(2-5)怪物とは・・・

「勝利さん、どうしてあの逃げてる人たちがどうして敵だってわかったんですか?」


押し寄せた魔物たちを狩り終えた帰り道、影光が皆を代表して疑問を問うた。


「ああ、それな。疑問が二つあったんだ。地上、商業区で俺に助けを求めてきた女の子、血濡れだったんだが、そこまでの出血をしたのに、対して傷が無かった。服は裂けていたがその下は多少切り裂かれた程度。まずそれが一つ疑問だった。二つ目の疑問は、そもそもどうしてダンジョンの検問で引っ掛からなかったか。だが、そこでその二つの疑問が解決する。要するに、外に出てからついた血だったんだよ、それも嗅覚までごまかす為に、人を殺して身体に塗るっていう気持ち悪いことをしてまでの細工。俺をはめるための準備だったわけさ。本当なら俺一人を囲んで殺すのが目的。何度もあいつらの邪魔してきたからな、どういうわけか行く先々で衝突するもんだから向こうも業を煮やしたんだろ。そういうわけで、あの二人も敵だって疑ってかかれたわけだ。あとは背中を見せたときにどういう反応をするか伺うだけでよかった。とまぁ、長くなったがこんなもんだ。」


「なるほど、それで遅れたんですね。その女が殺したであろう死体を探してたから。」


「うむ、さすがは影光君。察しがいいな。ご丁寧に血の跡までつけてくれたおかげで死体が無造作に捨ててある裏路地まですぐにたどり着いたよ。俺をだます一瞬だけバレなきゃいいんだ、丁寧に隠す必要もなかったんだろう。すぐに管理局に電話して身柄を拘束してもらうよう頼んだよ。これで幾らか情報が得られるはずだ。できれば管理局に潜んでる裏切り者についてわかればいいんだが。ともかく俺達は安全にここから帰還することだけ考えればいい。ほら、さっさと行くぞ。」


ふたを開けてみればお粗末な計画。だが、間違いなく俺は殺されていただろう。敵側の誤算は俺に仲間がいたこと。こいつらは俺の自宅のダンジョンで徹底的に鍛えたせいで外に情報が広まらなかった。それに最近では俺抜きで他のダンジョンの深層に潜っているが、それも俺が探索し終え情報が出揃ってる場所ばかり。要するに安全に経験を積ませるための訓練だ。だからあまり他の攻略者と遭遇する可能性も低く、結果として名が知れ渡ることもなかった。俺自体が存在を隠したいからという理由で外では極力一緒にいなかったが、今回はそれが良い方向に作用したな。


ともかく、これでやつらの動向はつかめた。あとは自衛隊と協力して殲滅すればいいだけ。俺が安心してダンジョン攻略に乗り出すためには仲間たちや家族の心配をしなくていい状況を作らなきゃいけない。だからこそ、紅花月は放置できないのだ。確実に今回で仕留めてやる。そう決意し、俺は準備をするためにダンジョンから脱出する帰路を駆け抜けた。


◇◆◇◆


「はぁ?」


「そうだな、俺もそうなった。顎が外れるかと思ったぜ。」


ダンジョンから帰還した帰り、俺は真っ先にダンジョン管理局に向かった。そして件の女の尋問結果を聞きにきたわけなのだが。自体は余程深刻なようだ。


「ダンジョン同士が、繋がっていた?そんなふざけた話、聞いたことないぞ。」


「俺達すら聞いたことが無いのだから、あいつらはいつも逃げおおせいたんだ。誰も思いつかないだろう。ダンジョンにぶち当たる位置の地下鉄や地下街があるのにどれも無傷なんだ。ダンジョンは入り口だけがこちらの世界に露出した異空間と考えるのが普通。ダンジョン同士が接している部分があるなんて誰が考え付く?そんでもって掘削の心得を得ていると壁を破壊して隣のダンジョンに移れるなんてことに気付ける軌跡なんてそうそうない。俺達は運にも見放されていたようだな。こいつは厄介だ。これであいつらの足取りがまた消えちまった。今頃は複数のグループに分かれて地上に出れるやつらはそうそうに出ちまってるだろうよ。・・・勝利、気を付けろ。ダンジョンの外も、これからは危険地帯だ。要人やお前の家族の方には護衛を派遣する。そうそうに作戦を立てて奴らを殲滅しないと、近いうち何かでかいことを起こしかねん。」


