敗者の街 ― Merry X'mas ―

 どうも、グリゴリーです。「敗者の街」本編での貴重なツッコミ担当です。え? 俺もそこそこボケやってるだろって? そんなことないと思うな。


 なんかこう時系列とか因縁とかそういうのはまるっと放り投げて、クリスマスだから催しやろうぜってことになったのはだいたいレニーのせいだってのみんな察してると思うけど……え? 本編読んでない? ネタバレあるかもだから読んできた方がいいと思うよ! ほら、↓ にリンクも貼っとくから!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054887554652




 さて、宗教上クリスマスはどうなの? って奴もいるけど、ケーキ食ってプレゼント交換するくらいなら別にいっかーっててテンションで参加してもらいました。いわゆるオールキャラってやつだな。ガチで全員出るかは知らねぇけど。




「とりあえず真ん中のテーブルに置いてる菓子好きに食っとけ。ちなみに俺は肉体がねぇから食えねえ」


 初っ端からレニーがぶちかまして来たので気まずい空気に……と思いきや、案外みんな「そんなもんかー」って顔になっている。

 わかる。なんかそういうオカルト的な感じのシチュエーションって慣れてくる。


「……え、肉体ないって……も、もしかして……幽霊……?」


 慣れてねぇやつもいるけど。……あれ? こいつも幽霊じゃなかったっけ?享年21の軍人だろ? 今日は私服(?)だけど。


「兄さん、昔から幽霊苦手だもんね……」

「俺らの家そこそこ出そうな雰囲気だったもんな……」


 おい、しみじみしてる場合か弟組。


「とりあえずプレゼント交換と行こうや。つってもただ交換するだけじゃつまらねぇ……ここは、王様ゲームと組み合わせようじゃねぇか」

「……と、いうと、『プレゼントを渡す側と渡される側をくじで決め、命令の行使と引き替えにプレゼントを貰う』……というスタイルか」

「そういうこった。物わかりがいいな、レヴィ」


 なんか地獄絵図が展開されそうになってんだけど、止めた方がいいかなこれ?

 レヴィも真面目に解説すんな。っつーかなんで予測できるんだよ。


「ちなみにアンダーソン兄妹のような2人がいるので、過激すぎる要求にはNGが入る」

「チッ」

「まあ、仕方ないわよねぇ」


 舌打ちすんな変態ロナルド。それはさすがに英断な気がする。変態組結構いるしな。カミーユとか。


「あのさ、ロナルドとかローザさんはともかく、僕は一般人に嬉嬉としてセクハラしないから」


 なんか読まれた。何この人怖い……。

 いや、そこそこ仲良いから言いたいことわかるんだろうけどね?


「……すみませんうちの兄と姉が……」


 ロデリックくん……不憫すぎて涙出てくる……。

 まあ、それはそうとして、椅子取りゲームみたいに全員が並んでイベントは始まった。隣NGの奴にも配慮してレヴィが配置を決めたらしい。

 なぁそれくらいならもう集まるの諦めた方が良くね?オールキャラだから無理?ちくしょう地雷原かよ帰りてぇなぁ!!


「よーし、とりあえず頭文字イニシャル順にくじ引くか。アドルフから引きに来い。引いた番号は隠しとけよ?」

「帰りてぇ……」


 司会?のレニーの声に項垂れるアドルフ。気持ちはめちゃくちゃ分かる。俺も帰りたい。

 とりあえず番号振り分けは何事もなく済んだ。ちなみに俺のくじは6。なんとなく不吉だなオイ。


「んじゃ、始めるぜ」

「なぁレニー」

「どうした兄弟。ルールがわからねぇってんなら、後でこっそり聞きに来いよ?」


 レオナルドか……どうせアホらしい質問だろうな……。


「あっちのレオが憑依してねぇ。なんか肉体あんだけど?」

「その方が便利だからそういう仕様になってんだ。気にすんな」


 アホらしくなかった!!!なんか普通にとんでもねぇことサラッと言った!!!

 いや、うん、確かにいる!!なんか増えてる!!

