第5話一人の人間の終焉はこの事を言うんだろうなぁ

次の日、妹の笑顔が消えていた。

話題が絶えなかった毎日の食事は無言の食事となり、気づけば休日は終わり

また、いつもの平日になんだか助かったと

情けなくも想ってしまった。

喧騒の教室で俺は、

倒れるように机に突っ伏する。


「由布!昨日たまたま買ったマンガが

すっごーーーく、面白くて・・・

ね、眠たいの?」


高野大善たかのだいぜんがいつもの溌剌はつらつ

声が聞こえたのでゆっくり顔を上げ

笑顔を。いつもの笑顔を作って挨拶する。


「おは・・・よう・・・高野・・

今日も俺は、元気120パーセントだぜ。」


「えっ!・・・う、うん?

・・・・・・明らかに空元気な

挨拶されて、驚いたけど

なにかあった?」


戸惑いと不安ながらも尋ねてくる。

友の高野大善は、突然そう言うのだった。


「あはは、何を言っているのかな?

それがしは、常に明鏡止水めいきょうしすいたる

心でいるのに。どうしたんだい?」


どちらかといえば調子はいい方で

精神は静寂、あらゆる困難を越えた

者にしかできない刀を構える

武士もののふのそのものなのに。


「いやいや、スゴく変だよ!?

一人称がそれがしとか言っているし、

そもそも、その作り笑顔なに!

口調もおかしすぎるーー!!?」


感嘆符(!)と疑問符(?)が多い・・・

ようなそんな絶叫する。

今日も相変わらず元気のようだ。


「二人とも、今日も仲がいいんだね。」


振り返ると声を掛けたのは

中肉中背で短くも長くもない

その真ん中に入る黒髪の

穏やかな印象した顔立ちの男。

成績は著しく好ましくない。運動も得意では

ない・・・何て言うか最近の

普通を体現したような友達だ。

同じクラスで高野以外の唯一の友人である

十時連貞とときつれさだ

手を挙げ挨拶した。


「あー、十時ちわーす。」


「ちわーす!?・・・由布って

そんな挨拶してたかな?」


「おはよう十時。・・・それは

ツッコミ済みだからそれ、いらない。」


「しんらつぅ!?」


驚きの連続な十時連貞なのだが、

この友人のこそが俺の知っている中では

東京一の驚きを絶えさせない人生を

持つ存在である。


「それより、十時・・・例の彼女さんとは

どうなの?

きっと、熱々でしょうけど。」


高野の質問に十時はそれを訊かれるか、

っと頭を掻きながら苦笑する。


「それが・・・学園二位の美少女と

うたわれる二年先輩の

休松舞鶴やすみまつまいづるさんの

出会いは、一週間前にさかのぼる。」


やすみまつ・・・知らない名前が出てきたの

だけど。


「・・・・・えっ?」


困惑するロリ高野。俺も驚いたよ。

なにか、語り始めたのだから!?

突然の彼女ではない知らない美少女の

話を始めようとする十時。


「それは・・・正午だった。城戸きど

さん・・・あっ!彼女さんと

弁当を持って隣り合わせ歩いてたら

曲がり角から休松やすみまつさんが

走りながら出てきて衝突してしまった。

俺は倒れてしまい、目の前には

休松さんの顔がキスをしそうなほど

至近距離になってしまい・・・

そんな光景を見た彼女さんは、

怒らせてしまって走っていたんだ。」


最近のハーレム系主人公並のイベントを

起こしたようで、俺と高野は、ため息する。


「・・・何て言うか、スゴいなぁ!」


「・・・そうだね。」


俺と高野は、お互い視線を合うと

自然に思ったことを言う。

ツッコミ要素が多すぎる話。

そんな俺達に気にせず十時、のちに

ハーレム王は、話を続ける。


「なんとか、彼女さんに疑いは晴れて

元戻りになって――」


「意義あり!」


高野は、某有名な弁護士のような

指を突きつける。


「ぐっ!?」


すると、胸を抑え苦痛そうにする十時。

・・・・・えぇーーーなにそれ本当に!?


