この麗しい女神に喝さいを!


「ねえカズマカズマっ!! 私、良いこと思いついちゃったの!」


 この駄女神がすごく自信満々に行ってくるときほど怪しいものはない。聞いたらろくなことがないのは目に見えている俺は黙ってちょむすけを撫でる。


「ねえカズマさんったら! もし意識的に無視しているのなら一生トイレに行きたいけど何も出ない呪いをかけるわよっ!!」

「やめろやめろ!! 話しだけは聞いてやるからっ!」

「物分かりがよくて助かるわ。 で、さっそくなのだけど私、アイドルになるわ!」

「は?」

「はってなによ。本気で言ってるのよっ! 私、思ったのよ。もっと信者が欲しい…。そして貢いでほしい。そのためにはどうするべきかと。そして思いついたの! アイドルになればみんなが崇めてくれるし、プレゼントだってたくさんもらえる。そして、普通のアイドルと騙されたオタクたちがアクシズ教徒に入信をする…。いいことしかないのよっ! だからてつ」


 こいつ、本気で言っているのか。いや、このまなざしは疑いのない本気だ。アクアがアイドル…? 


「おいおいおい、そんなに簡単なものじゃないぞ。基本アイドルなんてたくさん…」


 いやまて。これでも黙っていれば女神。しかもこの世界にアイドルなどという荒稼ぎをする文化もない…。これはもしや、、。


「いつもカズマさんは否定から入るのは良くないと思うの。こんなにも美しく麗しい女神様がいる…」

「よし、やってみよう」

「え、今なんて」

「なんできょとんとしてるんだ? だからやってみようって」

「ふふ、やっと美しくも麗しい私の魅力に気づいたのね。しょうがないわね…。特別にカズマさんをファンクラブ会員2号にしてあげるわ!」

「そう言うわけではないがお前が金に見えてきた。っておい、ファンクラブ会員になんてなりたくもないし、なんで2号なんだよ」

「むきいいい!! なによその言い方!! ファンクラブ会員有料にするわよ!!」

「そこじゃねーから!!」


 いつも通りに喧嘩をしつつも準備を始める。舞台は…アクシズ教の教会でも使えばいいだろう。多分、アクアが使うんだ。許可を出してくれるだろう。衣装は自分で作ると言って部屋に閉じこもったしな。舞台の準備を一人でやるのはきついな。二人にも話さないと。



「「えええええええええ!!! アクアが踊って歌う?!」」

「そ、そんなに驚くことはないだろう? 見てくれはいいんだし」

「それはそうかもしれませんがこの街でやるには難しいのではないのですか? 酒に溺れている姿しか皆さん思い浮かばないでしょうし」

「そうだ、この街じゃないところならまだしもここでやってもミツラギくらいしか見に来ないぞ」


 そりゃそーだ。


「だから名前を明かさずやろうって言ってんだよ。しかも今、自分の部屋でウキウキしながら衣装づくり始めてるから今更やめられないんだよ」

「しかし、舞台とかはどうするのだ? この街に大量に人を集められるところはあまりないと思うが」

「アクシズ教会を借りようかなと」

「「えええええ!!」」

「それじゃあ誰も入りませんよ!! もし、アクアがやると隠しても場所が場所なので誰も行きたがりませんよ。変な勧誘だって」

「めぐみんの意見に私も賛成だ。そうだ、ギルドを使うのはどうだろうか。あそこならば、飲み物や食べ物の準備もできるだろうし」

「でも、借りられないだろ?」

「そこは私が何とかしておく。アクアが中止や失敗して拗ねるのが一番面倒だと気付いたのだ」

「確かにダクネスの言う通りですね。私は何をすればいいですか?」

「二人とも…!!」


 そこから、俺たちは激動の日々を送った。街の人には新進気鋭のとてもかわいい歌って踊れる人が来るらしい。と噂を広めた。俺たちがチケットを売ると怪しまれるのでバニルが手数料を取ることに引き受けてくれた。ついでにグッズ制作も頼む。日本にいた時に色々見たアイドルグッズのアイデアをバニルに売る。

 噂は予想以上に広まり、本番当日にはギルドが立ち席になるほどの観客が集まってくれていた。


「カズマさん。やっぱり私って天才ね。こんな衣装も作れてここまで私の名前で集まってくれるファンたちがいる。あとはここに集まってくれた人たちを金づるにするだけねっ!!」

「おいおい。そういうこと言ってると失敗するぞ。とりあえず俺たちがやれることはやった。後はちゃんと成功させてくれよ?」

「あったりまえじゃないの!! 私をなんだと思っているの? 私は…」

「宴会芸の神様だろ? 場を盛り上げるにはピッタリじゃないか!!」

「宴会芸じゃなくて水の女神だから!! 美しく麗しいところを見てなさい!!」

「はいはい」


 会場が暗転する。美少女…。を見たいと集まった観客の熱気は最高潮に。これから始まるショーの期待の高さがうかがえる…。これはまさか成功する?!








 そんなことはなかった。最初こそはうまくいっていた。一曲目は照明を眩しくて見えないくらいアクアに当てたのでシルエットだけだったので盛り上がった。しかし、二曲目。少しずつ声と素振りから疑われていた。乗り切れるか不安になりだす。

 そして、次のフリートークの時。喋り方、姿がしっかりと見え大炎上。客は暴動を起こす勢いで酒や料理を投げつけ、それに起こったアクアが逆切れ。もうギルド内はハチャメチャ。チケットの払戻、ギルドの修復、清掃にお金が消え、貧しい生活が当分続くのであった。。

 

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この二次創作にご加護を! 山川ぼっか @ke0122

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