31cmの贈り物

牧野 麻也

第1話 X年後①

 俺の手帳の中には、宝物が入っている。


 真っ白なドレスに身を包んだ彼女と、そんな彼女を抱き上げて、同じく真っ白なタキシードを着込んだ俺。

 二人とも、顔には満面の笑みを浮かべている。

 透明感のある晴れ渡った空の下、少し寒々しい木々と、チラホラと咲く薔薇に囲まれた場所で撮影された写真。


 俺の大切な大切な宝物。


 部屋で一人、俺はその写真を覗き込んでいた。

 着慣れない真っ黒なスーツが堅苦しい。

 でも、これを着なければ式には出れない。


 今日は、彼女を送り出す日。


 彼女──俺の宝物を。

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