特別コラボ篇ネガティブなJKの告白

ラノベ新刊の発売日。

妹の唯悧ゆいりと一緒に

アニメイト来ていた。


「えへへ、お兄ちゃん。わざわざ

街合わせすると・・・デート

みたいだよね」


「えっ!?・・・・・・」


「ちがうの!

その、周りからデートに見えること。

ほ、ほら、わたしが喫茶店で

お兄ちゃんを待っていたら

そう見えること」


「そ、そうだな。もちろん

解っていたよ。俺が近づくと

彼氏とか見られていたなぁ」


夏休みが、終わってもカレンダーでの夏は終わっていない。

なんでも、ゆとり世代では

夏休みは、8月31日もあったらしい。


正直に羨ましい・・・それだけ

休みがあれば唯悧と

もっといられるのに。


「はぁー・・・」


ため息が聞こえ、右を見てみると

ラノベを眺めながら

憂鬱ゆううつな表情でため息を

する美少女がいた。

知らない高校の制服で

長い髪を真っ直ぐ整ったストレート。

瞳は大きくきれいな黒・・・

日本人だから黒は当たり前でも

あの子には黒曜石に見える。


端的に言って唯悧と劣らぬ

容姿端麗だった。


「・・・お兄ちゃん。

わたしがいるのに他の女の子に

目を奪わないでよ」


「ち、違うんだ唯悧!

その・・・なんていうのか」


まさか、唯悧の意外に目を奪われる

とは不覚だった。

それに気になるのは・・・。

唯悧に耳元まで近づく声を潜める。

視線は、あの子に向けると

不快を与えるので唯悧に向ける。


「あの子なんだけど、ラノベを

買うにしても見ているだけにしても

あんなに悲しそうな顔をしている

のが気掛かりなんだ・・・唯悧?」


「ふぇ!?な、なにお兄ちゃん」


「顔が赤くなっているけど

・・・大丈夫か?」


「う、うん・・・最初から平気」


なぜか動揺して赤くなる唯悧。

熱でもあるのだろうかと不安になり

俺は、唯悧の額に手を測る・・・

俺も額を触れ比較。

やはり少し熱い!


「あ、あの・・・お兄ちゃん。

その手が」


「えっ?わ、わるい唯悧。

その気もち悪かったよなぁ。

それよりも微熱があるじゃないか」


「ち、違うもん。

お兄ちゃんが急にふ、触れるから!」


なんだか的外れな気がするが

怒る元気があれば大丈夫だろう。

でも、帰りに病院でも寄ろう。

あの子を見ると・・・

こっちを見ていた。


(考えてみれば、店内で妹と軽い

喧嘩をすれば目立つか)


取り敢えず俺は会計を済ませ

待っていた唯悧に頭をなでる。


「えへへ、」


「それじゃあ、どこか食べに寄るか」


「うん!お、お兄ちゃん・・・

子供ときみたいに手を握っても

いいかな」


上目遣いで兄にそんな頼みするのも

年齢的に恥ずかしいのだろう。

だけど、俺にとっては望外の極み。


「断ると思ったのか。

いつでも繋いでもいいんだぜ」


「うん!・・・お、お言葉に甘えて」


恐る恐る唯悧は、俺の手をゆっくり

触れると、離れる。また触れ

今度はゆっくりとギューと握る。

な、なんだか、スゴイことされて

いるみたいでドキマギする。


ようやく手を繋ぎ店を出る。


「そこの兄妹カップルさん!」


背後から声が聞こえ振り返ると

先のあの子だった。

周囲を見渡すが、その兄妹カップルは

いない。否!もしかして俺達の――

指を俺は俺をさすと、その子は

頷く・・・左様ですか。


「あ、あの・・・どこかで

お会いしましたか?」


「いえ、初対面です。

急に声を掛けてしまい、申し訳

ありません。逢瀬おうせの邪魔をさせて心苦しいのですが、

お二人にご相談をよろしいですか?」


なんていうか、天真爛漫で活発的には

見えないのだ。

それに、急にそう言われても。


「すみません。

今は妹と買い物でして・・・

ご相談はできません」


「ですよね。急に押し掛ける形で

申し訳ありません。

でも、理想的な兄妹カップルですね」


「そ、それはどうも」


「兄妹・・・カップル・・・・・

あの、わたし達ってそう

見えるのですか?」


「ゆ、唯悧。急にどうした」


感銘を受け、目を輝かせる我が妹。

嫌な予感がする。


「はい!わたしもスゴくうらやましく

思える初々しい兄妹カップルです」


「え、えへへへ。そんなことは

無くもないけど・・・

その相談を聞きます!」


どうやら、唯悧は相談を受けた。

・・・まぁ、理想的な兄妹カップル

と言われて俺も悪い気持ちじゃなかった。逆に踊るような叫びたい!


俺と唯悧は、謎の美少女の相談のため

近くにある喫茶店に入った。


時刻が18時に迫ろうとするのに

店内は閑古鳥かんこどりが鳴く

入店すればバイトの大学生の女性

店員がとびっきりの

明るさで歓迎された。


とりあえず窓際に座る。

もちろん隣は唯悧。向かいは例の人。

店員に注文をする。


二人の美少女を見て、モテますねぇと

言わんばかりの顔を向けられた。

ちがう!スーパー世界一の美少女の

妹と兄妹カップルに過剰に

反応する変人です。


「えーと、それでは不躾ぶしつけなお願いを聞き受け入れた

二人に感謝します。

わたしの名前は峰島冬雅みねしまふゆかと言います」


峰島冬雅。彼女は、屈託のない笑みを

俺達、兄妹に向けるのだった。




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