「はい、俺も知り合いにかけあって総出で殲滅作戦に当たりたいと思います。それじゃ、早速俺は動き出しますね。賢太郎さんも気を付けて。」


「ああ、よろしく頼むよ。こちらの心配はいい。なにせ、裏切り者が判明したからな。女が捕まった途端、血相変えて逃げ出しやがった。すぐに捕まえて尋問した一瞬でげろったよ。まったく、どうどうと敵陣に潜入しているからどんな根性してんだと思ってたら、情けない話だな、たくっ。」


「これで、情報戦はイーブンですね。互いの状況が一切わからないんですから。あとはここからどれだけ情報を集められるかが勝負。それじゃ、俺のできることを精一杯やってきますよ。失礼します。」


一礼して会議室をでる。小さな一歩だが確実に前進した。奴らの消える謎もからくりは分かった。こうなりゃ後は全力で奴らの首を絞めるだけ。昨日までとは打って変わって単純で俺好み。腕が鳴るねぇ。


ニヤついた顔で廊下を歩き、水川さんに薄気味がられるという珍事件を終えてから俺はまず好子さんのところへ向かおうと夕日を浴びて色づいた商業区の大通りを歩き出した。


◇◆◇◆


だんだんと人の波が引いていく大通りに面した好子さんの店に入店する。


「お客様、そろそろ閉店の、って勝利さんじゃないですか。どうぞ、好子さんは上に居ますよ。」


来店する客を止める係である女性の店員が俺の顔をみてすぐに案内を始める。VIPかのような待遇に少々恥ずかしいと思う部分もあるが、幸いにも店内にいる客はわずかで、こちらに注目が集まることもなかった。そそくさと店内を横断し、カウンターの向こうにある階段を上る。


廊下の突き当りにある部屋にノックをし、なかからの返事を待つが、おかしなことにいくらまっても返事が返ってこない。訝しく思い、扉に耳をあて中の気配を探ろうとしたその瞬間。勢いよく扉が開き、俺は慌ててたたらを踏む。何事かと思い、そっと血殺憤鬼に手をかけるが、正面ににやついた笑みを浮かべる好子さんが視界に入り、俺は苦笑いを浮かべることとなった。


「勝利君が外からこちらに歩いてくるのが見えて、これは悪戯をできると思ったんだけど、大成功だったみたいね!ふふん、いつも迷惑かけてる代償だと思って許してね?」


「はいはい、わかりました。まったく好子さんは鍛冶に関するときと普段の行動が違いすぎて対処に困る。とりあえず入っても?」


「どうぞどうぞ。こんな時間にくるってことは何か話があるんだよね?もう閉店でお茶とか入れられないけど、とりあえずソファーに座ってよ。」


好子さんが扉の前から体をずらし中に入るための道を空ける。室内が見通せるようになり、そこで先客がいることがわかった。


「あ、久しぶりじゃん。相変わらずガタイがいいねぇ、お兄さんうらやましいよ。」


「神楽さんじゃないですか!最近見かけないと思ってたら、帰ってきてたんですね。」


「ようやっと必要な材料が揃ってね。好子に鍛冶を頼もうとついさっきこちらに来たばかりなんだよ。勝利に会えるとは嬉しいハプニングだね。」


「いやー、神楽さんがいてよかったですよ。後でどうにかして連絡しようと思ってたところですから。」


仙道神楽せんどうかぐらさん。俺と同じ冒険者組で、俺と渡り合える実力がある数少ない実力者。いつでもどこでも着流しを着ているという変わり者だが、その冴えわたる剣技は俺の暴力的な戦い方とは違い、流麗で隙が無い。十回戦えば半分は負けてしまうかもしれない剣豪にここで出会えるとは幸運だ。


早速、俺は今日あったこと、そして紅花月について話をし、協力を呼び掛けた。

結果は上々、双方知り合いに極秘に呼びかけを行い、強者を募ってくれると約束してくれた。


そのあとは神楽さんとダンジョンについての情報交換をしたあと、好子さんを交えてどのような刀を打つかしばらく話した後、日がすっかり落ちてしまったのであえなくお開きとなってしまった。


