第11話 肌色
今朝のシースルーのパジャマ? から見えていたリナさんの胸と、濡れた白いワンピースが張り付いたリナさんの胸。
どちらも同じ胸のはずなのに、見た目から受ける印象がこんなにも違……って、僕は何の話をしているんだ。
「リナさんまでびしょ濡れになって、どーするのさ」
「あはは。水を出すだけなら簡単なんだけど、ミウが風邪をひかない様に、温度調整してたら少し失敗しちゃって」
温度調整に失敗って、温度設定の摘まみを回すだけだよね?
何か難しい事ってあるの!?
「とりあえず、もう一つバスタオルを取ってきますから」
「あ、待って。ねぇ、優ちゃん。一緒にお風呂入ろ?」
「え!?」
「ほら、お家ではいつも優ちゃんとウチとミウの三人で入ってるやん。家のお風呂と違ってちょっと狭いけど、ここでも頑張れば一緒に入れるし、狭い分いっぱいくっつけるし」
一緒に、お風呂!? 僕とリナさんが? ミウちゃんはともかく、僕とリナさんはダメでしょ!?
いや、かといって僕とミウちゃんの二人で入れと言われれば、それはそれでまた違う問題が発生するんだけどさ。
「ね、優ちゃん。あ、服を脱がせて欲しいんかな?」
「僕、琴姉ちゃんを起こしてきますっ!」
「あ、優ちゃん!?」
僕に手を伸ばしてきたリナさんから、逃げるようにして二階への階段に向かう。
あれ以上リナさんに流されていたら、大変な事になる所だった。
ただでさえ、頭の中がリナさんの肌色の膨らみで埋め尽くされつつあるというのに。
「だけど、僕が好きなのは明日香なんだからっ!」
誰に言う訳でもなく小声で呟くと、頭を振ってリナさんの大きな胸を思考から追い出す。
それから二階の一番奥にある、琴姉ちゃんが使っている部屋の前に立つと、コンコンとノックを二回。
「琴姉ちゃん、起きてー。もうとっくに朝だよー」
反応が無いので勝手に部屋へ入ると、真っ暗な部屋の真ん中でもそもそもと何かが蠢いていた。
僕はそのまま奥へと進み、シャッと一気にカーテンを開けると、畳の上で膨らんだ布団が動いている。
「琴姉ちゃん。朝だってば」
「……い」
言葉にならない何かを発しているけれど、頭から布団を被っているからか、それとも寝ぼけているのか、いずれにせよ何を言っているのか分からない。
これは、僕がいつも優子にやられている奥義を使うしかなさそうだ。
週末になると毎回喰らっているから良く知っているけれど、この奥義を受けるととにかく辛い。特に冬が辛いけれど、今は五月なのでそこまでダメージはないだろう。
「琴姉ちゃん。最後の通告だよ。朝だから起きて」
「……ぃ」
相変わらず、よく分からない言葉を発するだけで、布団から出てくる気配がない。
だが、警告はした。
琴姉ちゃんには悪いけど、優子の技を使わせてもらうっ!
僕は両手でしっかりと掛け布団を掴むと、
「とりゃあっ!」
勢い良く、引っ張り上げる。
奥義、布団剥がし!
まぁそんなに大した話ではないのだけれど、朝にこれをやられると、とにかく辛くて起きるしかないと諦めの境地になる。
流石に琴姉ちゃんもこれで起きるは……ず!?
「優君。寒い……」
敷布団の上で、寒そうに身体を丸める琴姉ちゃんと目が合った。
眼鏡を掛けていないけれど、ちゃんと僕だと認識しているらしい。
だったら、何故!? どうして、この状況でそんなに冷静で居られるのっ!?
「こ、琴姉ちゃんっ! どうして全裸なのっ!?」
「これがいつも通り……」
あぁぁ。そう言えば、そんな事も言ってたね。
琴姉ちゃんの全身肌色の姿をしっかり見てしまった後だけど、慌てて後ろを向くと、
「優君なら見ても良い。だから、別に後ろを向かなくてもいい」
とんでも無い事を口走る。
リナさんも琴姉ちゃんも、僕の事を聖人君子か何かと勘違いしているのだろうか。
僕は普通の男子大学生だからね? 間違いが起こっても知らないよ?
……とはいっても、僕には明日香が居るから間違いなんて起こさないけどさっ!
「琴姉ちゃん。優子は部活へ行っちゃったし、リナさんもミウちゃんも食べ終えたから、琴姉ちゃんも早く朝ご飯を食べてよ」
「む……そうだった。ミウちゃんがお泊まり……これは、早く起きて一緒に遊ばないと」
そう言うや否や、背後で琴姉ちゃんが立ち上がる気配がして、そのまま部屋から出て……
「って、琴姉ちゃん! ストップ! 服を着てよっ!」
「大丈夫。昨日一緒にご飯を食べた。だから家族同然の仲……」
「親しき仲にも礼儀ありだよっ! 起きたのは偉いから、一旦戻って先に着替えて」
廊下を進む琴姉ちゃんを止め、部屋の中へと引き戻した。
一先ず日本の恥とならないように、琴姉ちゃんに着替えてもらう事を了承させたけど、
「優君。私の着替えって、どこ……?」
相変わらず問題が沢山あったのだった。
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