EP2 日野青葉は自分の気持ちを推理したい

自分の心

「やばい、どうしよう……」

「別にバレてないんでしょ? それなら大丈夫じゃないかな」


 ヒカリの中の人がゲーマーだとバレた次の日のお昼休み、あたしは光莉と2人でご飯を食べていた。昨日あったことはすでに昨夜に連絡済みだけど、改めて対策をとろうとなったわけだ。


「というかごめん。今の状態だとバレてなかったとしたら光莉がゲーマー扱いだよね」

「まあ鷲宮くんに他の人には言わないでって言ったなら大丈夫じゃない? 鷲宮くんそういうところは結構気を使ってくれるタイプだと思うんだけど」

「まあ、たしかにあいつ口は堅いっていうか人が嫌ってことはほぼしないからね」

「いやだって、これをきっかけに光莉に話しかけることが増えたりするかもしれないじゃん。そうなった場合迷惑かけちゃうし、何よりゲームの話題はさすがに光莉も対処仕切れない可能性あるから」

「まあまあまあ、そこらへんは誤魔化す方法はあるから!」


 光莉はそういう。会話が得意とは言えないあたしではその方法は想像つかないから、そう言われたらもう任せるしかない。


「光莉は今日は予定あるの?」

「部活だねー」

「そう……」

「でも、今日はそんなに長くならないって先輩言ってたし、夜結構やれると思うよ」

「じゃあやろう!」

「め、珍しいね。青葉ちゃんがそんなふうに言ってくるの」

「もうこうなったら光莉にゲームをもう少し知ってもらうのがいいかなって」

「まあそういうことならおっけー! それに今度イベント? があるらしいし私のレベル上げ手伝ってほしかったんだ」

「そういえばそうだった。昨日のことで頭から飛んでた」


 今回は光莉も参加できそうだということでイベントはよほどじゃない限りはあたしと夏樹と光莉と金田の4人で参加する予定だ。

 そう考えると一ヶ月でそこそこプレイにはなれたけど単純なレベルとステータス的には光莉のアオのレベルは上げておきたいかもしれない。


「それに、もっとアバター揃えたいしね!」

「それも手伝うよ」

「うん! それにゲームないのファッションなら青葉ちゃんのほうが先輩だしね」


 確かに考えてみると現実のファッションは光莉のほうが詳しくてゲーム内だとあたしのが詳しいことになるのか。改めて考えると不思議な関係かも。

 まあ、光莉がアバターというか見た目重視の装備集めにハマるのは結構予想通りだから問題ない。

 あたしは夜にプレイするおおよその時間とかも約束してから2人で教室に戻った。


* * *


 帰りのHRが終わって帰ろうかと思っていた時だった。


「なあ青葉」

「うん?」


 珍しく夏樹が話しかけてくる。いや珍しくはないんだけど、帰りのHRの後だとゲームやるために直行で帰ることも多いから珍しく感じる。


「あー、今度の土曜って暇か?」

「暇だけど」


 珍しくなんか歯切れが悪く小さく唸って何をいうか迷ってる感じだ。


「そんじゃあ、まああれだ。久しぶりにライブハウスとかいかね?」

「……えっ?」

「い、いや、用事があるとかそういうんだったらいいんだけどさ」

「別にそういうんじゃないけど……まあいいよ。あたしも最近行けてないし行きたいから」

「じゃあいつものとこでいいか? 土曜にやるっぽいから」

「わかった」


 あたしがそう言うと夏樹は1人で教室からでていった。


「ほんと珍しい……」


 思わず口に出してしまっていた。

 ライブ関係はあたしが誘うことがほとんどだ。いいとこあいつが数回誘ってきたことがあるのはゲーム主題歌とか歌ってる人のライブかアニソン関係のライブだけ。

 あたしはゲームこそ好きだけど音楽は普通にロックとかJ-POPとかも好きで、ひと駅先にある学生でも入りやすい夕方ごろにライブをするライブハウスに行っていた。それでたまに気まぐれで夏樹を誘ったりしてたけど、そこに初めて夏樹から誘われた。


 なんか自分の中で疑問が残るものの嬉しさも確実に生まれているのがわかる。ただ、久しぶりにライブに行けることなのかと聞かれたらそうだと答えられる自信はない。

 あたしは鞄を肩にひっかけながら教室をでて家路につく。

 そして帰り道を歩いている中で思う。ゲームみたいにイベントでも起きて自分の心がわかればいいのに。

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