夜の舞

ダリアはそっと立ち上がり、リアマが連れてきた二人の星を部屋に入れる。


「わらわの可愛い星よ。今宵は一緒に同行を」


そっと二人のほほに手を触れて優しく微笑む。

その微笑みの裏にシュバリエが同行せねばならない状況を察知する。


「モルガナイト・ロードナイトはその石のナイトの元に誇り高き騎士の忠誠を」


二人で声を合わせダリアの前に跪く。

リアマへの悪態など感じられないような

ずしっとした重みのある圧を感じさせる。


「今回の道中で何があってもわらわの命令までは攻撃してはならぬぞ、よいか」


優しく語り掛けるダリアにモルガとロードはピクリと視線を合わす。


「姫に何かあってはいけません。我々はそのためにいます。」

「それに私たちはシュバリエです。姫の身に何かあればこの身は砕かれてしまいます」


そういってモルガとロードは大切そうに頭の装飾を触る。


「私たちの体は1500年を耐えることのできる宝玉ですもの。」

「宝玉だけでは動けない、姫様の力を頂いたから動ける。だから姫様を助けなくては」


二人はしっかりと手を握り合いダリアを見据える。


「おや、リアムだってわらわの命には背かないといったのに。わらわの星は落ちたものよ」


そういっていたずらに笑うダリアを前に二人も顔を見合わせふくれっ面になる。


「しかし、、、姫様の魂は我々が守らなければ…」


もごもごと伝えつつも二人は観念したかのようにダリアを見つけてため息をつく。


「わかりました。しかし、あなたの身に何か起きれば騎士としての対応は致します」


ダリアもわかったとうなずくと、美しい着物を翻し、部屋を出る。

外には20人ほどのおつきの狐たちがすでに待っており

大きな傘を向けている。


ゆったりと塔の外へ行き、シャンという鈴の音をはじめに歩き始める。


街中から、一目見ようと人があつまり美しいダリアを見ては

ほうっとため息をつく。


蝶たちも、自分の番といわぬばかりに策の前に押し寄せる。


街は活気づき、まるで祭りのように盛り上がる。

その様子を全身で感じながら進むダリアは、

守らなければと一歩一歩かみしめて進む。


「姫様!!あぁ姫様!」

「なんてきれいなんだ…そりゃこの国が魔の街なんて言われるのもわかるな」


街の中にいた男の魔の街、というワードに少しひっかかった。

魔力が高い種族が多いが魔の街というワードには何か裏がありそうだと考えていたその時に

ドンっといった衝撃音とキャアという叫び声でハッと意識を戻す。


先頭を歩いていたおつきの狐が血を流し倒れている。

ほかの狐たちが救護をしたり、建物の中へ人々を戻す指示を出している。


一瞬で人払いをした狐たちも、シュバリエから下がれを言われ

一斉に建物に隠れる。


血の跡をじっと見つめるダリアに、リアマは静かに言う。


「命令を」


リアマとモルガたちはダリアをかばうように立ち、

じっと前を見つめる。


「命令を」


再度リアマが伝えるも、ダリアは一向に口を開かずに前を見る。

いつ来るかわからない相手の手法に息をのむ星たちに

ダリアがそっという。


「二人は建物に隠れている人々を塔に避難させて」


二人はダリアの元を離れる命令に

えっと顔を見合わせるも、ダリアの横顔を見て


「すぐに戻ります」


と告げ、離れる。


「ダリア、相手は何人かわからないぞ」

「あぁ、一人だ。わらわにこの距離、見えないものはない。

だかそのあとに控えているものの数は見えぬ。」


リアマの肩にそっと手をかけるとリアマは狼の姿に戻った。


「リアマ、殺すでない。蹴散らすだけだ」


ダリアが静かに言うと、リアマは走って森の中に進んだ。


「賢いですね。良い人払いの方法だ。」


森の泉の中からブルースターが出てきた。


「そち、何の用じゃ。同盟は組まぬぞ」


ブルースターの顔を見るころともなく、

淡々と伝えるダリア。


その瞬間泉の水が襲うようにダリアを包み込む。


「同盟なんて何の役にも立たないだろう。そんなことを誰が望むというんだい?

紅玉の君ダリア・レッドベリル」


ダリアは一言も会話をせずにただ前を見ている。


「僕はこの国が欲しい。水と炎があればこの世界を収められるんだ。

水だけでは足りない。火だけでは脆く弱い。


君はこの国に妖を集めることで

人から話すことで彼らを守ってる。

数千年もの間を、ここで!!


なぁどうだい…取引をしよう。

僕にこの国をくれたら憎い人間はすべて滅ぼしてあげるよ…

獣人や妖人だけの世界なら、わざわざこの国に執着しなくていいもんねぇ?」


ひたすらにしゃべり続けるブルースターに何も返答をせず、水の中に包まれている状態の中、

一瞬だけ口が開き、水の中に泡ができる。


その瞬間、リアマが飛び出しブルースターの喉にかみつく。

同時にブルースターは水へ変わり、ダリアを包む水もはじけ飛んだ。


「悪い犬だな…また答えは聞きに行くよ」


そういって、水はすべて泉の中に戻っていった。

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明星 こけもも @koke_momo

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