第三話 3-11
「はー……」
そこで俺は、盛大なため息を
眼前にあったのは見上げるほどの高さの門。視界の果てまで続いている塀。その上には十メートル間隔で監視カメラのようなものが設置されている。
「すごいな……」
こんなのテレビの中くらいでしか見たことがない。
門の向こうにそびえ立つ巨大な建物は洋風の
そこはかとなく気後れしながら『
「はい」
「あ、すみません、ええと、俺は
「承っております。少々お待ち下さい」
少しして、大仰な音とともに門が開かれる。
中から出てきたのは……メイドさんだった。
「おおおおー! メイドさんキタコレー!」
秋葉原や池袋にいるようなバイトのメイドさんじゃない。正真正銘の職業メイドさんだ。雰囲気というか、細かな動きとたたずまいでそれが分かった。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ。
「は、はい」
養殖ではない天然メイドさんとの初
と、
「あれ、
「え、ちょ……!」
まだ引っぱってたの、そのネタ!?
「ほらー、まだ人肌のぬくもりが残る温かいメイド服をテイスティングして、じっくりと口に含んで
「そ、そんなこと言ってません!」
それは
全力で否定するも、目の前のメイドさんが警戒するような表情でささっと胸元を手で覆ったように見えた。違うんですよ……俺は別に、メイド服にソースをかけて舌の上でねぶるようにして味わって「このメイド服には少し塩味が足りない」なんて言うような変態じゃないんですよ……
「あ、あの……」
「……こちらです、どうぞ」
心なしか冷ややかな視線のメイドさんに先導されて、
門を進んだ先は、外界とは完全に別世界だった。
都内なのにまるでどこかの自然公園に迷いこんでしまったみたいな緑あふれる風景。庭の中に森があるっていうのがまずよく分からない。何かウグイスが鳴いている声が聞こえてくるし、目の前を今リスがドングリを持って走り去っていった。おまけに
そんなここは本当に日本かと疑わしくなる風景を五分ほど歩いて、ようやく
これまた大仰な玄関扉を開けると、その向こうにいたのは……
「いらっしゃいませ、
にこにこと笑みを浮かべる
ほんわかとした
「やっほー、来たよー、
「いやあ、すばらしいお宅ですな」
「メイドさんが普通にいるとは実に理想的な環境ですね」
「テンションが上がってくるぜ!」
「今日はありがとう。お言葉に甘えて来てしまったよ」
まったく緊張感のない
剛毛が生えてるんじゃないかっていうその無駄なハートの強さを少し分けてほしい。
「あー、あのさ
持ってきた紙袋をおずおずと差し出す。
中身はさっきも言ったように近所で売っていたべったら漬けだ。何だか……こんなもの持ってきてよかったのかと、逆に申し訳ないような気分になる。
だけど
「わあ、ありがとうございます!
べったら漬け、好きだったのかな……?
何であれ、喜んでくれたならよかった。
「それではみなさん、こちらにどうぞ。会場にご案内いたします」
・
自宅があり得ないほどの大豪邸。
・
自宅に普通にメイドさんがいる。
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