素材収集クエスト

 ギルドはさすがに人が多いということで、あたしはコノミのマイルームへと招かれた。

 中に入るとかなり拡張しているらしく炉が置いてあったりハンマーが立てかけられていたりと、まさに工房といった雰囲気を醸し出している。


「あいかわらずすごいね。私なんてマイルーム広くはしてないよ」


「はっはっは。まあ、生産職なら結構3段階ぐらいは拡張してるやつが多いとちゃうん? 5段階までなら課金とかも必要あらへんし……素材とGは必要やけど」


 生産職は様々な街に常設されている炉などを使えば別にマイルームにこれだけ揃えなくても生産プレイはできる。しかし、専門的にやってる人の多くはこうしてることが多いと聞く。まあ、あたしはガッツリ鉄鋼系の生産をしてるフレンドがコノミぐらいしか今はいないから実際は知らないけど。


「まあ座って話そうや」


 そんな部屋の中にも設置してある机と椅子。あたしはコノミと対面になる席に座って本題に入ることにした。


「それで、何がほしいの?」

「急ぎではないんやけどな。リヴァイアスの北側にある【ゴロゴロ遺跡】ってあるやん」

「あるねー。中級者向けって感じのあそこね」

「そうそう。あそこにいるボルトスライムの核がほしいんよ」

「ボルトスライムかー。それに核ってなるとたしかに簡単に受けてくれる人はいないかもね」


 リヴァイアスから西のゴルドン方面は奥へ行きすぎなければ初心者向きマップになってる。北はその西の初心者フィールドやダンジョンを突破したらちょうどいいくらいのフィールドになっていて、ゴロゴロ遺跡もそのひとつだ。雷属性のモンスターがうろうろしているダンジョンになっている。

 ボルトスライムはそのダンジョンにいるモンスターで、黄色の雷属性を持つスライムだ。スライム全般に言えることだけど物理攻撃への耐性が強い。槍や矢のようなもので体の中にある核に直接攻撃すれば大きなダメージにはなるけど、多くのパーティーは魔法使いが対処するモンスターだ。


 そして核はそのスライムの弱点であると同時にレアドロップの名前だ。核に直接攻撃して倒すとドロップはしない。魔法で一気に倒すか物理攻撃で体に攻撃を当てて粘り強く倒して運がいいとドロップする。スライム自体はレアモンスターでもなんでもなくてかなりの数がいるけど核のドロップを狙う場合は根気強く狩りをすることになるから受けてもらえなかったのかもしれない。


「すこし時間かかってよければ私がやろっか?」


 少なくとも最近で一番欲しかった装備とか装飾品はもう手に入ったし、また改めて貯金する必要がある。だから依頼もどんどん受けようと思っていた。

 ただ、クラスメイトとプレイすることも少し増えると思うし、そもそもレアドロップだから時間がかかるのは絶対だ。あたしはそこが大丈夫ならゲーム内のフレンドだし受けてもいいと思う。


「受けてくれるって言うなら是非お願いしたいわ。ウチもいうて素材はほしいけど別の武器の製作依頼とかあるしな!」


 そういってコノミはちらっと後ろを振り返る。あたしもつられてその視線を追っていくと見た目では完成していると思われる武器は数本壁にかけられていた。


「あれ完成してないの? 私が見た限り完成してそうだけど」

「クランからの依頼でクランのマークの彫り込みと、後はいくつかは属性つけてほしいってことでさらに加工しないとあかんからなー。まだあれはガワだけみたいな」

「へー……見た目でわかるものなの?」

「普通はわからんけど。鍛冶師のクラスレベル上げていくと、見ただけでわかるようになるスキルがあってな」


 生産型だとアバターとかのための布素材関連のアバターを作れる仕立て屋を少ししか育ててないから詳しいことをしらない。半年やっても知らないことが多いって改めて考えるとすごいボリュームに感じる。


「じゃあ、後で専用依頼にしてギルドでだしておくわ。だしたらメッセ送るんでよろ!」

「うん。任せて!」


 まあこれから狩りに行くためのパーティー含めて集める必要があるんだけど。あたしってゲーム内でもよく考えたら固定でよくプレイしているメンツはいないかもしれない。

 夏樹と金田がよく一緒にやってるって話をきいてる時に実はたまにあたしの秘密自分から漏らしそうになってたし、自分が思ってた以上に一緒にプレイしてみたい気持ちはあるのかもしれない。まあ、でもそれが好きってことにはならないけどさ。


「それじゃあ、私はこれで。コノミちゃん思った以上に依頼多そうだし」

「すまんなー。そんじゃ、また」


 あたしはコノミのじゃまにならないように席から立ち上がってその場を後にする。

 再びリヴァイアスに戻って今の時間を確認したら、気がつけば外は暗くなってそうな時間だった。


「あれ?」


 あたしは夕飯時でお風呂も入りたいし一度やめようと思ってメニューを開いた時、光莉からのメッセージを受信した。

『ただいま帰宅! もし良ければ一緒にやらない? いろいろ教えてほしいし!』

 文面でもわかるほど光莉らしいといえる元気なメッセージだ。

『今から夕飯とお風呂だから2時間後ぐらいからでどう?』

 あたしはそう返事してゲームからログアウトした。メッセージ自体はスマホからでも返せるしね。

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