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「それで? 炎帝竜の魔法の成果はどうなの? 少しは扱うことができたのかしら? それとも、失敗に終わって未だに習得できていないの?」


「……一応、一つや二つは何とかな」


 今日はその半ばの休息日、いくら修行をするとはいえ、詰め込み過ぎてはいけない。


 ここマードックの街にある魔導図書館には、数千冊ほどの魔導書が保管されている。他にも生物学や物理学などの本も置いてあり、館内には多くの人が静かに文字を読んでいる。


 そして、この近くの山には古い遺跡いせきがあり、中には火の神様の墓が建てられていると言われている。


「なあ、そう言えばミラの天候魔法てんこうまほうの秘奥義のアレ、本当に天候魔法なのか? 俺から見てみれば、憑依とか、神降ろしに近いと思ったんだが……」


「それの事ね。この際、ハッキリと話しておくわ。あれは天候魔法で間違いないわよ。昔読んだ魔導書の中に天候魔法にはその先があったの。でも、これは高い魔力を持つ魔導士しか習得することしかできないの」


 ミラは自分の天候魔法について話を始めた。


 竜二はとしてはこの天候魔法の秘奥義については、少し興味を持っていた。


 天候魔法の先にある秘奥義はそれぞれの属性魔法の神々を自分の体に憑依ひょういさせる魔法である。この前、現れたのは氷属性のアーサー・ペンドラゴン。この他にあと四体、彼女の中にはいるということになる。


「ふーん。この前のあいつは伝説の王だろ? 俺の知る限りでは氷ではなく光・雷に近い存在だと思ったんだけどな……」


「それは……ロンギヌスの槍が関係しているからよ。他の四人だって、彼女と同等の力を持つ魔力と力を宿しているわ。火属性は色欲しきよくの罪・リリム。水属性は運命の女神・ヴェルダンディ。風属性はケルト神話の半神半人の英雄・クー・フーリン。そして最後、雷属性はギリシャ神話にも登場する最高位の女神・ヘラ。この四体が今もこの中にいる」


 と、なぜか難しい言葉を並べながら竜二に話した。


 ————聞いていても名前しか知らねぇ。


「ほとんど、名前しか聞いたことのない奴しか入っていないな……」


「そうね。私もこれを習得するまでは全員の事なんて知らなかったのよ。この魔法を習得するには五年以上の月日を費やしたのがけどね……」


 棚から持ってきた魔導書を机の上に広げて、右手の人差し指手、トントン、と音を立てた。


「五年か……。そんなにかかる事なんだな。それにしてもそいつらはよくミラを認めたな。どうやって手懐けたんだ?」


「手懐けてなんかいないわよ。今でも時々この体を巡って喧嘩しているわよ。だから、たまに魔法を使っていないのに人格が変わるのが悩みなんだけどね……」


 ミラは微笑みながら、スラッと普通に述べた。

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