 席順の紙渡されたけど、時計回りに


 司会(レニー)

 レヴィ

 カミーユ

 紗和←

 ブライアン

 ノエル←

 四礼←

 モナミ(人形)

 庵

 グリゴリー(俺)

 伊織←

 アドルフ

 ロナルド

 ローザ

 エリザベス

 レオ(アダムズ)←

 コルネリス←

 ロバート

 ロジャー

 アンドレア

 ロデリック

 サーラ

 アンジェロ←

 レオナルド(ビアッツィ)


 ナチュラルに単体で具現化してやがるこいつら……!!

 しかも改めて見たら人数多っ!?真ん中に人形がポツンとあるのもシュールだな!?

 あれ?ローランドの名前書いてねぇな?


「ロが多くてややこしいから本名で書いといた。詳しくは64話参照な」


 なんだそのメタ発言。まあいいか。

 へぇ……ローランドって本名アンドレアっつうのか……。たしかに、キースがコルネリスだったり俺が知らねぇ名前もちらほらあったりする。


「じゃ最初は司会の俺がくじ引くぜ。……16番が9番に命令して、完遂したら9番がプレゼントもらえ」


 よーしまずはセーフか。このまま当てられずに終わりたい。


「16番……私だね」


 いきなりロナルドかよ!!!いきなり鬼畜変態紳士が来たよ!!!いや、だけどまだなんとかなる。9番が誰かにもよる……!!


「……!?」


 ロデリックの動揺が見えた。どんまいロデリック。お前はクソな兄貴を持ったが良い奴だったよ……。


「あ、悪ぃ。番号逆だった。これ9じゃなくて6番だわ」


 ……あれ?俺じゃねぇのこれ?


「マジかよ……」

「……なんでグリゴリーなんだ。面白くない」


 しかもこの扱いだよ。え?泣いていい?


「仕方ない。一応なにか頼んでおくか……。……8番の胸を揉む、でどうかな?」


 この野郎!!!!この野郎!!!俺にセクハラの片棒を担がせようってか!!いつもそうだ、この下衆は誰かに犯罪の片棒を着せて脅したりする!!

 いや、でもこれはさすがにNGが入るんじゃ……?


「レヴィどう思う?」


 判定そいつなのかよ。


「揉むのはNGだ。軽く触れるまでに留めろ」


 ありがとうレヴィ!!今だけはお前に感謝する!!

 ロナルドは舌打ちすんな。

 で、8番は……?


「……俺……?」


 なんだ、ローランドかー。男の胸ならちょっとくらい触ってもトラブルにならねぇよな。面白みはねぇけど、まあリスクは低い方がいいしな。サクッとタッチしてくるか。


 ふに。


 ……ふに?あれ?柔らかくないこいつの胸筋?


「……いつまで触ってんだよ」


 なんかロデリックが怒ってる……?


「え?おっぱい……ある……?」


 そういやよく見かけるローランドより身長ちょっと低めにも見え……


「グリゴリー。フリーズしていないで早く手を離せ。軽く触れるだけだと言ったはずだ」

「グリゴリーさんサイテー」


 庵ちゃん、ジト目はやめて。結構それ心にくる。


「いやいやいや誤解だって!なんか意外なものあったから固まっちゃったんだって!」

「とはいえAカップくらいかな。私が揉んだからBくらいには育った気もするけれど」


 ロナルドが横から口出してくる。……この人、なんかとんでもないこと言ってない?


「お前は黙ってろ腐れ外道。……グリゴリーさん気にしないで。びっくりしただけなのは伝わったから」


 ニッコリと笑ってロナルドに殺意を向けるローランド。

 う、うんありがとうローランドくん。……ローランドちゃん……?

 あ、アンドレアちゃんか!!


「……しかし、大丈夫かねアン。そういうのはトラウマだろうに」

「あれくらい平気だよ。ロジャー兄さんは過保護すぎ」


 ……隣の骨チラしてる軍人が普段のローランドと顔似てる……ような……?まあいいや、あとで「敗者の街」読んどこ!!

 1月20日に紙媒体も出るらしいしな!


 というか……ロナルドからプレゼントって何渡されるんだ……?R18な予感しかしねぇけど……。


「レオナルドあたりにも当たることを想定しておいてよかった。……これなら、誰に当たっても面白いし困りはしないからね」


 頼むからR18グッズはやめてくれ。頼む。


「ローランドとレヴィの観察ゲフン成長の記録かな。写真で収めてある」


 思いっきり犯罪なのが来ちまったよ……!