「お前たち・・・そのゲーム最近かなり

やっていると見る!」


俺の言葉に二人はどこ吹く風で

何もなかったように進める。

・・・完全に聞こえているなあ、これは。


「疑問に思ったんだけど、

その彼女さん一人で登校している所を目撃

したのだけど・・・解決してない

んじゃない?」


高野の質問に十時は、本当に苦痛そうに

顔を歪めている。

つまり、その学園一の美少女とは

一緒に登校しているのに今日は一人だったのが疑問を思ったようだ。


「・・・うん。その話と

今の話が関係あるから続けるよ。

冷静になって、わたしの勘違いだった。

そう言ってくれたけど、

その放課後、休松さんに呼ばれた俺は

体育館の裏で告白され・・・戸惑った。

俺はどう傷つけずに断ろうと悩んでいたら

・・・いきなり休松さんにハグしてきて

それを彼女さんに目撃され・・・」


今でも鮮明に覚えているのか分からないが

その出来事を思い出して憂鬱になり

うつむく十時。

俺は、率直な言葉で励まそうと敢行する。


「あー、はいはい。それなら早く

誤解を解きにいくのが一番だな。」


「・・・でも、距離を置かれているし、

話しても、それじゃあ!って、去るんだ。」


だが、俺の言葉に響かなかった。

この友人は、その彼女さんと呼ばれる

恋人に熱いのだ。


「いつまで行動しなかったら、

進展はないんじゃないか?それに・・・」


真っ直ぐな性格だからこそ断言できる。


「お前が世界一好きになった女の子に

勘違いしたまま、

これで終わっていいのか?

そうなったら、自然消滅して関係は

修復なく終わってしまうよなぁ。」


少し悪役な声色で煽る。すると、

別人の目に友人は、十時は変貌する。


「違う!・・・仮に終わったとしても

この想いとか・・・勘違いだけは

させたくない!

だから・・・伝えに行ってくる!」


胸に秘めた表情を吐き出す十時。


「そうだよ!その方が彼女さんも

縁が戻るよ。きっと!」


曖昧だけど温かい応援をする高野に、十時は

親指を立て答える。


「ありがとう・・・なんだか、

目が覚めた!」


「ああ、絶対に上手く解決するはず。」


「っ、ああ!」


感銘した十時は走って行く彼女の元に。

絶対に上手く行くだろう。だって、

主人公とメインヒロインのような

登場人物の二人だ。

上手くいかないわけがない。


「あはは、・・・なんだかわたし達、

主人公を応援する

いい友人キャラみたいだよね。」


少し恥ずかしくなった高野は、

後ろ長い髪をぐるぐる回しながら言う。


「そうだな。アニメとかラノベなどで

よく出てくるよな、

そのポジション的なのは。」


「うん・・・それと・・そのいい友人って

高確率で後々に・・・・・

つ、つつ、つつつ、付き合ったりとぉか

するょおね?」


アレ?突然の間だったのか、

噛んでしまったのかな?


「言われて見たらそんな展開もあった。」


「ッ!!?・・・う、うん。」


期待と熱い眼差しで眼差しを向ける

高野になんだか微笑ましくなり、

頬を緩めずに気を付けながら伝える。


「まさか・・・そこまで熱く想って

いたなんて俺、思わなかったよ。

まさか、主人公の友人男女にそこまで

熱意があるなんて、思わなかった!」


恥ずかしそうにしていたのは、恐らく

モブキャラのたかだか恋愛なんてとか

一蹴されそうで嘲笑されそうで

震えていて恥ずかったのだろう。

そんな事をするわけがないのに

水くさい友達なのに。


「・・・・・・・・・・え?」


口を開きながら、フリーズする高野・・・

嬉しさのあまり思考がついてこれないの

なら、さらに嬉しくなるような

言葉攻めしよう。君に幸あれ!と

言わんばかりな勢いで。


「唯一の友人だろ俺達は、

だから気にせずにどんどん言ってくれて

いいんだぜ相棒!」


俺は、少しテンションが上がってしまい

恥ずかしい台詞を友人に言う。

その友人は、少しガッカリしたように?

思いきや嬉しそうにニヤニヤする。

期待の言葉じゃなかったようだが、

それでも喜んでくれたようだと信じたい。


「・・・・・そうだった・・・

鈍感だったよね由布は・・・ハァ。」


嘆息して・・・残念そうに嬉しそう?

諦めたようなつまりよく分からない。

どんな反応だろうか。


「えーと・・・迷惑だった?」


「全然、スゴく嬉しいよ。

ありがとうね。」


満面な笑顔で頬を赤らめながら言う。

まるで、恋をしている乙女のような

表情だった。

さすがにこれで恋とか勘違いはしないよ。


「高野・・・今、気づいたんだが。」


「・・・うん。十時のときから

みんなから注目の的だね・・・ハハ。」


時々、感じた視線を意識していたが

十時が出た所で気付いたのだ。

教室中のみんなが見ていることを。

さすがに奇行とか叫んだりしたら

悪目立ちするよなぁ・・・。

短い朝のホームルームは、

一日千秋な四字熟語のような悠久な

時を味わうのだった。

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