6

 翌日————


 竜二はホテルで朝食を済ませた後、目的地に向かってホテルの外へ出た。


 今日から紫苑の古き友の場所へと向かう予定である。


 街は瓦礫がれきの山になっており、被害は大きいと感じさせられた。


「さて、ロンドン駅に向かうとするか」


 竜二は地図を開いて周りを見渡しながら、呟いた。


 紫苑から受け取ったメモによると、ロンドン駅にある柱から友の所へ行く道があるらしい。


「あれ? 君、まだそんな所にいたの? ああ、ロンドン駅からその場所に向かうのね。私も丁度、その駅に行くつもりだったのよ」


 そこに現れたのは、白銀の少女————ミラ・アルペジオだった。


「この場所への行き方をしっているのか?」


「そうよ。私もその柱から来た魔導士だもの」


「柱から来た?」


 訳の分からない解釈をミラが言う。


 ミラが竜二から地図を奪い取ると、×の印が点いているところに目を動かす。


 そして、驚いた表情をしながら地図を地面に落とした。


「おい、返せよ! それが無いと目的地にたどり着けないんだ。それともこの場所がどこにあるのか知っているのか?」


「ねぇ、本当にその場所に行くつもりなの?」


「ああ、そうだよ! この場所に行き、何か受け取らないといけないものがあるんだ」


「……受け取るもの? あなた、本当に何者なの? 火神紫苑かがみしおんも知っているようだし、謎ばかりだわ」


 全ての謎を知りたがるような好奇心の強い子供の目をしながら、ミラが訊く。

「俺はその火神紫苑の弟、火神竜二かがみりゅうじ。それ以外に何があるって言うんだよ」


 ミラに対して、竜二の目つきは彼女を睨みつけている。


「あなたが弟なの? だから……」


 ミラはクスッ、と微笑みながらゆっくりと口を開いた。


「……竜二、あなたが行こうとしている場所はかつて、火神紫苑と共に行動をしてきた伝説の魔導士。魔法省から決められた十傑の一人、炎の魔女まじょ。サーシャ・ノグワールよ」


 彼女が口にするその重さの意味が、竜二には分かっていなかった。


 それを聞いた竜二は眉をひそめ、頭を悩ませる。


「炎の魔女……。サーシャ・ノグワール……。その名前、初めて聞いた。兄ちゃんは、それすら教えてくれなかったから……」


 竜二は彼女の名前を訊き、紫苑がなぜこの地に呼ばれたのか未だに知らない。


 少しずつ物語は進んでいく裏では、大きな影が迫りつつあった。

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