帰り道、商業区のゲートまで向かう道すがら、神楽さんと連絡先を交換し、それから別々の道へと進んでいく。


タクシーに乗り、ようやっと帰宅する。その足で俺は野営の準備をし、ダンジョンに潜るために台所で携帯食料を冷蔵庫から出した。しばらく、強敵との戦闘が無かったからな。腕が鈍ってしまう前に、少しばかり本気を出さねばならないだろう。


母さんと父さんにちょっといってくると声をかけ、すぐに裏庭へと直行する。


「勝利、あまり無理するなよ。健次郎から聞いたが、その、お前が関わらなくてもいいことだと思うぞ。父さんたちの心配はしなくていい。この通り、俺も動けるようになったわけだし、母さんは父さんが守る。だから―――」


「違うんだよ父さん。俺は、負けるのが嫌いなんだ。それ以上に手加減されることが嫌いで、最近はそれよりもさらに、集団で寄ってたかって弱いものを狙う、そういう虫唾が走ることが大嫌いなんだ。正直、あいつらのやってることを目撃してきた俺は、無性に腹立たしい。だから壊す。だから殺す。身勝手な息子で悪いと思ってる。だけどこれだけは譲れない。」


一拍置いて、心の内で渦巻く、怒りを解き放つ。


「くそみたいな気分を晴らす為に、俺はあいつらを、殲滅する。」


決意を胸に、一歩踏み出す。後ろで佇む父さんの口からは、何も発せられなかった。ただ息子を見送る親の顔が、そこにはあった。


「強くなったな。お前の将来が、道半ばで途切れないことを祈る。勝てよ勝利。」


風が吹いた。灯夜の声は、ダンジョンの奥へと消えた息子に届かなかった。だからと言って、父親の気持ちは変わらない。ただ息子の成長が喜ばしく、息子の将来が心配で、息子の無事を祈り、息子への信頼が最後にやってきた。大丈夫、俺の息子は必ず――――――


◇◆◇◆


舞う鮮血。


「はぁ、はぁ、ぁぁぁぁあああああ!!!」


飛び交う、怒号。


『――――――ッ!!』


固い何かを叩き割る音。空気を切り裂く音が交互に鳴り響く。


声にならない叫び。痛みが全身を駆け巡り、鬼人にまで至った武の化身が大地に身を沈める。


ここは、不知火邸ダンジョン、六階層。

この階層を、とある者は『化身の坩堝』そう、形容した。


小鬼が鬼に、鬼が鬼人に、そしてさらに先へと。


進化するに至った強者同士が示し合わせた様に互いの命を削りあう空間で、たった一人、ただ人間が舞い踊る。


侮るなかれ。彼こそ人の身でありながら怪物どもと対等に、あまつさえその命を狩り尽くさんと邁進する人の怪物。


宙を駆けるのは相棒たち。あらゆるものを砕き割る戦斧、すべてを断ち切る刀、致命の一撃のみを放つ短剣。三つの武器を巧みに使い、人間は怪物を狩る。


その眼はただ、己の糧を探すためにぎらついていた。


不知火邸ダンジョン六層、後半。

ダンジョン管理局の公式、非公式、両方の中で最も深く深淵へ潜っているという、今もなお更新され続ける記録が生まれているのがこのダンジョンである。そしてそのダンジョンに付けられたものと同じ名を持つ人間こそ、今怪物どもを蹂躙してる『怪物』にほかならない。


「ラスッ、トォォォオオオ!!!」


鬼気迫る咆哮、相対する鬼人の怪物の頭は疑問に満ち溢れていた。己が今まで戦っていた同類たちを地に沈めたことにも驚いた、だが疑問はそれだけではない。むしろ、全身に大小の傷を負いながら、常に増していく気迫が。否、傷を受け、また武器を振るう度に徐々に徐々に高まり、気づいた時には手遅れなほどに、力が増していることが、何よりも驚き、恐怖ですらあった。


今まで喰い続けてきた己が、小さき存在だったころに一度だけ味わった感情が蘇る。己が強くなろうと思ったきっかけ。あの時感じた恐怖が、再び体の内側で脇だし、溢れる。


「死゛ニダグ、無イ゛!!!」


己の手に握られた、己の分身を手に、生への執着を見せる鬼人。


鬼人は荒々しく生きるために武器を振るい、人の怪物は己の存在を昇華させるために武器を振るった。


思いの丈、その大きさは、鬼人の方に分があった。だがしかし、その内側には不純物がある。死への恐怖。拭えぬ敗北の記憶。それらが目の前の怪物に重なる。


力が過剰に入り、握る得物がわずかに軌道から外れる。わずかなタイムロス。常人であればその圧倒的膂力と目にも止まらぬ速さ、そしてなにより歪められた鬼の顔から出る気迫が精神汚染のように恐怖を植え付けさせ、反応することすらできずに凶刃に切り裂かれるであろう。


