ダンジョン探索達成と報酬

 ボスからドロップしたアイテムは正直大したものではなかった。だが、ガルドが集めた大量の素材とやりごたえのある探索や戦闘ができたから俺個人としては満足する結果だった。


 ダンジョンを後にして街に戻ると現実の時間では9時半を過ぎていた。俺たちは最後に少しのんびりとしてから今日は終わりにしようとなった。現在は荷物置きなどのためにも拡張して広くなっているガルドのマイルームに集まって安いお茶を飲みつつガルドが素材の鑑定を特殊なアイテムでしている。

 鑑定のできるクラスの人に任せることもできるが、大雑把になら鑑定が行えるレアアイテムをガルドはオークションで手に入れたらしい。商人的にはかなり出費が減少したらしい。

 もちろんリアルの金じゃなくてゲーム内のGでのオークションだから安心していい。


「つかれたー!」

「疲れたね」


 2人はそう言って机にぐったりしたり寄りかかるように楽な態勢をとってる。俺も盗賊から剣士に戻って慣れた軽装に変更してきた。


「おつかれさん。俺も久しぶりに疲れたな」


 まだ初めて数日であそこまでの戦闘になった女子2人はどんな疲れなんだろうな。ちょっと気になりはする。俺は順当に弱めのボスからゆったり慣れていったからな。

 そういう意味で考えると俺はもしかして無茶をやらせたのではと終わってから思う。


「あー……その、あのなんだ」

「どうしたのー?」

「はっきり言えば?」

「いや、その楽しかったかなーってな。結構、きつかった部分もあるからさ」


 ゲーム歴自体が離れてる人はやったことあるけど、ネットで知り合う人は大体自分からやりたがってきてる人だから、どうしても感覚がわからない。


「疲れたけど楽しかったよー。それに演劇で戦闘シーンみたいなのってやったことあるけど、実際にはこんな感じなんだなって思ったから。ちょっと対人戦にも興味出てきたよ」

「あたしはまあ魔法打ってるだけだったから。でも、良かったよ……もっといろいろしてみたくなった」

「それならよかった。なんかきつかったら言ってくれな」

「心配しすぎだよー。ナツくんも楽しめなくちゃ本末転倒だぞ」

「お、おう」


 ヒカリさんは明るく俺の不安を吹き飛ばしてくれる。アオも別に嘘をついているという感じではなさそうだしよかった。

 だけど初心に帰る気持ちでやるつもりだったのに結局はいつもどおり慣れてるからこそのやり方になってたな。いつか2人にそれを求めてしまうことはないと思うけど気をつけておかないとな。ガルド相手ならいくらでもぶちゃぶり投げるけどな。


「おっし、鑑定終わった! 黒字黒字だ!」


 横でずっと床に素材を広げて鑑定していたガルドがそう言って立ち上がる。鑑定しながらひとりひとりの分も分けてくれていたらしい。


「1人、この分持っていっていいぞ。まあ、いらないっていうなら俺が買い取るが……ヒカリとアオはまだなんとなくだと思うからな。クラス今後変えて新しい装備ってこともあるだろうしマイルームのボックスとかに突っ込んでおいて損はないと思うぞ」

「了解」

「わかったよ!」


 2人はそう言って素材を受け取る。


「お前は?」

「最近武器注文して作ったばっかりで、修理とか用の素材ないからな。ただ……」


 今目の前に広がってる素材を見ると、俺が使ってる武器には使えないんだよな。


「なんなら、同じ値段とレアリティの素材なら今余裕あるから物々交換でもいいぞ?」

「あー、じゃあいつものあれ系の鉱石に交換してもらえるか?」

「おう、任せろ」


 ガルドには素材を売ってもらうことも多いから「あれ」とか「それ」で話が通じるから楽だ。ガルドは俺がよく使う同じ程度の素材を本来受け取る程度と交換してくれた。


「よっしゃ、そんじゃあひとまずこれで今日のダンジョン探索は終了だ!」


 ガルドは改めてそういう。こいつ曰く報酬をきちんとグループで分けるまでは冒険らしい。

 その考えは俺も好きだったりする。


「おつかれさん」

「おつかれー……私はちょっと疲れたしもう寝よっかな」

「あたしも」

「そうか。俺はこのままちょっと商売してくるかな」

「俺も少し知り合いがログインしてるから顔だしてくる」


 女子2人はログアウトで男子2人はもう少しゲームをすると言った感じになったな。

 一度マイルームからでてから「おやすみ」と挨拶して俺たちはそれぞれにわかれた。


「さて、そんじゃ行くかな」


 俺は一度メニューを開いて相手にメッセージを送る。そして返信で指定された場所に向かって歩き出した。

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