与の重

「紅白なます、か。」

「うん?」

「いや、平和…だったな。」

「言い方が誤解を産むよ?才造サイゾウ。」

 水引きをかたどっているとされ、平安、平和を願う。

「菊花かぶ、美味しい?」

「食わんのか?」

「美味しい?」

「旨い、が」

「そう…。」

「案外、お前は好き嫌い多いな。」

「いや、それ、飾り切りしたやつだから。うん。」

「食える。」

「うん。」

 冬が旬のかぶをおめでたい菊の形に飾り切りし、紅く染め、紅白の酢の物に仕立てたもの。

「小肌栗漬けっていうんだよ、これ。」

「ほう。」

「うん、それだけ。」

「いや、あるだろ他に。」

「ちょっと覚えてないかな。」

「おい。」

 将来の出世を願う。

 小肌はコノシロという魚の成魚になる前の名。

 出世魚であるから、縁起がよいといわれる。

 黄色はクチナシで染めた栗であり、五穀豊穣ごこくほうじょうを願う。

「ごちそーさん!」

「片付けるか。」

「頼んだよー。」

「おう。」

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