17.スネークヘッドと混泳

 一般的に、スネークヘッドは混泳のできない魚として知られる。


 原因は言うまでもなくその気性の荒さだ。捕食者なので口に入るサイズの魚なら容赦なく腹に収めてしまうし、ある程度大きい相手に対して攻撃を仕掛けることも茶飯事。同種の混泳に至ってはきわめてマズく、かなりの確率でケンカしてお互いボロボロになる。


 しかし、何事にも例外はあるもので(※注1)、わたしの部屋にやってきたブルームーンギャラクシースネークヘッドは実に温厚な個体であった。


 個体の性格に気づいたのは、生き餌を導入したときだった。


 肉食魚を飼う醍醐味はやはりダイナミックな捕食シーンにあるとわたしは考えている。というわけで、お迎えして間もなくアカヒレ20匹ほどと混泳させてみたのだ。獰猛なフィッシュイーターという評判が正しければ、アカヒレは瞬く間に食べ尽くされてしまうはずだった。


 ところが予想に反して、ブルームーンギャラクシースネークヘッドはアカヒレたちと共存したのだ。


 これにはさすがに戸惑いを覚えた。ブルームーンギャラクシースネークヘッドはブリード方法が確立されていない魚であり、ということは、わたしが購入したのだって当然ワイルド個体のはずなのだ。自然下で何食って生きてきたんだコイツ。


 ともあれ、ひとまず混泳は大丈夫そうだ。


 そうとわかれば話は早い。オールガラス水槽に引っ越す段階でアカヒレとは隔離して(※注2)、他の熱帯魚と一緒にしてやることにした。グリーンネオンテトラが20匹、ラスボラ・ヘンゲリーが5匹。色鮮やかな小魚の群れが上層~中層を泳いでくれれば、主役のブルームーンギャラクシースネークヘッドが底に陣取っていても水景が華やいで見える。


 また、混泳ができるということはコケの処理がしやすいことにも繋がる。タイガープレコやサイアミーズフライングフォックス、タイヤトラックスネールを入れてやることで、水槽が随分ときれいになった。


 ……もっとも、このブルームーンギャラクシースネークヘッドも全ての生体と共存できたわけではなかった。コケ取り要員としてヤマトヌマエビやミナミヌマエビを投入したときだけは、しっかりと瞬く間に全滅させてくれたのである。


 なるほど、エビ食って生きてきたんだな~。



     ◇ ◇ ◇



 ※注1:あくまでも例外であることに注意されたし。繰り返しになるが、スネークヘッドは基本的に獰猛なフィッシュイーターである。ブルームーンギャラクシーなら混泳できるという話でもなく、個体の性格によると思われる。


 ※注2:このあと迎える別のスネークヘッドがアカヒレを平らげた。

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