 ロデリックが「受け取ったら殺す」って顔してるしロバートが「ちょっと欲しいかも」って顔……おいロバート?それでいいのかロバート。


「レヴィ、NGか?」

「NGだ。燃やせ」


 ですよねー!!まあ受け取る羽目になるよりマシですね!!俺どっちもそこまで好みじゃな……いやまあローランドはちょっとだけありかもだけど……。


「グリゴリーさん。後で、僕……クッキーあげる」


 よっしゃ。天使からクッキー貰えるとか最高だしもう何も悔いはないかな……。


「男の方がいいなら、ロジャーの盗撮ゲフン記念写真も数枚入れているよ」

「今とても衝撃的な事実を聞いてしまった気がするのだが?」


 なんつーか……守備範囲が広すぎる……。


「じゃあ次行くぜ、グリゴリーが番号指定しな」


 レニーに促される。……つっても、ちょっとだけなら番号はわかったからな……。

 と、庵が背中に何か、文字を書いてきた。


「1」


 ……これ、庵が1番ってことか。それで、誰かしらに繋げようって魂胆か……。だけど、番号わかるのか?

 と、今度は「13」と番号が書かれた。


「レニーさんが言ってた」


 ……今度は小声で言ってきた。何を?まあいい、言ってみるか。


「1番と13番……?」

「あ、13番?僕だね」


 カミーユに当たったらしい。

 ……レニー、まさかイカサマでもやったんじゃねぇのか……?収賄か……?


「やったー!じゃあカミーユさん、ハグして!」


 おい、そいつ超ド級のドMだぞ。いいのかマジで。


「ええー……そういうの苦手なんだけど……。……はい」

「わーい」


 ま、まあ……本人が嬉しいならいいか……


「城島さん……私とは嫌なのかな……」


 ポソリと尾崎の方の伊織が言ってきた。

 ……羨ましそうにカミーユを見ている。修羅場は勘弁して欲しい。俺挟まれてるし。


「じゃあはいっ、いおからのプレゼント」

「なんだろう。……あ、手袋?助かるかも」

「でしょー?外出る時大事な手、守ってね」


 すごいぶりっ子してる……気が、するけど……もしかしてガチで好きだったりするのか、庵。読めねぇんだよなこいつ……。


「いお、カミーユさんの絵大好きだから!」

「え、普通に嬉しい。ありがとう」


 ……なるほどな。ファンだったのか。そういうことか。平和だなここ。


「じゃあ次僕が番号言えばいいの?」

「おうよ。ちゃっちゃと頼むぜ」

「じゃあ9番と8番ね」


 ……お?さっきわかった番号じゃねぇのか、これ。


「頑張れ、ロデリックくん」


 しかも、ちょっと茶化すようにウィンク。……キザかよ……。


「……あ、アン、お、俺に何して欲しい……?」


 落ち着けロデリック。逆だ。お前が命令するほうだ。


「……お、お願いは、よく聞いてもらったから……その、今日はアンの頼みを聞きたいな……って……」


 良い奴かよ……。お前のことよく知らなかったけど、めちゃくちゃ良い奴だな……。


「……じゃあ……今度、海、見に行きたい。ロッドの運転で」

「……!わかった!どこでも連れてく!」


 ロバートがニヤニヤして、サーラが「どんどんやりな」って茶化してる。アンジェロも「ヒューヒュー」って煽ってるし、ロジャー?に至ってはちょっと泣きそうになってる。……リア充かよ……眩しすぎて目が潰れるわ……。


「……なるほど、帰りにカーセックスするのかな」

「お兄さま、黙っていた方がいいわよ」


 ああ、うん、ロナルドはロナルドだった。


「……アン、これ……プレゼント。他のやつに当たるかもだったから、無難なのだけど……」


 と言いつつ、ロデリックはティディベアを差し出した。……まあ確かに、イオリ組にあたっても違和感ないな、あれなら。


「ありがとう、ロッド。……大切にする」


 頬を染めるアンドレア。

 見てて小っ恥ずかしいわ!!!いいなぁリア充ども!!


「グリゴリー!ブライアンが「僕もグリゴリーさんと行きたい」って言ってるよ!」

「あ、そうなの?じゃあ行こっか」


 カミーユと喋ってた(というかカミーユに語ってた)紗和が声を張り上げつつ伝えてくれた。

 マジかー。天使が言うなら連れてってやるしかねぇな、うん。


「君も大概リア充してるから安心しなよ」


 カミーユがなんか呆れてる。うるせぇむしろそこらのリア充より勝ってるわ。ブライアンだぞブライアン。天使だぞ?


