたおかげで、新たな別の憑き物、すなわち「食欲」に囚われていた。きらきら輝く瞳は、憑かれた者のそれのようにすら見える。他方、言葉が話せても字は読めないナユカは、メニューを渡されてもどうにもならず、食欲の権化が決めるのを待ってから読んでもらうしかない。

 実は、ナユカはこの世界の文字がまったく読めないわけではなく、おぼろげには判別できる。それは、例の夢……子供の自分がセレンディー語で話している夢の中で目にしていた文字に似ているからで、そこでのどの字がここでのどの字に対応しているのか、およその推測が可能だ。したがって、それらに基づけば文字列を発音でき、なおかつ、その単語を知っていれば、その意味もおそらく理解できるだろう。ただ、まだ文字の対応表を作ったわけではないので、その都度、それぞれの文字を頭の中で対応させて単語を把握するのはなかなか骨だし、ボキャブラリーの少なさもあいまって、読み進めるのは困難だ。これは、とうてい「読める」という状態ではない。

 それでも、いちおう解読してみようとして、穴が空くほどにメニューを見つめているナユカの姿に、それとは別の理由で同様に見つめていたリンディが気づく。

「あ、そうか」昨日の時点で、字はあまりよくわからないと聞かされていた。「あたしが読んであげる」

 食の探求者は、同伴者にどんな食材でどんな味のものを食べたいかを聞き、それに対応する料理を選んで、どんなものか説明してくれる。空腹時にあまり手間を取らせてもなんなので、その中からどれが一番お勧めなのかを食通に聞いて、ナユカはそれを素直に選んだ。

 手伝った後に、ようやく自分の注文を確定したリンディは、それなりの品数をオーダー。おそらく、なかなかの量になるだろう。それは単に食道楽だからということのみならず、瘴気処理後のセデイターに必要な補給ということでもある。


 料理が来る前の時間を利用すべく、ナユカは今後の自分の身の振り方について話を持ちかけてみたところ、リンディはその話題にはあまり気乗りしないようだ。

「そのことね……。今日はふたりとも疲れているから、明日にしない?」

「……ええ」

 一拍置いて不安げに承服した迷子に、料理のほうに注意が向かっているらしき食いしん坊が、そのわりには頼もしげな言葉をかける。

「大丈夫。あたしがちゃんと面倒見るから、任せてよ」そして、この話題に終止符を打つ。「それに、食事のときにややこしい話はしないことにしてるんだ。いいことないから」

 これは、別にこの場限りの言い訳などではなく、彼女のポリシーだ。偶然にも、ナユカの実家もそういう習慣で、食事は気持ちよく食べようということだった――食事のときは、頭は働かないし、無理に使えば消化にも悪いから。よって、食道楽の提案に抗うことはなく、むしろ親近感を覚えた。彼女をなんだかんだで意外に気を回してくれる人だと感じていることもあり、ナユカはそれに素直に賛同。

「そうですね。そうしましょう」

 この反応は、リンディが予想していたものと違っており、若干肩透かしを食らった感があるものの、すんなり受け入れられたのは気分がいい。内心、粘られたらどうしようと思っていた。彼女の今の境遇を勘案すれば、話したいのもわかるから拒否しにくいし、だからといって、料理に集中できなくなるからそういう話は避けたいし……。あくまでも食事優先の人である。ただ、自分とこの迷子とは相性がいいのかもしれないとは思った。

 さほど待たされずに来た当の料理は、人気店だけあって、それに見合った出来映えだ。ナユカにとっては未知のものではあったが、セルフサービスだった「宿場」での料理同様、突飛なものではなく、なんちゃらの頭の丸焼きと目が合う……などという不測の事態に陥ることはなかった。このレストランの小洒落た雰囲気からして、そういう一品はなさそうだとはいえ、ここは異境である。どういうものが常識的で上品なのかは、窺い知れない。良識的なアネットが薦めたこの店にその手のものがあるのかはわからないが、少なくともリンディの選択肢にはなかったようで、そういったものにはお目にかからずに済んだ。

 幸い、さすがの食通が選んでくれた品々は見た目も無難で、異邦人が事前に話した味の好みに的確に合わせてあり、とてもおいしい……。この「専門」分野に関して、リンディがかなり信頼できるということを、ナユカは再認識した。本来の専門分野についてはどうなのか……知識がないのでまだよくわからないが……。ともあれ、食事の間は、料理の話を中心に、軽い雑談に終始し、リラックスムード。いろいろあったこの日の疲れも和らいでいく……。

