15:30〜17:00(2)

 店の前の自販機で、それぞれが購入した冷たいお茶で喉を潤しながら、少しばかりの暇をつぶす。


「3分経った?」

「わからん!2分半くらいやない?」

「そういえば、時計見るが忘れちょったね」

「まぁいいわ〜2分半でも美味しいし!」


 結衣が早めにカップラーメンの蓋を開ける。

 ふわっと漂う湯気とその香りに、私と弟も我慢できなくなる。


「あーもう我慢できん!私も食べる!」

「じゃあ僕も……!」


 我れ先にと争うように、そして落とさないように、ペリペリとミニサイズのカップ麺の蓋を剥がし、店で一緒にもらった割り箸を麺の中に沈める。同時に、グワっと辛い香りが一直線に私を責めてくる。


 真っ赤なスープと麺を馴染ませるように混ぜると、そのを絡めながら麺を持ち上げ、少しばかりフーフーしたのち口に入れて一気に啜り上げた。


 それぞれが無心になり、そのひと時を過ごす。


 麺を咀嚼し飲み込み、"辛い!"と思うと同時に、汗が噴き出す。スープを少し飲み、そして冷えたお茶を飲む。そしてまた、麺を啜り、スープを飲み、お茶を飲む。


「ヒーッ!辛い!」


 舌を突き出し汗を流す私に、同じ味のものを食べている結衣は、汗を滲ませてはいるが涼しい顔をしている。


「辛くないが?」

「いや、普通に美味しい。」

「まじか……。確かに美味しいけど、辛いわ!美味しいけど!」


 そのやりとりに、弟が口を開く。


「お姉ちゃん!僕のとちょっと一口交換しょうや。」

「あんたこれ食べたいだけやろ。」

「だって美味しそうながやもん……。」

「そっちも美味しいと思うけどね〜!辛いけん一口にあんまりいっぱい食べたらいかんで〜!」

「はーい。」


 弟とカップ麺を交換すると、お互いに一口麺を啜る。


「……辛い?大丈夫?」

「辛いけど美味しい!……あっ辛い!」

「ね!やっぱ辛いでね!美味しいけど!」

「お姉ちゃんはどう?」

「うーん……キムチ味の後にシーフードはちょっと味わからんなるわ…。」

「そういえば、昼も麺やったね。」

「あー…でもこれはオヤツや!やけん家には内緒よ!」

「大丈夫、分かっちょる!」


 弟と結託したのち、自分のカップ麺をまた啜り始める。


「そういえば……」


 と、おもむろに結衣が口を開く。


「この後、どうする?」

「う〜ん、海でも散歩する?」

「えいね〜!食後の運動や!」

「僕も行く!」

「じゃあ決定や!はよ食べて行こう!」


 結衣のその言葉に、私は残っているスープを早々と飲み干した。

 ふぅ…と息を吐き、立ち上がると、座っていた所にお尻の形に濡れたマークが残っている。


 ズボンの尻のあたりを触ると、地面のアスファルトの温もりで温められ、生温くなっている。それが少し気持ち悪くて、尻の辺りを軽くはたいた後に伸びをして、ゴミ箱に食べ終わったゴミを捨てた。


 結衣と弟も後に続いて早々に食べ終わり、ゴミを捨てる。

 ふと服を絞ってみると、今日は天気がいいからか、水滴がほぼ出ないところまで乾いていた。


「服結構乾いたね。」

「確かに、湿ったぐらいまで乾いた!」

「じゃあ行くか!」


 会話もそこそこにした後、再び自転車にまたがり、家の近くにある海へと3人で向かった。

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