「よーし、じゃあローランド、番号指定しな」


 これで明らかになった番号はもうなくなった。やっぱ直感で選ぶのかな。

 ……ん?ロジャーがローランドになんか耳打ちしてる?

 んん?ロデリックがローザの方チラチラ見てる?


「……ロッド、聞いた?……そっか」


 そして今度はさっきイチャイチャしたふたりがまたイチャつく。


「…………じゃあ、4番と15番で」

「15番……?あらぁ、わたくしねぇ」

「ふむ、4番か。奇遇だなローザ。……いやはや、アンが夫婦を偶然引き当てるとは!どうやら運命は私たちを祝福しているようだ!」


 イカサマ見えてたけど見なかったことにしよ。うん。

 ロナルドが「こいつらよくやる……」見たいな顔してるけど、たぶんそう思ってんだろうな。

 ……いや?待てよ?ローザのことだからえぐい命令課したりしないよな?靴を舐めろとか?……あ、でも命令権はロジャーの方か……?


「ローザ、ここはひとつ、お互いに命令し合って渡し合うのでどうかね」

「あらぁ、いいわねぇ。じゃあ命令よ、ロジャー。あなたにはいつかお仕置きをしないとと思っていたの」


 やっぱりな!!大丈夫かなロジャー!!


「……何なりと言ってみるといい。どんな罰でも受け入れよう。それがたとえ鞭の一閃だろうと百閃だろうと……。……いや、さすがに鞭は痛そうだ……」

「愛らしいことを言うのねぇ。さすがはロジャーよ」


 なぁこれ、俺は何を見せられてんの?なんで夫婦のSMプレイ見せつけられそうになってんの?


「……早死した罰よ。本当はギチギチに縛りあげたいのだけど、理性は貴方に痛いことをしたがらないの」


 ああ、うん。理性が働いててよかったよ。


「謝ってちょうだい。心の底から、死んだことを詫びて。わたくしは……私はあんな終わり方望んでいなかった」

「済まなかった、ローザ。……つらい思いをさせただろう。私も……俺も、君とあんな形で死に別れることを望んでなどいなかった」


 ……あれ?何この空気。なんでこんなにしんみりし出したの?


「だが、俺は感謝している。……君の想いが、アンの願いが、……ロンの執心が、再び俺たちを巡り合わせたことを。互いに別れを受け入れ、先に進めるほどの時間があったことを……!」

「そうね……。けれどロジャー、私が貴方以外を愛したとしても、決して貴方以上には愛せないわ。……それは、変えられなかったの」

「……ああ、酷いことだとは思うが……俺は、それを嬉しくも思っているんだ」

「いいえ、何も酷いことじゃないの。……どんなにつらいことがあったって、ロジャーの思い出と一緒ならなんだって頑張れるのだから」

「ローザ……。ありがとう。俺も、君の思い出があるからこそ理不尽にも耐えられた。……君に、これを贈ろう。大切にして欲しい」


 なんでそこで薔薇のプリザーブドフラワーとか出すんだよ。キザかよ。オシャレかよ。リア充かよ……いや夫婦だわ……。


「次は私からの命令だ。長生きしてくれ。……そして、どうか自由に生きて欲しい」

「ええ、分かっているわ、ロジャー。……ねぇ、それなら……おばあさんになっても私を愛してね?」

「ああ、もちろんだ。君が100歳になっても、200歳になっても愛している。……アンや、ロバートのことを頼んだ」

「任せてちょうだい。ロデリックともども、幸福に導いてみせるわ。……受け取って、ロジャー」


 ローザが渡したのは何かの写真だった。……あの服装だと結婚式……っぽいな。

 今度はローランドが涙ぐんでいる。というか他の奴らもところどころ泣きそうになっている。

 割とガチの展開すぎて、俺はどうしたらいいのかわからないけど……泣いてる天使はやっぱり天使だなと思った。


「じゃあ……次は私が選ぶのね」


 そして、ローザはサーラに目配せした。アンジェロもなんか不審な動きしてる。

 こいつら、ガチで運任せにする気がねぇな……!?


