7本目【難攻不落】取り壊せない廃病院

7-1 前編【突入!大雨の遺体安置所!!】




「はい……どうも。いただきます。『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ三号です。ラフな格好で失礼します。帽子をなくしてしまいました。えっと……今日はですね、まぁ、見てのとおり三号一人なんです。困りましたね。えっ? なんですか?」


『※ 状況説明して ※』


「ハイハイ。ここはですね、何の変哲もない単身者向けワンルームです。綺麗に掃除してるでしょ? 実は目の前に二号さんがいるんですが、今は動画に出られるような外見ではないので、手書きのカンペだけ出してもらってます」


『※ 表現に悪意を感じるんだけど!? ※』


「事実を述べたまで、デス。かわいそうに、呪いの煙を浴びて猫耳が生えたなんて」


『※ 誰が信じるの!? ※』


「手書きのカンペだけでもうるさいなんて、大したものですね」


『※ ひどい!? 進行してよ! ※』


「本当は『取り壊せない廃病院』の前編をアップロードする予定だったんですが、色々、トラブルというかハプニングというか不測の事態が多くて……まず、最初にオープニングを別撮りしているんです。えっ?」


『※ 尺が足りないからなにか喋って ※』


「なんですか? その雑な指示。無能なディレクターじゃあるまいし」


『※ 質問コーナー、はじまるよ〜♪ ※』


「もうずいぶん前の質問ですけど、『ゴーストイーター』っていうコンビ名の由来についてお話しましょう。ほとんど、コメント欄で指摘された通りなんですけど。アリジゴクがモチーフになってます」


『※ アリジゴクは成長するとウスバカゲロウになるし、アントライオンとも呼ばれるからね! だから僕はライオンマスクで、一号は蟻マスクなんだよ! ※』


「事故物件って、アリジゴクみたいじゃないですか」


『※ どの辺りが? ※』


「一カ所に留まって、獲物がかかるのをじっと待つところです。足を踏み入れたが最後、這い上がろうとする住人に砂を投げつけて脱出を妨害するかの如く……」


『※ ひえっ……! ※』


「そんな事故物件に潜む悪い幽霊たちを、逆に喰ってやろう! っていうのが『ゴーストイーター』のコンセプトです。一号さんが決めました」


『※ たべちゃうぞ〜! みたいな? ※』


「……なんですか? それ」


『※ アッ世代が違ったね…… ※』


「そろそろ尺、できました?」


『※ オッケーです!! じゃあ、行きましょう! ※』


「はーい。じゃ、最初に断っておきますが……今回の動画、諸々の事情により画像の乱れや中断があります。いつものテロップも、ロクに出ません」


『※ でも、それも廃病院の臨場感として楽しんでもらえたらうれしいな★ ※』


「浅葱さん、三十前の男が★はやめましょう……。★は……」


『※ 真面目な口調で諭さないで!? ※』


「まずは前編、ドン!! アナタの家、ゴーストイーターが過ごした事故物件……な、わけないですね、今回は。病院だし」


『※ アナタが通う病院かもね? ってことで!!※』





***





「ハイどうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号です!」


「三号です」


「いやー!!! 外はすごい雨だね!!」


「車内から出たくないですね。バケツの水をひっくり返したようです」


「でも深夜かつ土砂降りなんて悪条件が揃っているなら、今夜は僕ら以外いないでしょう!!」


「いつもみたいに物件扱いじゃないので、招かれざるお客さんがいるかもしれないってことですね」


「事前のロケハンで、とりあえずホームをレスしている方々は居ない様子だったよ!」


「心霊スポットって、そーゆー人が現れやすいです」


「人がいない場所ってことは、人に会いたくない人が集まりやすい場所ってことだからねっ!」


「結局、生きている人間のほうが怖いっていう、耳にタコができるような結論になるんですか?」


「んん〜〜、それじゃあ面白くないでしょ!? 盛り上げていきましょう!」


「……なんか、今日は無駄にテンション高いですね」


「そうかなっ?」


「車の中で待っていても良いんですよ?」


「ヤダ!! もう、キミからの電話に出たくないんだよっ!!! 絶対また、事故物件から本番中に電話かけてくる気だ!!」


「それは二号さん次第です」


「今まではこっそり部屋を抜け出して、街から電話をしているのかな? って誤魔化せたけど……こんな、アンテナも立ってないような場所でまた三号くんの背後から賑やかな声が聞こえた日にはもう……!」


