2022年 5月

六畳部屋の主人と夢

 新型コロナウイルスに感染したことがわかり、一日二日は発熱と関節痛に苦しみましたが、三日目ともなると、ヘンテコな偏頭痛(後ろ頭の一部分だけ、頭皮が痛い)のみとなりました。そして、与えられた有り余る時間を六畳一間で過ごすという課題が重くのし掛かるのでした。


 本当は、二階にある書斎のデスクトップパソコンに向かいたいのですが、感染した私のとばっちりを食って濃厚接触者となった娘から「家の中、ウロウロしないで!」とクレームを付けられて(娘が感染した時に、そんな冷たい発言しなかったのにな…)、しょうがなく、六畳の主となっています。

 この久しぶりのエッセイも、この六畳部屋内にて、iPhoneで書いております。


 六畳部屋の入り口に、朝昼夕の3回、お盆に乗った食事が置かれて、LINEに「置いておきました」と短く連絡が入ります。

 テーブルが無いので、お盆を敷布団の上に置いて、皿や茶碗を持ちながら食事をいただきます。

 食事が終わったら、食器を乗せたお盆を廊下に出しておきます。

 トイレは、一階のトイレが私専用となり、晴れて、家庭内隔離が完成しております。


 いまいち、活字を追う気分にならず、部屋にある小さい画面のテレビを点けていますが、チャンネルは、断然、BSプレミアムが良いです。

 今日は、午前中に「ワイルドライフ」を観て、その後、「グランドグルメ ヨーロッパ食材紀行」でイタリアの伝統的な生ハムを堪能。午後は、そういえば、最後までまともに観たことがなかった映画「アンタッチャブル」を。あの階段のシーンはなんとなく覚えていましたが、そのシーンを含めて、もう少し、演出に工夫の余地があったのでは??と生意気にも思いました。その後、「美の壷スペシャル」で、鳥取の牛ノ戸焼きや大分の小鹿田焼きの秀逸な陶芸作品を観ました。


 夜中は、BS1が良いのです。

「街角ピアノ」や「ヨーロッパ トラムの旅」が好きです。


 映画以外のいずれの番組にも、共通点があります。

 ナレーションがない、もしくは、少ない。刺激の少ない静かな音楽が流れている。そして、出演している人は多くが田舎暮らしで、テレビを観たり、パソコンをいじったり、ましてや、スマホの小さい画面なんて見て過ごしたりしていない、ってことです。


 日がな一日、テレビを点けてそんな人たちの暮らしを眺めているのは、ワタシだけなのであります。


 ワタシも、BSプレミアムの番組の向こう側に行って暮らしてみたい。

 これが、目下のワタシの夢、です。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る