「11番と17番でどうかしら」

「あたしだね。……17番は誰だい?」

「……俺だよ。ったく、運なら仕方ねぇな。いつまでも逃げてられやしねぇ」


 示し合わせてカップルにするのが流行っちまってるなこれ。やべぇよリア充の供給過多だよこれ。天使見て癒されよう。あ、微笑んだ。ありがとうブライアン。俺もめちゃくちゃ頑張れる。


「レニー。……じゃあ、あたしの質問に答えな」


 キースがガン見してる。ロバートが押しやられて苦しそうにしてる。

 ……まだ諦めてなかったのかこいつ……。


「あんた、あの時……本当は、本気で生き返るつもりだったんだろ?」

「ああ。……そのつもりだったよ」

「そしたら、……そしたら、あたしを嫁にもらうってのも、嘘じゃなかったんだよね?」

「嘘じゃなかったさ。……嘘にするつもりもなかったぜ。なんて、言ったって信じちゃくれねぇか?」

「信じないよ。あんたはいつも嘘ばっかりだからね」

「……ま、そう来ると思ったよ」

「まだ諦めてやしないだろ?あたしは幾らでも待ってやる。……生き返ってきな」

「俺よか、アンジェロの復活を願ってやれよ」

「何言ってんだい。二人とものを願ってるよ」

「……なぁ、本気で言ってんのか?」

「別に、悪いことして蘇らせようとは思ってないよ?……なんかこう、いいことしてたらなんかの間違いで生き返ってくるようなのを狙ってんのさ」

「はっ、どんな博打だよ。勝算が欠片もねぇな?」

「あんたは、そういうのでも燃えるんだろ?」

「……ああ、まあな。その通りだよ」

「死んだままなら死んだままで、思う存分楽しく生きてやるしね」

「……お前さんは、強いな」

「当たり前さ」


 キースがおいおい泣き出したのはスルーしておこう。あの涙は明らかに感動のじゃねぇし……。


「よし、聞きたいことは聞けた。……受け取りな!」

「……センスのいいコートだねぇ。あんがとよ、サーラ。いい女になったな!」


 ウィンクして、その場で羽織るレニー。レオはずっと黙っていたが、「よかったな、兄弟」と、……少しだけ、重い口調で声をかけた。

 頼む、次はリア充ネタ以外にしてくれ。死別多いから茶化しにくいし。


「と、また俺が選ぶんだな。んじゃあ10番と5番」


 今度はテキトーなのすぐ分かった。何が来るんだ……?


「10番……?俺だな……」

「5番?僕だけど……」


 アドルフとキースだった。……うわぁ……因縁あるヤツらが引いちまったよ……。

 四礼がなんか「呪え!呪え!」とか煽ってレヴィがちょっと頷いてるけど、これで過激なの出たらレヴィは止めるんだよな……?アドルフだから変なのはやらねぇと思うけど……


「キース。……アンタに頼みがある」

「どんな頼みだよ」

「タバコ切れたから買ってきて欲しい」

「お前さてはやりたかったんだな!?」


 なんだろう、アドルフが可愛く見えてきた。和むなこれ。

 つか、「アドっさんもやるじゃねーの」って言ってるレオナルドはどういう目線なんだ?