 こうして、心身が満たされた夕食の時間も終わり、ふたりはアネットの待つ出張所への帰途につく。会計はリンディ持ち。料金はリーズナブルで、たいしたことないらしい。そして、以前にも聞いたように「経費で落ちる」とのこと。ここでの通貨価値はわからないものの、なにはともあれ、ただ今、無一文のナユカには大助かりだ。この人なしでは行き倒れ確定である。


 帰りは行きのように勢い込むことなく出張所へ戻り、今度はドロップキックならぬ魔法による破壊を試みることなどもちろんなく、裏口からふつうに呼び鈴を鳴らすと、アネットがふたりを確認してふつうに中へ迎え入れた。当たり前のことが当たり前になされるのは、それがなされなかったときのことを思えば、関係者全員にとって安堵させられるものだ。聞けば、彼女は食事をすでに終えて休憩していたとのこと。そこで、リンディが帰路の途中にあった店で買ってきたお土産を渡す。

「迷惑かけちゃったから」

 辞するのもなんなので、アネットはそれを受け取り、中身を見る。中には、ひとりで賞味期限内に食べ切るのはどうかと思える量の半生のお菓子。とはいえ、スイーツ好きの女子として平らげられない量ではない……たかが4人分程度……カロリーというものを度外視するのなら。とはいえ、そのような無謀なことは、たとえやってみたくてもできない良識人の施設管理者は、ありうべきリアクションをとる。

「朝、一緒に食べましょう」

「そう? なんか悪いなぁ」

 言葉と裏腹、リンディの口元から笑みがこぼれてくる。これだけ買ったのだから、アネットがそう答えるのは想定内。独り占めしたら驚きだ……自分じゃあるまいし。……いや、さすがに自分だってそんなことはしない……だろう……たぶん……場合によっては。考えると確信が揺らぐので、そこでやめておく。

 なお、店に入ってお菓子を選んだとき、真剣な食いしん坊のまなざしを目の当たりにしたナユカに、本人も食べる気満々だということがばればれだったことはいうまでもない。


 さて、夜も更けてきた今、まずは先にナユカの爆発頭をリンディが鎮めてから、施設内の食堂――というほど大きくはないダイニングルーム――に当事者三人が会し、ようやく本日の「事件」について事実確認する機会を得た。すでに、アネットはふたりから個別に、簡潔ながらも状況の説明を受けてはいるものの、後に報告をする必要性が出てきた場合のために、事実関係のすり合わせをしておかなければならない。

 それは、正直、このセデイターにとって気の重い作業である。己のしょうもない行動に言及しなければならないからだ。そこで、なんとか場の雰囲気を軽めにして、さらっと流せるようにしようと思い、無理やりボケてみる。

「そうだ、みんな名前で呼び合うようにしない?」

 リンディは、アネットとの間では、自分の要請ですでにそうしており、同様にアネットもナユカに自分を名前で呼んでもいいとしている。そして、そのアネットもナユカを名前で呼んでいる。つまりは、すでに全員そういう呼び方になっている。

 この微妙なボケに対して返ってきたのは、二種類の返答。

「もう呼んでますよねぇ……」

 きれいにスタイリングされた自分の髪に触れているナユカ。……どうせなら、出かける前にやって欲しかった……それほど時間はかからなかったし。やっぱり、この人は食事優先だったんだろうな……。そんなことに気を取られながらの、気のない突っ込みとほぼ同時に、アネットが答える。

「そうですか? それでは……」爆発が収まったショートヘアーに視線を向ける。「『クスノキさん』とお呼びすればよろしいのでしょうか?」

「……?」疑問とともに一時停止した「クスノキさん」はすぐに察した。「あの……『ナユカ』のほうが名前です」

「え!」アネットの顔には「やばい」と書いてある。「で、では……今まで……」

「名前で呼んでたよねー」

 苦し紛れのボケだったのに、リンディにはラッキーな敵失。

「失礼しました……。ずっと間違えていました」

 頭を下げる管理責任者。名前と苗字が通常の逆だとはまったく思わなかった。そういうケースもあるのは、知識として頭の引き出しにはあったものの、ここで出会ったことはなく、本日、取り出されることはなかった。

「あ、いいんです……気にしないでください。言ってませんでしたし」

 確かに「クスノキさん」はそれを言わなかった。アネットが自分を名前で呼んでいいと申し出たときも、逆の許可はなかった。……お堅い人には見えないので、なにか理由があるのかもしれないとは思ったが……要するに、最初からずっと、名前で呼んでいたわけだ。

