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 竜二は目の前の光景に驚いた。


 目の前にいるのは、紅蓮ぐれんに燃え上がる赤いドレスを着て、そして、赤いソファーに足を組みながら座っていた赤髪の美少女だった。そして、長髪の紙がソファーの色と混ざり合って、それを美しく引き出させている。


 そして、その小さな体型と年齢が合致しないところである。


 これが学生時代、紫苑しおん海淵かいえんと共に若き魔法世代の第一線で活躍した人物の一人である。彼女こそが炎の魔女である。


「さて、私の名前はサーシャ・ノグワール。魔法省の人間から十傑の序列七位の座を勝手につけられている魔導士よ。それにしても紫苑の奴は毎度毎度、大事な時になって姿を現さないなんてどういう神経しているのよ」


「それを俺に言われても……。兄ちゃんは昔からそういう性格だったもので……」


 自分の兄がこっちでもそういう事ばかりしていたことが、目に浮かぶ。


 竜二がそんな事を言うと、彼女は重々しく頷いた。


「そうよ。あなたも紫苑みたいな魔導士にだけはならないでよね。あいつ、力はあるのにいつも馬鹿ばっかりやっていたからその弟である竜二君もそうだと困るのよ」


 ————————くっ……。


 竜二の頭に痛みが走った。


「なるほどね。紫苑はわざと弟である竜二君をこちらの世界に送った……。それにしてもなんだ、彼がそうだというの?」


「ええと、竜二に一体何があったというのですか? それにサーシャさん、紫苑と今からでも連絡を取ることができますか?」


 ミラは竜二に肩を貸しながらサーシャに訊く。


「ミラ・アルペジオか。紫苑が所属していたギルドの魔導士ね。最初に言っておく、彼への連絡は無理よ。紫苑は、誰とも連絡を取ろうとはしない。今回はたまたま私と連絡は取れただけよ」


 息遣いが粗かった竜二の呼吸は、やっと落ち着きを取り戻して自分で立てるようになっていた。


「それでうちの兄ちゃんは、サーシャさんに何の用事で呼ばれたのですか? さっきわざと俺をこの世界に送ったと言っていましたが……」


 周りには古い魔導書がたくさん山のように置いてある。


 それを聞いて、サーシャが一呼吸置いた。


「それはまだ言えないわ。それよりもミラ、赤き竜の事については知っているわよね。炎帝竜ジークフリートの事を……」


「はい、知っていますよ。マスターの方が詳しいですけどどうします?」


 ミラが微笑みながらサーシャに引けを取らずに話した。

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