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「我にまといしは、円卓の騎士。名はアーサー王。我の血を喰らいて、我に憑依せよ」


 連続の魔法詠唱と共に、ミラから光のオーラが漂う。


 ミラに憑依したのは伝説の王、アーサー・ペンドラゴン。ロンギヌスのやり聖杯せいはいに深くかかわっている人物である。聖杯とともに現れ、穂先から血を滴らせた白い槍である。


 ミラの表情は変わり、髪の色が白銀から金髪に染まっていく。これが神下ろしの憑依ひょうい。竜に向かって降下していく。


 ロンギヌスの槍は、竜のうろこ一枚を砕いた。


 ギャァアアアアアアアアアア!


 竜は大声で泣き叫ぶ。初めて傷つけられたのだ。


「ふん。久しぶりに私を呼び出したと思えば、まさか、目の前に竜がいるとは……。ミラ、私の力でも鱗一つしか剥がせないものでどう戦うつもりだ?」


『あなたに任せるわ。でも、私の意識は保たせてもらうわよ』


「ああ、分かっておる。私も久々に暴れてみたかったからな!」


『じゃあ、このままいくわよ!』


 ミラの天候魔法の秘奥義は、その属性によって性格が変わる。彼女には他に五つの人格を持っており、アーサー・ペンドラゴンはその一つである。


 だが、どんな戦いでも技の応用や発想力が無ければ勝てる相手ではない。


 ミラとアーサーが竜の戦力を冷静に分析してリンクさせていると、竜はミラ(アーサー)を睨みつけた。


 大いなる風が竜巻に変わって襲ってくる。


 これは完全に自分自身を傷つけたミラを狙った攻撃だ。だが、ミラに憑依したアーサーじゃなかったらこの攻撃はかわすことができないだろう。


 暴風。


 その風を利用しながらアーサーは上空へと上昇していく。


 竜巻はさっきまでいたアーサーの場所に竜巻が集まり、天まで昇って行った。


 さすがのアーサーでも竜の一撃を受ければひとたまりもない。肌がビリビリと伝わってくるのだ。これ以上、戦うのは不味い。


 この先の戦いによってはミラの体がもたない。自分の主を失ってしまっては、同じくこの魂も消えてしまうのだ。

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