「いえ、でも……許可も取らずに、失礼でした」

「わたしは、全然かまいませんから、これからも名前で呼んでください」

 問題ないので、当人は軽く流した。

「それじゃ」リンディは、両手をポンと合わせる。「このことは流して、本題に入ろう」

 この機を逃す手はない。この雰囲気なら、こっちも軽く流せるかも……。流れに乗じて、セデイターはすぐに説明を開始。例のドア蹴りの場面以外は正気を失っていたわけではなく、調子が悪くても、起こっていたことははっきり認識している。そして、ドア蹴り自体も、かえって記憶に鮮明に焼きついている。それゆえに、あまり詳しく話したくはない……情けなくなる。

 ここは、自分自身のことに関してはできるだけあっさりした表現に留め、とりわけ精神状態については必要最小限でやめておき、あとは、表面上のことしかわからないナユカに確認させてやり過ごす……という策でどうだろう。出張所に到着した頃からのことは、自分の説明だと客観性に欠けるという理由で、同行者に丸投げしてしまおう……それでばっちりだ。

 しかし、そんな思いつきのプランはすぐに裏目に出るもの。話させてみれば、ナユカには、そのときのリンディの状態が強烈に記憶に残っているようで、慣れない言語によるたどたどしい言葉ながら、生真面目にも微に入り細に入り表現しようとする。むしろ、その拙い表現のせいで、聞きたくない同じ単語がリフレインされ、とりわけ、リンディの表情を描写するときなど、聞かされる本人はうつむくしかない。まじめさは時に残酷である。


 やがて、ついにいたたまれなくなったセデイターは、顔を背けたまま小声で制止をかける。

「ね、もう……いいんじゃない?」

 懇願といえるかもしれない。……聞いていられる限界というものがある。そんなリンディの心情を察したアネットは、さすがにそこまで聞く必要はないということで、無垢な表現者を止める。

「もういいですよ、ナユカさん」

 状況を思い出して表現することに没頭していた証人は、声に気づいて説明を中止する。

「……あ、そうですか? はい」

「ありがとうございました」

 努めて冷静でいようとしている眼前の責任者からセデイターへと視線を移すと、ナユカの目に映ったのは、気まずく、居心地悪げな雰囲気を醸し出している姿。

「あ、すみません……つい……」

 セレンディー語を使っての再現に集中しすぎて、他のことに気が回らなくなっていた……。

「ご……ご苦労様」

 どうにか声を絞り出した……。こんなことなら丸投げなどせずに自分自身で説明したほうがよかったと後悔しても、後の祭り。ダメージが大きい……もしも空腹のままこんな話をしていたら、遥かなる深遠へと墜ちていたかもしれない……。でも、幸いにもそうはならなかった。ご飯に感謝。

 その先……すなわち、アネットがナユカと対面してからのことは、説明の必要はない。よって、これにて事実確認は無事終了。無事でなかったのは、セデイターの虚栄心くらいだろう。


「……それにしても、無茶しましたね」

 聴取を終えた後の、アネットの最初の感想だ。今、受けた動揺を隠しつつ、リンディはぼそっと答える。

「まぁ……結果的には」

 否定はできない。

「素人のわたしが言うのも差し出がましいかもしれませんが、『結果的に』ではないと思います」

 控えめにではありながら、はっきり否定した聴取者に一瞬たじろぎつつも、セデイターが平静を装って聞き返す。

「……そう?」

「はい」

 きっぱり肯定されてしまった。丁寧なわりに、けっこう容赦がないな……こいつは。こういうキャラクターは魔法省にもいた。例の体力姉さんの傍らにいるその人物を思い浮かべつつ、釈明するリンディ。

「ま……まぁ、ちょっと無理はしたかな……あいつ、意外に瘴気が濃かったみたいで……」

 言い訳ではあるが、事実でもある。バジャバルの瘴気は量的には少なくても、質的、すなわち濃度においては予想以上だった。瘴気は魔法使用時に使われた魔法元素のいわば「廃棄物」であり、通常、瘴気の濃度が濃いということは、魔法元素を効率的に消費していることになる。それは、使用者の魔法スキルと魔力値が高く、放たれる魔法も強力になることを意味するのだが、対戦時のバジャバルの魔法はさほどでもなかった。

 ただ、強力ではない魔法でも、長期間に渡って連発すれば、抱え込んでいる瘴気の量も増えていき、その結果、一時的に魔法の威力は底上げされる。というのも、瘴気に残されている魔法元素をも使用できるからだ。しかし、それによって、瘴気の濃度がさらに高まると、今度は取り出せる魔法元素が減少していくので、魔法の威力は次第に元に戻っていく。