しかし、何度も繰り返すが相手は『怪物』。


思いの丈は負けていても、積み重ねがそれを凌駕する。

向上心が積み重なり経験となり、経験が積み重なり莫大な力となる。


鬼人の武器を正面から叩き割り、戦斧が肩口に食い込む。

そこで鬼人は自身の終わりを悟った。

何故なら、すでに刀を持つ手が動き出していたからだ。抗うすべもなく、吸い寄せられるように首筋へと軌道を辿る刀が自身の身体を通り過ぎた。視界がくるくると移り変わり、やがて地面から『怪物』を仰ぎ見る形でようやく止また変動。少ない意識の中で首を断たれたとはっきりと自覚する。


最後の最後で、生への執着を見せた鬼人は、己の生命を絶った人物の顔を脳裏に焼き付け、静かに息を引き取った。


◇◆◇◆


「ふうー疲れたぁ。」


約三十体の鬼人、蜘蛛人間、巨大パンドラットの混戦に自ら飛び込み、一体どれだけの間戦っていたんだと思うほどに長い時間戦闘に身を投じていた。


最初こそ、体があったまらずに苦戦を強いられたが、傷を受けるたび、また己の武器を振るって傷を与える度に高まる身体能力が後押しして最後らへんは余裕さえ出てきた。


だが流石に体力が心もとない。すでに『討伐者の行進スレイヤーズパレード』の効果は切れており、体も元の状態へと戻っていて、さすがにまた乱戦へと投入できるほどの状態ではない。よって次なる行動は、休息である。


ここ不知火邸ダンジョンでは、一層の洞窟、二層三層の平原、四層五層の森と環境が変化していく。そして二層四層は昼、三層五層は夜というように規則性がある。そしてここ六層だが、光が充満し、疑似的な昼が作り出されている。これまでの規則性から洩れないその光景に、始めてみたときは一瞬安堵の表情を浮かべたが、眼下に広がっている光景を見直したときに表情を険しくせざるを得なかったことは苦い思い出だ。


乾ききった大地。凹凸の変化が激しいその地形の至る所に洞窟らしき穴が空いていていた。そして盛り上がった丘が複数あり、その頂きで魔物たちが戦っていたのだ。どれもが進化を果たした怪物揃い。それらが己を高めるかのように闘争本能むき出しに争っていることに、ほんの少し気づかぬうちに怖気づいてしまっていた。


だが同時に俺の中の闘志に火が付いた。それからというもの、ここで戦いを繰り返し、今では多数を相手にしても引けを取らぬほどに強くなった。


近場の洞窟に身を隠し、しばしの休憩を挟む。


こうして戦いを挑み、力を付けていっても、未だに挑む気すら起きない存在がいることに歯噛みをする思いだ。


この乾ききった大地の中央に、唯一の水場と自然がある。

そしてそこに君臨する、階層主に、俺はいまだに勝つビジョンを描けないでいた。


ふと耳を澄ます。


無謀にもそいつに挑んだ愚かな怪物が、眠れる暴力の化身をまた起こしたようだ。


『グォォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』


階層中に響き渡る咆哮。かなり離れているというのに、足元の小石を震わせる物理的な威力を持った咆哮を放つ怪物を、いずれは倒さなければならないと思うと気が滅入る。遠目で見ただけで、そこに下へ続く階段があることがわかった。木々がそこの周辺だけ消え去り、小さな円形を造り、その中心に階段があったからだ。それを守るように階層主がいたので発見も容易だった。その時にみた階層主の姿が未だに俺の頭から離れない。


基本裸に近い魔物。鬼人でさえ、皮膚の延長である袴らしきものを身に着けているだけなのに対し、階層主は着流しと呼ぶべき服装をしていた。額に一本の反り立った角を生やし、浅黒い肌をした鬼人の中の鬼人。おそらく鬼人のその先、鬼神と呼ぶべきその存在は、1キロは離れているだろう、五層に繋がる下りの通路の出口に居た俺と確実に目線を合わせてきた。そのうえで、先ほども聞こえたような咆哮を放ってきたのだ。


