1-3 解決編 【謎の言葉・院居士を解く!!】




「ハイどうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』です! 僕はウスバカゲロウ二号!」


「……三号です」


「今回はですね、前回の物件について説明します!」


「前回、三号が見つけた黒い板は位牌みたいでした」


「位牌みたいって……キミの家には仏壇がないのかね」


「ありますけど。いつも綺麗に磨いていますし、あんなの汚れた位牌は見たことがなかったので」


「……そっか。そうだよね、ごめん」


「いいえ、気にしないでください」


「ハイ! それで、あのお位牌なんですけど、今はこの場にありません!」


「しかるべきところに納めました」


「それが何処かって言うと……まあ、もと不動産業から言わせてもらえばですね、日本なんて契約社会ですから、持ち主不明の土地や建物なんてよっぽどのことがないと起こりえないわけですよ。なので、非常に公的な手段をとって」


「電話で問い合わせしまくる、とかですね」


「三号くん! いらんこと言わない!! それは舞台裏の話!! ……あの建物をたどると、持ち主が分かりました。正確に言うと、お位牌のご家族かな?」


「帰りたがっていたから、帰してあげたかったんですけど」


「残念ながら、時間が経ちすぎていたせいもあってご存命ではなかったんだよね〜」


「ハイ。それに、記憶が曖昧なところがあったみたいで、金銭的な問題からあの部屋を退去する時に故人が好きだったお菓子の箱に位牌をいれて、それから何処にやったかわからなくなった……とのことでした」


「なので、今は縁のあるお寺の方で供養してもらっています!」


「安心してください」


「あのお位牌見て、三号くんはどう思った?」


「どう……って?」


「居士って書いてたでしょ?」


「こじ?」


「そう。宗派にもよるだろうけど、人は死んだらあの世での名前として戒名って言うのをつけてもらうんだよ」


「ああ、あの札束で殴るタイプのお名前ですね」


「三号くーーーーーーん!!!!! 謝って!! 今!! 今すぐに!!」


「え? なんでですか?」



「あのね、キミはそう思うのかもしれないけれど、故人にお金という物質を支払うことで気持ちの整理をつけようとする人もいるの! その人たちにとって、戒名に払うお金っていうのはお坊さんの利益とかそんなんじゃなくて、故人への愛情なの! ラヴ!! わかる!? 世の中には自分と違う価値観があるってことを理解しろとは言わないけど、せめて存在しているんだってことを認めて欲しい!!」



「……わか、り、にくいですけど。亡くなった人への愛情っていう感情は分かります。……えっと、視聴者のみなさん、不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」


「うん、素直でよろしい。キミはちょっと偏ってるからなぁ……」


「おかげさまで」


「……なんか、皮肉に聞こえるけどまぁいいや。あとね、お位牌を磨くと『院』って文字も読みとれたんですよ」


「いん?」


「ホニャララ院、ナニナニ居士って戒名の付け方を院居士って言ってね、詳しい説明は省くけど言ってしまうと……かなり高価な戒名になるね」


「いくらくらいするんですか?」」


「僕に言わせないで!! 気になる人は自分で調べてみてね。……で、ね。もちろんお金だけが全てというわけではないけれど、ひとつのバロメーターだと僕は思うんです。もちろん、あまりお金をかけないからといって愛情が薄いとか言うつもりはないですよ!? そこはご理解いただきたい。でも色々プランがある中で最高位のものを選ぶってことは、そこには確かに並々ならぬ想いがあったんじゃないかな?」


