18

 もうすぐ嵐がやってくる。この天候なら逆に利用できるのかもしれない。代々、氷属性魔法は風が吹けば吹雪になり、雨が降れば雹へと変換することが可能だ。


 物質である液体や気体を個体に変え、そして、時には個体から液体、気体へと変えることができる。


 天候魔法の魔導士として、専門外である事をミラはそれなりに勉強をし、理解しているほど、他の魔法についても詳しく応用範囲で考えるのだ。


 ————またひとつ、巨大な魔力が近くにあるな……。


 そして、ゆっくりと黒き竜は空から地上へと舞い降りた。やはり竜の空でも地上でも風格は同じであり、威圧もすごい。



 森の中で自分の姿を元のサイズに戻した炎帝竜は竜二を頭に載せ、空へと羽ばたいた。


 上空へと羽ばたいた赤き竜の背中はとても大きく、黒き竜よりも偉大で、大きく見えた。全てが赤い鱗に包まれている。


 そして、すぐにミラたちに追いつくと、ジークフリートは黒き竜に向かって炎の咆哮ほうこうをぶつけた。


 そのまま全身に炎が走り、黒き竜を炎で呑み込もうとしている。黒き竜よりも威力が全然違いすぎる。


 竜二はジークフリートの頭から飛び降りて地上に降りた。


「竜二よ、これが炎帝竜ジークフリートの赤き炎の咆哮ほうこうだ! 驚いただろ? 奴はそこまで強くなかったな。所詮は全帝竜の足元にも及ばん種族が私と同等に渡り合えるわけが無かろう。それだけ、炎帝竜の力は伊達ではないのだ」


「すげぇ……。これを俺に覚えろと言うのかよ……」


「そうだ。これをお前には覚えて貰は無ければならない。私には時間が無いのだ。そして、他の帝竜たちもお前と同じ、魔導士に力を与えているだろう」


 ジークフリートの隣に立ち横たわる黒き竜を見ながら二人は話をした。


 竜二は隣で自分と同じように立っている偉大なる竜が、希望と感じる一方で絶望にも感じた。


 確かにいろんな人の話を聞いて、炎帝竜が土出だけの悪竜かと思っていたが、これは人を愛して、それが不器用な事でしか返すことができない竜なのだ。


 炎帝竜ジークフリート————竜の中で最強クラスの力を持つ竜。そして、心優しき、竜は竜を愛し、人を愛することができる。


「貴様、ミラのパートナーだったよな? それにしても……久しぶりだな、炎帝竜よ!」


 と、そこへ声は似ているが口調が全く似ていないミラが声をかけてきた。


 だが、中身はアーサー・ペンドラゴンだ。まだ、金髪の美少女のままである。


 その気の強さはミラよりも強い殺気を感じられる。氷のロンギヌスの槍は綺麗に赤く光っており、至る所に竜から受けた傷が残っている。


「あんた、アーサーといったな。なんでジークフリートの事を知っているんだ? ……それにミラの方は大丈夫なのかよ」


 この状況を見据えて、竜二はアーサーに訊いた。

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