「ついでに昼飯も買ってきてくれ」

「それもやりたかったんだな……!?わかったよ買ってくるし、その時にプレゼントももらう!!」


 満足げな顔で左しかない腕をガッツポーズさせるアドルフ。癒しかよ。

 ……で、しばらくしてキースは帰ってきた。どこに買いに行ってたのかは深く考えないようにする。


「……よし、よく買ってきた。ほらよ」

「ハンカチか……無難だね」

「無難なのが一番っすよこんなもん……」


 因縁ある割に仲良く見えるのは、どっちも自分の罰を分かってて受け入れてるから……なのかもな。そういう意味では大人だよな……。


「次は僕が番号を選ぶんだな。……ロバート、不正は受けつけないぞ」

「やっぱり……」


 しゅんとするロバート。……そうなると思った。


「じゃあ……12番と14番……?」

「お、12?オレか」


 あれ?レオだけ?14番が名乗り出ねぇ……


「……僕……」


 ロバートか……レヴィが相手の時に当てられたかったんだろうな……


「おし、んじゃあなんか昼飯買ってこい」

「また!?」

「アドっさんがやってたからアリなんだろ?」

「うう……買ってくる……」

「2人前な」

「しかも結構食べる……」


 そのままフラフラと買い物に行き、案外早く帰ってくる。

 帰ってきたロバートに、レヴィが「後で少しは付き合ってやる」と言ってるのが聞こえた。……途端に、ロバートは元気になった。ちょろいなこいつ。


「レオさん買ってきたよ!」

「おし、んじゃあ片方はお前のな」

「えっ?」

「プレゼントってのいるんだろ?2人で食おうぜ」

「レオさん……!!」


 落ち着けロバート。結局金出してるのはお前だ。誤魔化されんな。……つっても誤魔化されるんだろうなぁ……。


「ロバート。後で俺がもっといいものを奢ってやる」

「えっ、ほんとに!?」


 すかさずアプローチするレヴィ。……言うべきことはちゃんと言うあたり、イケメンだよなぁ……しかもやっぱり顔面偏差値高ぇ……。


「じゃあ次選ぶのは僕だね、えーと……7番と13番!……あ」


 被らせたよ。こいつ思いっきり被らせたよ。ドジっ子か。


「じゃあ代理でノエルね。相手と命令によっては僕が行くけど」

「……仕方ないわね」

「なんならボクでも構わないんだよ!」

「いいわよ、行っといてやるわ」


 代理とかアリかよ!!レニーがレヴィと審議し出したけど、まあいいかって顔で収まった。ガバガバだな!?

 人形はずっとカタカタ動いてる気がするけど、何言ってんのかわからねぇ。シュールだな……。


「そして、7番は俺だな」


 レヴィが手を挙げた。


「うん、ノエル。代理お願い」


 レヴィ相手じゃどう考えてもプレイにならねぇってかお前。そういうことだよな。そういうことなんだよな?


「ノエル・フランセルか……。……特に思い浮かばんが、カミーユさんの意志を忘れるな」

「……忘れたくたって忘れられないわよ、あんなの。……それだけ?」

「特に思い浮かばんからな」


 わかる。レヴィはそういうの苦手そうな気はしてた。


「では、プレゼントを渡すとするか。なるべく誰に当たっても困らない実用的なものを考えたが、これならば貴様も使えるだろう」


 新品のノートセットを取り出してきた。筆記用具付きで。

 ……真面目かー!?真面目すぎかー!?


「……え、普通に欲しい……」


 ロバートがぼやく。そうだな。お前学者だもんな。普通にいるよなそういうの……。

 ……つったって、俺も患者からの聞き取り用で結構ああいうの重宝するけどな……。……確かに理にかなってんな……?


「そうね……とても使うわね……」


 つまんない男ね……って顔してるのは突っ込まないでおこう。厳密には男じゃねぇけど、それも言わねぇでおこう。


「ノエルちゃん、それでオレのこと描いてくんね。イケメンだから描きがいあんだろ」

「そんなむさ苦しいもん描きたくないわよ。カミーユに頼みなさい」

「えっ、なんで僕!?」


 ……そんなアホみたいな会話も聞こえた。

 それからも交換は進んだが、特に面白いことは無かったので割愛する。


「……じゃ、次は21番と20番!」


 尾崎の方の伊織からマグカップを貰った庵は、嬉しそうに2人で記念写真を取り、番号を指定した。


「……20番、ワタシです」

「21番……俺だな」


 ずっと静かだった方の夫婦が声を上げる。

 ……しばし、流れる沈黙。やがてレオの方がエリザベスに声をかけた。


「エリー、笑って欲しい」


 ……戸惑った様子だったが、エリザベスも頷いてどうにか笑顔を作った。……不格好な、ぎこちない笑顔だった。


「……うん。ほら、プレゼントだ。大したものでは無いけど……」


 レヴィと似たような発想だったんだろう、レオは小さな使い捨てカメラを差し出した。

 エリザベスはおずおずと受け取り。「ありがとう」と、小さく呟いた。


「……君は、それでいいのかい?」


 なぜか、ロナルドが声をかける。……あいつ、そんなこと言う性格してたっけ……?