「ワクワクで眠れませんね」


「ドキドキだよっ!?」


「じゃあ出発で〜す。遅れをとらないで下さいね」


「了解! 自分の分の寝袋はバッチリ!!」


「では、三号の寝袋も持って下さい」


「うん!」


「あと傘も持って下さい」


「こうかな?」


「もっと地面に対して水平に!」


「はいっ!?」


「よろしい。でも、あんまり傘も意味ないですね。ちょっと出ただけでずぶ濡れです」


「カメラと懐中電灯は、三号くんに持ってもらっても大丈夫?」


「もう7本目ですからね。慣れました。大丈夫です。ここはどんな物件なんですか?」


「歩きながら説明しましょう! 半分外れた門から正面受付に入って、カルテが床に散乱していますね。どれも日に焼けて、全く読めません。……ここはですね、とある医療ミスがきっかけで経営不振に陥り、その後再建できずに潰れてしまった病院なんです!」


「立地が悪いですね。こんな山の中なんて。天井も所々崩れているので、室内ですがまだ傘はさしておいて下さい」


「了解! 療養目的だったら、自然が多い方が落ち着くんだよ。ミスが起きる前は、周辺の人間は全員この病院のお世話になるほど人気ある病院だったんだ」


「でも、やはりミスすると駄目なんですね」


「薄情だって思わないでね。誰だって、良い医者にかかりた……あ、イタっ!?!?」


「どうしたんですか?」


「床になにか散らばって……」


「カルテですかね」


「懐中電灯の光ちょうだい。えーっと……ぅわあ!?」


「ただのレントゲン写真じゃないですか」


「いや、でも……床一面に頭蓋骨の画像がバラ撒かれているのって怖くない??」


「別に……?」


「そ、そうか……」


「この廃病院、取り壊しの話が出ているんですよね」


「うん。だけど、取り壊そうとすると決まって作業員が体調不良になったり機械が故障したりするんだって」


「……それ、単に解体業者と不動産業との金銭トラブルじゃないですか? そんな安い賃金で引き受けてたまるかって」


「まぁまぁ。たとえそれが真実でも、みんなが『心霊現象』だと信じるならそうなるんだよ。それでね、原因とされてるのが死体安置所なんじゃないかっていう……」


「またベタな話ですね」


「お約束も大事だよっ!」


「……で? そのお約束にビビりまくってるのはどこの誰ですか?」


「うう……僕です、ごめんなさい……!!」


「三号のパーカーを握りしめるの、やめて下さい」


「うう……」


「ホラ、そろそろ着きます、よ……」


「えっ? 何で止まったの?」


「あの扉、今、開きましたよね」


「あ、あの扉……?」


「遺体安置所の扉です」





ギイィィイイ……!!!





「開きます」


「に、逃げた方がいいんじゃないの……?」


「逃げる? なぜですか?」


「手! 扉の向こうから手が見えるよ!!!!」


「だって三号たちは、依頼を受けたアルバイトですよ? 職務を全うしましょう」


「あーっ! やっぱり車内で待ってたらよかった!!」


「今回に限った話だと、誰もいない山道で車を止めて一晩過ごすのも結構辛くないですか?」


「どっちにしても悪夢!!!」


「覚悟、決めてください」




『廃病院の遺体安置所から伸びる手は何者なのか?


むしろ人であってほしい!!!


次回に続く!


ごちそうさまでしたっ!!



ばいば〜い!』






<コメント:新着順5件表示>


アカウント名:4ったん

オープニングの二号ww

手しか出てないのに無駄に存在感あって笑ったww

手書きのフリップとか芸人かよww

そして動画の最後の手もかなりリアルなんだけど。

今回は最初も最後も手にもっていかれたわwww


アカウント名:コーラス

一回だけ、アカウント名バグったことある!!

一番最初にコメントした時だった……気がするw


アカウント名:電報しません

私も!

あと、雨のせい?なのか光が反射してヘンなのがいっぱい見える!

雨のせいだよね?????


アカウント名:サニィ

バグったことのある人みんな連絡して。

俺もバグったわ。

まとめて運営に報告しようぜ。

廃病院って昼間に行っても怖いのに、夜に行くとかどうかしてるぜー。

でも見ちゃうんだよなぁ。


アカウント名:R san

Hello^^

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る