Espionage3 早業

「よいしょ」


 まず一人目

 首に手抜きの手刀


 二人目

 顎に軽いキック


 三人目

 鳩尾に優しい一撃


 四人目

 頬にヌルい掌底


 五人目

 頭にやんわり踵落とし


 六人目

 顔にご褒美プレス


 終わったらさっさと通気口から中に入る。


 はい、施設へ潜入。


 呆気ない。


『お見事です』

「弱すぎて話にならん」

『それもそうですね』

「暇つぶしにもならんわ」

『私は楽しかったですよ』

「そうかい」

『さっきの部分、ディスクに焼きますね』

「勝手にしろ」


 コイツは面白いと思った映像があるとディスクに焼いたり、モニターに流したりする奴だ。変態だろ?


 まぁそんな事はどうでもいい。まずは中の観察だ。


「ふーむ、目立つのはエレベーターに倉庫、よくわからんゲートか」


 そこそこ歩哨はいるが隠れて動けば問題ない。さっきはどうしようもなかったが中は幾らでもなんとかなる。


『映像から歩哨の装備、視界を解析しました。転送します』

「早っ。私以上に化物だな」

『足でぶら下がりながら観察する貴女に言われたくないです。吸血鬼か何かですか』

「仕方ないだろ、ここしか死角ないんだから」


 監視カメラがこの上なく煩わしい。ぶっ壊してやりたい。


「監視カメラどうにかならんか、面倒くさすぎるぞ」

『貴女は武闘派ですからね。潜入には向いていないからでしょう』

「……喧嘩売ってんのか?」

『いえ、貴女のそういう所、堪りません』

「……変態め」

『監視カメラは今なら無力化できますよ。どこかの監視カメラにバイザーでロックオンして下さい』

「やったぞ」

『バイザーで確認して下さい』


 言われた通り確認してみると監視カメラには同じ様な映像がループしている。しかも巧妙に細工されていて肉眼ではまるでわからなない。やっぱりコイツはおかしい。


『ね? これで暴れやすくなりましたよ』

「暴れねぇよ。面倒くさい」

『あら、勿体ない』

「人間相手に暴れる価値も無いわ」

『ごもっとも』


 とりあえずエレベーターに行こう、どこから行っても変わらん。









 ――ビールがあるなら嬉しいが。

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