「好きでもない男には寄りかかれるのにね」


 漏れ出す嘲笑と、皮肉。


「……黙っていて。レオのことも、好きなわけじゃない」


 震える声は、強がりだとすぐに分かる。

 レオは黙って妻を抱き締め、エリザベスはハラハラと涙を流した。


 ……それを、ロナルドはどこか複雑そうに見、やがて目を逸らした。

 アイツは手に入らないものを好きになりやすいやつだし、愛し方はともかくとして惚れっぽいやつだから……つまりは、そういうことなんだろう。


「貴方も難儀な人よね、お兄さま」


 ローザがボソリと呟く。ロナルドは一言「何のことやら」と呟いて黙り込んだ。


開き直って欲を貪る救いようのないクズのお兄さまには、それがお似合いいい罰ね」


 しんみりした空気を破るように、エリザベスが「6番と22番」と、口にした。


「22番って……?」

「……僕……?」


 ブライアンが声を上げる。「ほほう!良かったじゃないかグリゴリー!!」と紗和が茶化してくるけど、まあ、いつも癒されてるしいつも世話になってるから、今更みたいなもんだった。


「これからもよろしくな、ブライアン」

「……!ん、よろしく、グリゴリーさん」

「遊ばなくなったゲームやろうかなって思ったけど……いつでも渡せるやつでゴメンな?」

「ううん、嬉しい」


 なんで周りが微笑ましそうにしてるのかよく分からねぇが、ブライアンが嬉しそうだからそれでいいやと思えた。


「城島さん、……私も、城島さんとゲームとかしてみたかった」

「ほんとに?じゃあ、やろーよ。いおならいつでも会えるから!」


 俺の両脇で楽しそうにするイオリ組。ほんと元気だな……。


「えと、じゃあ……8番と、9番」


 ……と、ブライアンはもう指定された番号を口にした。また被りか……?と、思ったが、よく考えると順番が違う。


「……そういうの、別にいいのに……」

「僕、ローランド……応援、したい」

「……そういうとこが、見ててキツいんだよ、ばか。……でも、ありがと」


 ふい、とブライアンから目を逸らしつつ、ローランド……アンドレアは悪態をついた。……やっぱり、同族嫌悪な気がするんだよなぁ……。似てるし……。


「……ロッド、じゃあ……今度は、ロッドのお願い聞きたい」

「え。そ、そうだな……。……どうしようかな……」


 サーラが「キスでもしたらどうだい!」と茶化し、レニーが「そうだやっちまえ!」と乗っかって、レオナルドが「ついでに舌入れとけ」と煽ってレヴィにしばかれる。ロナルドが「じゃあここでセッ」と言いかけてローザに足を踏まれ、ロデリックはアンジェロやロジャーの方をチラチラと助けを求めるように見ていたが、やがて、決心を固めた。


「……海だけじゃなくて、他にも連れてくから……長生きしろよ。無理とか、絶対するなよ」

「うん。……約束する」


 にこりと笑って、アンドレアは大きめの包みを手渡した。


「……ズルして、渡すつもりだった。ロッドに受け取ってもらいたくて……」


 たぶん、セーターだろう。大きさがそんな感じだ。ロデリックは感極まったようにハグをして、アンドレアも首に手を回して受け入れる。

 ……やっぱりこそばゆいな、ここの2人……。


 ……と、お開きの時間が近づいてきたらしい。……やっぱり、寂しいな。普通は会えねぇ奴らもいるわけだし……。

 なんてしんみりした気持ちでいると、レニーが叫んだ。


「フルーツバスケット!!」


 ……は?と思ってるうちに周りが走り出す。庵も伊織も早かった。アドルフも案外早かった。人形も誰かが抱えて行ったのか、いつの間にかいなくなってる。

 レヴィもぽかんとしているし、ロジャーも固まっている。

 ロバートもしばらく唖然としていたが、ハッとしてレヴィの方に走っていった。勢い余って抱きついてたけど、あれ、レヴィ負けるんじゃねぇかな……?


「グリゴリーさん、行こ」


 ブライアンが手を握ってきて、遅れはしたが走り出せた。

 ……なんだかんだ楽しかったし、来年もこういうのがあればいいなって、珍しい満面の笑顔を見たら思っちまった。


「やっぱり一番の「リア充」、君なんじゃないの?」


 苦笑するようなカミーユの声が聞こえる。


「メリークリスマス。これからも仲良くやりなよ」


 言われなくても、と伝えたくて振り返る。


『この時間が、一番のプレゼントだよ。……楽しんでくれた?』


 カミーユがポケットに入れた木彫りの人形が、そう言っているように感じた。

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