「あんな場所に置き去りにされてもですか?」


「置き去りにしたくて置き去りにしたわけじゃないでしょ、たぶん」


「まあ、故人が好きだったというお菓子の箱を使っていたあたり、ちょっと心遣いを感じましたけど」


「そんなわけで、今回の依頼は以上です! そうだ、三号くん。どうして位牌ってことを知らなかったのにアレが原因だって分かったの?」


「アレから声が聞こえたんですよ」


「声?」


「カメラにおさめることはできませんでしたけど……












って」


「………」


「新しい入居者が来るたびに帰してくれ帰してくれって騒ぐもんだから、そりゃあ普通の人は1ヶ月も保ちませんって」


「………」


「でもそんなに悪い感じではなかったし、三号とコミュニケートして帰れそうだとわかってからうるさかったので怒鳴っただけです」


「じゃあ、あのマンションさ、六階には今だれも住んでないんだって僕が言っても驚かない?」


「そうですね。それなら、あのマンションの人間用の防音設備はガバガバじゃないかもしれないなって思うだけです。心霊用の防音はガバガバでしたけど」


「心霊用の防音とか、どうやってするんだよ……」


「二号さん? ちょっと顔色悪いですよ?」


「だって! 三号くんがあんまりにも台本にないこと言うから!!!」


「撮影中のアクシデントはオイシイって言ったじゃないですか」


「それはそうだけど……」


「二号さんにも少なからず霊感あるんですから、いいじゃないですか。本当に霊感ない人ならそうやって顔色変えたりしませんって」


「ハイ!! ハイハイ!! じゃあこの話題はこの辺で!! 三号くんの霊感? に関しても、信じるか信じるかは視聴者さん次第です!!! あと少し、尺が余っているので質問コーナーにしましょうか」


「やっぱり、三号の素顔が気になる視聴者さんが多いみたいですね」


「三号くんの素顔はですね、当分公開しません! なぜなら、僕も知らないからです!!」


「そういうことです」


「まあ、チャンネル登録者数が100万人突破したら、その時は生放送で公開しようかな」


「止めて下さい。最初の約束と違います」


「大丈夫大丈夫、今のペースで行けば100万人突破する頃には三号くんも立派な中年だって。顔出しなんてどうでも良くなってるって」


「それなら、二号さんが顔出したらいいじゃないですか」


「それはやめて! 無理! 僕には三十年近く生きてきたが故のこの世のしがらみというものがだね……」


「しがらみ? たとえば?」


「……僕、新卒時代に顔出し本名で自社ホームページのブログを毎週書かされていたんだよ」


「今でも見れますか?」


「たぶんね。『○○不動産★新人が語るおまかせ物件散歩』っていう……自意識と自意識がぶつかり合って化学反応起こしているようなハイパー黒歴史が今でもネット上に漂っているのかと思うとゾッとするよ……」


「よし、検索しよう」


「無慈悲!?」


「三号は浅葱さんが働いていた○○不動産を知ってますから。○○って伏せ字部分も……」


「ハイハーイ!! もう! 浅葱って僕の本名出さないでって言ってるでしょ!!! せめてカメラの回ってないところでやって! 視聴者さん置いてけぼりになるから!!」


「あ……すいません」


「三号くんはまだ十代だからね。時々周りが見えなくなるのでご了承ください」


「年は関係ないでしょ」


「そんなふうに思っちゃう間は、やっぱり年齢相応なんだよ。さて!! 次回予告して終わりましょう!」


「……次回はですね、『住むと事故にあう部屋』です」


「物件でも事故があったし、住んでいると交通事故などに遭遇する! 『二重事故物件』とでも言うべき場所ですね!」


「二号さんって、ほんとネーミングセンスないですね」


「いいじゃん! サムネイルもタイトルもサブタイトルもみんな僕が考えてるんだから! 文句があるなら三号くんが考えてよ!」


「いやです」


「ムムム……!!」


「こんな調子ですけど、二号さんとは仲良しなのでご心配なく」


「そうだね! 僕も三号くんのこと、頼りにしてるよっ!」


「うざ」


「なんでー!?!? ……はい! じゃあ今日はこの辺りで! もし面白いなって思っていただけましたら、是非ともチャンネル登録と高評価お願いします!! では、ごちそうさまでしたっ!」


「ごちそうさまです」


「ばいば〜い」






<コメント:新着順5件表示>


アカウント名:祭のなか

意外とちゃんとした理由で驚いた。

俺の家にも仏壇あるけど、院も居士もついてるわ。

知らんかった。


アカウント名:るぅ★

旧ゴーストイーターとは違った感じだけど、新しいゴーストイーターもいい感じ!

チャンネル登録しました!

クラスの友達にもすすめてみます★

100万人登録達成して三号くんの素顔みたいw


アカウント名:pp dr

二号も三号の素顔分からんとかあり得ないでしょ。

なんでコンビやってんの?


アカウント名:タマエ

やっぱり背景が白すぎて変です。

どうして前みたいに会議室借りないんですか?

はっきり言って目が痛いです。


アカウント名:いよかんかん

次回もおもしろそう!

待ってます!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る