いじめ

 ある学校で一人の少年が自殺した。

 その少年は遺書を残していて『いじめを苦に自殺した』と書かれていていじめっ子の名前も書かれていた。

 すぐに学校は調査を行ったが、名前が挙げられた生徒は『からかっただけ』、『いじめとは認識してない』と言い、学校は『いじめとは認定できない』と発表した。

 その学校の発表に当然遺族からは抗議の声が出たが学校側は『生徒の保護』を理由に訴えを無視していた。

 自殺した生徒の両親は学校に再調査を求める署名活動を始めた。 

 その署名に一人の少女が名前を書いた。

「ありがとうございます。」

 母親が礼を言うと少女はニッコリとほほ笑み

『悪人には必ず天罰が下ります。』

 そう少女は言った。


 それから数日後、学校の屋上に一人の女子生徒がいた。

「あれ? なんで私ここにいるの?」

『私が連れてきたのよ。』

「だ、誰っ!?」

 女子生徒が振り向くと、この学校の生徒ではない少女が立っていた。

『……なんで此処にいるのよ。』

「はぁっ!?」

『あんたの顔なんて見たくない、死んじゃえ、私の前から消えろ……。」

「な、何を言ってるのよッ!?」

『……貴女が彼に投げかけた言葉よ。覚えてないの? ここから飛び降りて自殺した彼に投げかけた言葉を。』

「えっ……。」

『長い間、そんな冷たい言葉を投げかけられて彼は辛かったでしょうね……。』

 そう言って少女は女子生徒を見る。

 青い瞳に見詰められた女子生徒は何も言えなくなる。

『悪い事をすれば罰が与えられる、そんな当たり前の事は知ってるでしょ?』

「わ、私は暴力なんてしてないし……、酷い言葉は言ったけど……、それに私だけじゃないし!」

『勿論、貴女以外のいじめに加担した人、隠蔽しようとしたこの学校にも罰は下される、貴女はその引き金、彼を死に追いやった責任を負って自ら命を絶つ。それが貴女に与えられた罰よ。』

「な、なんでっ!? なんで私だけっ!?」

『彼が一番……、悲しかったのは幼馴染である、一番の理解者のはずだった貴女がいじめに加担した事よ。』

 少女にそう言われて女子生徒はハッとした顔をした。

『本来なら助けるべき存在だった貴女がいじめる側に回った事で彼の心の防波堤は崩れてしまったわ。』

「そ、それは……、脅されたから。仲間にならないとお前もターゲットにする、て言われたから……。」

『それでも、彼を守るべきだった……。さぁ、時間よ。』

 女子生徒の身体は彼女の意志とは関係なく柵の方へと向かっていく。

「い、嫌だぁ……、た、助けてぇ……。」

 涙を流し訴えるが女子生徒の身体はどんどん柵の方に向かい、そして策を乗り越えた。

「た、助けてぇ……。お願いぃ……。」

 しかし、女子生徒の声とは裏腹に女子生徒の身体は宙へと舞った。

 そして、数秒後にグチャという音が地上の方で聞こえた。

『……最後まで謝罪の言葉は無かったわね。』

 悲しそうな少女の声が夜の空に響いた。


 女子生徒の自殺がきっかけとなり週刊誌や新聞は大きく取り上げた。

 何せ数日立たないうちに連続で自殺が起こったのだ。

 学校側も対応しなければならない状態となり再調査を行った。

 結果、一転して『○○君が蹴っているのを見た』や『ひどい言葉を言ってしまった』と証言が出てきた事で学校は『いじめはあった』と認め両親に謝罪した。


 その数日後に校長や担任教師を乗せた車が交通事故に遭い死亡した。

 そして、いじめに加担していた生徒は卒業後に精神的に悩み自ら命を絶った者が多かった。

 その前には黒髪の少女の姿があった、と言われている……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バチガミ様が行くっ! こうじ @hirasaku37

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