青葉は最近いじられる

 あっという間に時間が過ぎて土曜日になった。あたしは集合場所に一足早くたどり着いて2人を待つ。

 光莉が指定したのはショッピングモールから最寄りの駅前だけど、ここって正直あたしは苦手なんだよね。今もそうだけど、わかりやすいゆえにカップルとかの待ち合わせ場所としてもこのあたりだと有名だから。

 スマホをいじって気を紛らわせながら待っていると先に来たのは光莉だった。


「青葉ちゃーん! おっはよう!」

「おはよう、光莉」

「いやー、晴れてよかったよ。青葉ちゃんは相変わらずクールだね!」

「クールなのかな……?」


 多分あたしのパンツスタイルの今日の服装見ていってるんだろうけど、普段からこんな感じだからな。クールとか意識はしてないし、どちらかというとパンクファッションの影響みたいなのが強いと思う。


 あたしに対して光莉の服装はキュートという一言に尽きるコーデだ。髪型は普段どおりのツーサイドアップでまとめているけど、明るめの赤系を中心にまとめられているワンピースコーデが元気さと共に可愛さをアピールしてくる。


「クールだよ! でも、私は青葉ちゃんには可愛いのも似合うと思う。というかスカート系ね!」

「いや、あたしの柄じゃないし……制服以外でスカートとかほとんど着ないから」


 興味が無いかと言われれば興味はある。ただ、そういうのが似合うように作っているのがヒカリというゲーム内のキャラクターだ。つまりあたしのそういう欲求は結構ゲーム内で発散しているので問題ない。

 それにあたしがそういうのが好きだってバレたりしたくないからなおさらだ。


「おっけいわかったよ。初披露は鷲宮くんと2人きりのデートのときってことだね!」

「違うから! ていうかそれ誤解だからほんとそろそろやめて!」

「えー? そんな事ないと思うけどな」

「そんなことあるから」

「わかったよもー。でも、何かあったら私はいつでも相談乗るからね」

「はいはい……そんな日が来たら頼るよ。夏樹そろそろつくって」


 あたしはスマホを見ながら光莉にそう伝えてこの話題を切ろうとしてみる。話途中に連絡した夏樹はタイミングバッチリだった。

 話している途中でってことはもうついててもおかしくないと考えて少し周りを見渡してみるとよく見る服装の男子を見つけた。右手を上げてみるとこちらに気づいて走ってくる。


「すまん、遅れた」

「まだ時間じゃないし大丈夫だよ」

「うんうん。私達が少し早かっただけだよ!」

「しかし、こういう場合男子が待ってたほうが良いものかと思ってしまってな」

「遅れなければいいとあたしは思う」

「そう言ってもらえるとまあ助かる」


 謙虚だけど、あたしの記憶の中で夏樹が遅刻した覚えはほとんどない。数回あっても絶対に連絡は早めにくれるからひどいと思うようなこともないし。


「ふっふっふ。じゃあ揃ったなら出発しよう! 今日あ私のことをいろいろを知ってもらうからね」

「了解した。まあこれを気に仲良くしてもらえれば嬉しいな」

「なんで緊張してんの」

「わざわざ言わなくて良くないか? てか、やっぱりわかっちゃう?」

「少なくともあたしからみたらバレバレ」

「私は全然わかんないけどねー」


 光莉はニヤニヤとした表情であたしを見てくる。


「ほら、行くんでしょ」

「はいはーい!」


 光莉のそのテンションに少しばかりの嫌な予感を感じながらも、あたしたちはショッピングモールに向かってゆっくりあるき始める。


「ちなみに、何する予定なんだ?」

「うーん。とりあえず私のよく行くお店とか見に行きたいかな。他にもせっかく3人できたんだしゲームセンターとかでも遊びたい!」

「ふーん」

「青葉ちゃん何その反応」

「いや、光莉のことだからもっと吹っ飛んだこと実は考えてるかと思った」


 ショッピングモールでできることなんて限られてるけど光莉だから。


「失礼だよ、私だって普通の女の子なんだからね! よくウィンドウショッピングとかもするんだから」

「というか俺は失礼かもしれないけど大川さんのこと、まだよく知らないからな」

「いや、別にあたしも光莉との付き合いは夏樹と似たようなものだから」

「俺よりは仲絶対にいいだろ」

「そりゃまあ……」

「え!? 私はもう青葉ちゃんと友達以上恋人未満ぐらいだと思ってたのに」

「それはない」


 ばっさりをあたしは切っておいた。というか恋人未満って女同士で使われると反応に困る。ただまあ友達以上って言われるのは嫌じゃないかもしれない。いじられそうだから言わないけど。


「いいもん。いつか私は青葉ちゃんの方から親友とかマブダチっていわれるようになってみせるから!」

「だそうだが」

「勝手にすれば」

「……嬉しそうだな」

「は?」

「いや、すまん。忘れてくれ」


 夏樹はそう言うけど、その表情からはなんか嬉しそうな雰囲気を感じた。なんでこいつが嬉しそうにするのか全然わからない。

 少しもやっとしたその気持ちを抱えながら歩いているうちにあたしたちは目的地のショッピングモールにたどり着いた。

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