 おそらく、バジャバルはその段階にあったものと思われる。たいてい、その段階にまで至るのは、相応に実績のある熟練魔導士くらいのはずだが、バジャバルに関してはそうではなさそうだ。おそらく、もとよりたいした魔導士ではなく、目立たなかったことから、逆に、長期間に渡る魔法の過剰使用による瘴気の蓄積を見逃されることになった……。つまりは、彼を低ランクのセデイト対象者としていた情報に誤りがあったのではないだろうか……。


 ……と、当たっているかどうかはともかく、言い訳が転じたもっともらしい説明を展開しているうちに、リンディの動揺は治まっていた。専門家としての思考に集中したためだろう。そんなセデイターの専門的な推論には納得させられるものの、アネットにはひとつ重要な疑問点がある。

「それよりも、どうしてご自分を魔法省へ転送しなかったのですか?」

「ああ、それね……。それは、本来のターゲットがここに向かってるって情報があってね……先回りしようと……」ここで当初の目的に適った質問を思い出し、それによって気持ちも立て直された。「なにかわからない? 名前は……」

 セデイターが聞こうとしたところで、実際に瘴気処理をしたオペレーターであるアネットがさえぎる。

「それは明日にしませんか? 今日はこれ以上のことはやめて、休んだほうがいいと思います」

 傍らのナユカもそれに賛同。

「いろいろありましたから……」

「そう?」リンディは少しだけ不満げな表情を見せたものの、休息を必要とする自分の状態はわかっているので、提案を受け入れた。推測では時間的余裕は十分あり、情報を得るのが今晩ではなく明朝でも、なんら問題はない。「……じゃ、そうしようかな」

 これで面倒な話は終わり。今日はもう休むだけ。

「それでは、お部屋のほうを……ふぁ……」あろうことか、施設管理者のほうが思いっきりあくびをしてしまった。真面目な彼女らしくはないものの、同僚が休みのときに限って、こうもやることが多くては、無理もない。「ごめんなさい。少し疲れてしまって……」

 顔を赤らめているアネットが今しがた休息を提案したのは、ふたりのことを考えてのことではあるが、どうやら本人にもそれが必要らしい。

「部屋のほうはいいよ、わかるから」

 そんな気遣いを「客」のリンディから受けても、責任感の強い管理人は、そのまま自分が行かずに済まそうとはしない。とはいえ、ふたりが夕食に出ている間に、すでにベッドメイキングなどの準備はしてしまっているので、これからやることは特になく、少々説明をする程度だ。

 部屋まで行って、宿泊客二名と明朝の起床時間などの打ち合わせを手短に終え、就寝の挨拶を交わしてから、アネットは一階にある職員用の宿直室へと階段を下りてゆく……。彼女の寝場所は通常どおり、そこである。戻る前に、リンディから、ひとりでは無用心だから同室したらどうかと誘われたものの、さすがにそれは管理者として受け入れるべきではないと思い、固辞した。特に物騒な地ではないので、この上なにかが起きるとは考えにくいし、それ以上に、もう一台ベッドを出して再度ベッドメイクする気力がなかったというのもある。その一方、三人でパジャマパーティよろしくベッドに集うのも悪くないという気分も心中をよぎってはいたが、残念ながら、この日はそんな余剰エネルギーはどこにも残されておらず、休みたいという衝動に駆逐されていた。


 アネットが去ってすぐ、速攻で例の浴衣っぽい寝巻きに着替えたリンディは、寝支度を整えて早々にベッドに潜り込む。その早業を邪魔しないよう、離れて見ていた同室のナユカは、食事に出る前に少し眠ったため、まだあまり眠くはない……。とはいえ、自分だけ起きていてもすることはなく、余計なことをすれば就寝の邪魔にもなるので、とりあえず付き合って寝ることにする。その支度を待つことなく、ベッドの中のセデイターはすでに夢の中……。

 瘴気の処置後に長く眠ってたのに……よく眠れるなぁ……。着替えから入眠に至るまで、一連の早さにナユカは呆れ気味。それとも、ああいう眠りはふつうの睡眠とは別物なのだろうか……? そんな知る由もないことは、今、考えてわかるべくもなく、即、思考は打ち切り。無駄を排した賢明な選択……というより、それを考えるための材料が異世界人にはないので、考える術もない。

 そんな詮無い思索に陥らずに頭と体を休めるためにも、とりあえずベッドに体を伸ばして目を閉じる……。すると、間もなく彼女も眠りに落ち、長かったこの日の夜は更けてゆく……。



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