第5話「また会えるさ」

 メルを乗せたマシンはある程度浮上すると、一瞬でその場から姿を消した。

 もう彼女の姿はないっていうのに、私は先ほどまで彼女がいた空中をずっと眺めていた。


「あ~あ、行っちゃったなぁ……悲しくならないように送り出したつもりだったんだけど、やっぱりいなくなると悲しくなるもんだね」

「それは俺らも同じだよ。料理を間違えて一人分多く作っちまいそうだ」


 カイはああ言ってるけれど、声の震えは抑えきれてない。これはキャンプに戻ったら泣き声でうるさくなりそうだ。


「……また、会いたいな」


 私と同じように空をぼんやりと眺めていたレナードが小さく消え入りそうな声で呟いた。

 レナードもメルに対しては珍しく心を許していたから、お別れは寂しいだろう。

 ……また会いたい……か。


「……ふふっ」


 私は思わず笑みをこぼしていた。


「メア、どうしたんだ?」


 突然笑い出した私を心配するように二人が見つめてくる。

 私は後ろ髪を結んでいるリボンを外しながら、口を開いた。


「何でもないよ。ただ……」


 前髪に編みこみを作るとそこをリボンで結んだ。


「また会えるはずだよ、きっとね」


 そう言って私は無邪気な笑みを浮かべたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タイムマシンで私は夢を見る 冴木シロ @SiroKuro0625

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