第12話 修学旅行1

 さて、班決めの日から始まった修学旅行の準備は忙しく、あっという間に二か月が流れた。

 修学旅行先は東京。僕たち田舎に住む人にとっては、あこがれの場所だ。今日、一日目の予定はディズニーランド(正確に言うと東京ではないのだが)だ。

 今は東京に向かうバスの中。僕の隣は西野君。ちなみに本田さんは僕の前で、清水さんと一緒に座っている。時折笑い声が聞こえてくるから、楽しそうだなあと思う。

 僕が窓からぼんやり外を眺めていると、西野君から話しかけられた。

「ねえねぇ石橋君」

「な、何?」

「石橋君って、大宮君とどういう関係なの?」

「どうって……」

 西野君が上目づかいで僕を見つめてくる。くそ、男のくせに可愛いな!

「友達?」

「えーっと……まぁ、そんなとこ」

「嘘⁉ ほんとに?」

「え、うん、色々あってね」

「へー、意外。大宮君って、もしかして実は怖くなかったりする?」

「いや。めちゃめちゃ怖い」

「イメージのまんまなんだ! 昴、大宮君の隣の席じゃん? すごい大宮君のこと怖がってて、大丈夫かなあって」

「成程。うーん、話しかけなければ大丈夫なんじゃないかな」

「あー……。昴、話しかけそう……」

「マジ?」

 と、ちょうどその時。

「あぁ⁉ んだよてめぇ、気安く話しかけんじゃねぇ!」

 大宮君の怒鳴り声が聞こえてきた。

「あー、昴、やっちゃったね」

「みたいだね」

 ふたりで、くすくすと笑いあう。

「ねぇ、石橋君、今日のディズニーランド、誰かと一緒に回る約束としてる?」

「してないけど」

「足立君とも?」

「うん」

「じゃあさ、一緒に回ろうよ!僕と昴と、三人で!」

「え?」

「自由行動、OKだったよね?」

「うん……。え、僕も一緒に回っていいの?」

「もちろんだよ! 多分昴もいいっていうよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 そういうと、西野君は満足げにほほ笑んだ。

「実はさあ、修学旅行で一緒になるまで、僕石橋君のことただ単に地味で根暗な人かと思ってた」

「え」

「あ、ごめん! そういうんじゃなくて! あのね、同じ班になったら、そうじゃないんだなってわかったっていうか! 普通の人なんだなっていうか! ……友達になりたいって、思ったっていうか……」

「おう」

 友達になりたいだって。こんなこと言われたの初めてかも。やばい、嬉しくて泣けてくる……。

「え⁉ なぜ涙目⁉ あなたとは友達になりたくないですってこと⁉」

「ちが、嬉しくて、さ」

「西野君……。今みたいな流れはひかれる可能性があるから、今後使わない方がいいよ」

「……」

「これからよろしくね!」

「……よろしく」

 こうして、僕の修学旅行が始まったのであった。

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