その時瞬時に悟った。ああ、こいつにはまだ勝てない、と。


だからこそ俺は闘争に身を投じた。あいつを倒して己をさらに高めるために。

まだ足りない。圧倒的に足りない。そもそもあいつで終わりではないのだ。俺の戦いはまだその先までずっと続いている。通過点に躓くわけにはいかない。


「よしっ!休憩終了!次だ!!!」


己に発破をかけて、勢いよく洞窟を抜け出す。

最初こそ体をなまらせないために舞い戻った六層だったが、今はもうそんなこと忘れてがむしゃらに戦おう。鈍らせないということはつまり現状維持。どうせやるなら強くなる方を選ぼうじゃないか。


一晩寝てないからなんだってんだ。俺は今アドレナリン全開だぜ?余裕で三徹くらいぶっかましてやんぜ。


どこからか響く闘争の音色へ向かって、俺はまた走り出したのだった。


◇◆◇◆



心臓の鼓動がうるさい。

周囲の雑音をかき消すこの音は依然であれば心地よく自身の精神世界へ入るために随分と役立っていたが、今は、ただ一人の時間を感じさせる不必要なものへと変わっていた。


静謐な空気を纏う夜の住宅街。

だれも通らず、時折車の通りすぎる音が遠くから聞こえてくるだけのこの時間に、俺はとある人物との待ち合わせをしていた。


その時、曲がり角の向こうから、暗闇からはい出てくるようにして白髪の男がやってきた。


「やぁやぁ、剣心君。心は決まったみたいだねぇ。君の親友君は今も止まることを知らないみたいなんだ。だから君も今以上に成長してもらう必要がある。ついてくる準備は出来ているね?」


「・・・俺は、何をすればいい?」


「はは、簡単さ。俺達についてくればいい。舞台は整える。それまで君は最前線で戦ってくれたまえよ。そうすれば、君の中でくすぶるその火が、その劣情が、くうううう考えるだけで甘美ッ!!!屈辱を、一緒に晴らそうじゃないかぁ。さあ、行こう、明日へ。」


ただ狂気的な笑みが、一人の人間を惹きつける。

己の足元で渦巻く悪意の影に気付かないまま、少年は身勝手な復讐の道を進むこととなったのだった。


それから数日後。


勝利の携帯が鳴り、液晶に榊原という名前が映った。

榊原さん本人から電話がかかってくることは珍しいため、急いで電話を取る勝利。

久しぶりに休息に充てた日曜日。家族団らんの時間を、その一報が引き裂いた。


「勝利君!君の友達の天ノ矢剣心君が行方不明になった!」


突如としてもたらされた凶報に、勝利はうすら寒い予感を覚え、すぐさま身支度を澄まし、家から飛び出した。


◇◆◇◆


・ダンジョン攻略進捗状況

『不知火勝利』

・到達深度  →不知火邸ダンジョン六層攻略途中、その他、複数のダンジョンを平均して4~5層。

・討伐関連  →鬼人、アラクネ、ギガパンドラット複数討伐。

・レベルアップ→なし ※現在Level.6

・スキル   →斧術(特殊開放第三段階)・剣術:タイプ『刀』(特殊開放第二段階)『短剣』(特殊開放第一段階)・暗視・マッピング・体温一定・敵意感知・心眼・疾駆・剛力・戦気

・称号    →セット『討伐者の行進スレイヤーズパレード』・控え『討伐者』系統多数『最速討伐』『不倒不屈』『無慈悲の一撃』『剛力粉砕』『災いの種:タイプ****』


・攻略状況一覧

 とある攻略者が単独で五層の階層主を破った。

 複数のダンジョンにおいて、異常に魔物が狩られているという報告があった。

 自衛隊は死体集めの暴走を危惧し、早々に自体の収集に取り掛かった。


・【最*】系保持者情報

 『最速討伐』→不知火勝利しらぬいしょうり

 『最大射程』→水川英理みずかわえり

 『最大威力』→柳日向やなぎひなた

 『最大精度』→榊原健次郎さかきばらけんじろう

 『最多殺人』→神無月かんなづきラウロ

 『最大防御』→****  etc.


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