第4話 隊列走行

 何もかもが1世紀前で止まっているこの村に不釣り合いな、最新式の自動運転車。

 廃校となった学校の、田舎らしく広大なグランドへ駐車されている4台のそれは、後にたつ、朽ち果てていくいっぽうである校舎のふるさを目立たせてしまう。

 実はこのムラの所有ではなく、センダイの街にも支部を持つ東京の研究機関からの借り物であるらしい。

 そのうち1台は自動運転支援システムが整備されていない道路も走れるよう、手動で運転できる運転席が設置されている。

 中学校の同級生はハンドルをみて、教科書の写真以外ではじめてみたと目を丸くしていたのを覚えている。

 手動で走行する先頭の車両から、後ろ3台の車両を通信と電子制御技術によって仮想的に接続して牽引する、隊列走行技術というのは半世紀以上前からある技術らしい。

 けれどもこのムラに至るまでの入り組んだ細い林道をこれで走行するのは技術的に難しいらしい。

 手動で走行させた先頭の車の動きを、後ろの車はトレースするわけだけれど、正確にトレースするのは当たり前だけれど難しい。

 道幅が広ければ特に問題は起こらない。

 けれど、これが道幅が狭い上にカーブもきつく、そして路面が荒れているムラまでの林道の場合だと、後続車両が山肌にぶつかったり、脱輪したり、最悪谷から転落、する要因になりうる。

 ヨシオくんいわく若干内回りに走るらしく、内輪差が大きい車に乗ってると思って、大回りするように走れば問題ないといっていた。

 ひょっとしてこれを運転できるヨシオくんってすごかったりするんだろうか?

 それはともかくとして、この内輪差を縮める研究を行ってる東京の研究機関は実際の走行データが必要であり、このムラにはセンダイの街との間に移動・輸送手段が必要だった。それもトラックは入れないけれども、それくらいの輸送力を持つ輸送手段が。

 8人乗車可能なミニバン型の自動運転車。その運転席にヨシオ君、助手席には私の計2人が乗っていた。

 4台とも普通の自動運転車でもあるから、自動運転支援システムが整備されたスマートロードならば、目的地を設定するだけでどこでも行けれる。

 けれどもアスファルトさえボロボロのこのムラからの林道に自動運転支援システムなんて整備されているわけがない。

 そこでも、手動で運転できる自動車とそれに追従して隊列走行ができる車両なら走行が可能だ。

 運転席ではヨシオくんが残り3台の自動運転車と、隊列走行を行うのに必要な無線のデータリンクを確立している。

「こちらヨシカワ01 センダイRTC おはようございます。感度いかがですか?」

 それを横目に私は、この近辺の道路をすべて管理するセンダイ道路管制センター、だいたい道路管制センターの英訳であるRoad Traffic Controlの頭文字をと合わせてセンダイRTCとよぶ事が多い、を助手席と運転席の間に設置された無線機で呼び出した。

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