耐雪梅花麗

 雪に耐えて梅花麗し。

 厳しい雪の寒さに耐えた梅の花は美しく咲く。人も多くの困難を経て、大きな花を咲かせるものだ。道のりが少々厳しくても、耐えた先に光はある。

 と思わなければ前に進めない。


 大学院生になっても、未だ初講義が遠い今日このごろ。

 本を読んだり、新聞やニュースで社会情勢を見極めたりすることで知性を保っている。

 感染しない。感染させない。

 外出するのは、週に一度の買い物。あとはゴミ出しぐらいだ。

 一軒家でひとり、長い長い長い一日を埋めていた。


 ないことづくしで嫌気すら消えていく。

 趣味の野球観戦も、博物館や古本屋巡りもできない。

 ネタがなければ小説が書けない。現実を吹き飛ばすファンタジーも、胸を焦がす恋愛も思い浮かばない。

 散歩や家でできるストレッチをする気も起きない。


 生きる希望は風前の灯火になっていた。

 必要最低限の生命活動を繰り返すうち、テレビを付けても音楽を聴いても心が動かなくかった。


 県外に移動するリスクを思えば実家に帰ることもできず、感染状況を思えば県内にいる愛すべき人の元に駆け込むこともできない。

 自分が己を追い詰めていることを知りつつも、解決策は見いだせない。


 錆び付いた心でできることは、思いつくままに言葉を紡ぐのみ。

 何てことのない呟きを繰り返し、創作意欲を掻き立てるダイヤの原石を見つけるまで耐える。生き抜いてやる。

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