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「分かった。でも兄ちゃんが言っていたんだが、ミラの魔法は強力らしいな。一体どんな魔法を使うんだよ」
「へぇ、紫苑がそう言っていたの。でも、紫苑の方が凄かったわよ。たぶん、私達のギルドでは最強の魔導士だったわ。————まあ、その紫苑がそう言っているのなら今の私に勝ち目はありそうね」
魔導師にとって、魔法は命同等に大切なもの。
考えてみれば、紫苑は魔導士を引退して、数年以上経つ。
「それであの標高が高い山の所まではどうやって行くんだ? 登ることは分かっているが、流石にあそこの麓までは乗り物で行かしてくれよ」
「そうね、あそこまでは馬車で行きましょう。私も色々と竜二から訊きたいことがあるしね」
と言っており、この近くに馬車は通っているはずがない。つまり、またオリエンの街まで移動してから借りなければならない。
そして、竜二たちは街まで一度歩いていくと、馬車を借りて運転はミラに任せた。
目的地の山の近くには小さな町があるらしく、そこまで一時間ほど時間がかかる。
補整された道を馬車は走っていく。街が少しずつ小さく見えていき、やがて米粒のように見えなくなっていった。
ミラが運転する馬車はどんどん山の方へと進んでいく。
「あれ? 風の流れが変わったわ」
急にミラが言い出した。隣で座っている竜二は空を見上げる。
だが、全く変わった様子は見られない。
「そうか? 普通に太陽は昇っているし、雲も穏やかに流れているぞ」
ミラとは違ってそう思わなかった竜二はミラの言葉に疑問が残るばかり。だが、ミラがそう感じるならそうなのかもしれない。
「先に言っておくわね。私の魔法は天候を操る魔法なの。風の流れや気温、などを感じ、雨を降らせ、雷を操ることができるの」
ミラは
天候魔法とは、この世界の異常気象や自分の体で実感し、その危機をすぐに察知することができる。そして、天候のすべてを魔法に転換させ、操ることや生み出すこともできるのだ。
「だとすると、何かがこれから起きるって事なのか?」
「分からないわ。こんな急に風の流れが変わるなんて初めてだし、風が暴れているの。ほら、気温も少しずつ暑くなってきているのも分かるでしょ?」
汗が流れ、右袖で何度も拭くミラ。急ぎ始める馬車は加速していった。
オリエンから東にある山の麓の小さな街・ハーバス。
着いた後、すぐに馬車から降りて、馬車を置くために近くの経営している店に預けてきた。それからは、急いで山を登る。
さっきよりも予定が早まり、急いで行かなければならない。この異常気象が何を引き寄せているのか。竜二にはまだ分からないが、ミラは険しい顔をしている。
「————間に合わなかったの‼」
と、ミラはその場で落胆した。
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