第6話 新たな異物

――L-K-Lブロック


「さてと……。こちら【レイヴン】、隕石を4個確認した。排除を開始する」


 アックスは操縦桿そうじゅうかんを握ると、ペロリと唇を舐めた。レーダーを見ながら機銃の向きを調整し、トリガーを4回連続で押し込んだ。アックスの正確無比せいかくむひな射撃は、局員全体で見ても最高クラスである。レーダーから隕石の反応が消失した。


「よしっ! こちら【レイヴン】、隕石を4個の排除が完了した。俺も帰還しま……」


 アックスが連絡を終えようとしたとき、レーダーに新しい反応が出現した。


「……失礼。こちら【レイヴン】、新しい異物の反応を確認した。ただちに対応を開始する」

〔アックス、了解だ。こちらでも【解析隊】が詳細を確認中だ〕


 通信を切り、再びレーダーを確認する。新しい異物の反応は、蛇行だこうしながらこちらへと近づいてきている。


「この動き……隕石じゃないな……。宙流生物ちゅうりゅうせいぶつか」


 宙流生物とは、宇宙に漂っている生物を指す。無害なモノもいるが、中には地球の環境破壊活動を行うモノも多く存在している。【地球圏管理局】では宙流生物を識別するための名称と分類分けをしてリスト化している。宙流生物は基本的に排除対象として位置づけられている。


明光炸裂弾みょうこうさくれつだんで様子見だな……」


 目の前にある無数のボタンの中から、透明なカバーが被せてあるボタンを見つけると、カバーを上げ、ボタンを押した。弾丸は暗闇へ消えていった。数秒後、暗闇がまばゆい光で照らされ、宙流生物の姿があらわになった。


「こちら【レイヴン】、宙流生物の姿を確認。識別名称は【ドラゴネイク】、分類はAランク害悪生物。排除します」

〔宙流生物だと……!? 了解、頼む〕


 アックスは機体を宙流生物の近くへとゆっくり移動させる。『生物』というだけあって、簡単に排除はできない。普通ならば。


「【ブレイド】を使ってくか……」


 【ブレイド】は近接戦闘時に使用する、剣の形を模した武器だ。流石のアックスも、機銃での排除には自信がなかった。確実に排除するための選択が【ブレイド】だった。

 座席の横のレバーを強く引くと、機体の後部からアーム部分と【ブレイド】が出てきた。それと共に座席横の収納ケースが開く。そこには【ブレイド】を操作するためのデバイスが置いてあった。それを手にはめ、電源を入れる。これで【ブレイド】を使用する準備が完了した。

 このデバイスは、直感的に【ブレイド】を操作することを実現している。デバイスを手にはめると、手を振るだけで【ブレイド】も連動して動くようになっている。

 左手で操縦桿を握り、一気にブレイドの攻撃可能範囲まで近づく。下手したら、宙流生物からの攻撃によって一瞬にして『死』に至る行動だが、アックスは冷静に操作を続けた。【レイヴン】の存在に気づいた宙流生物は、機体に咬み付こうとしてきた。それを紙一重でかわすと、頭部を真っ二つに斬った。続けて胴体を斬ると、宙流生物から距離を取った。


 手応えはあった。


 レーダーを確認すると反応は消えている。一応、再度宙流生物に近づき、排除の確認を行う。3つに分かれた【ドラゴネイク】の残骸ざんがいが漂っていた。それを機銃で完全に排除すると、アックスは大きく息を吐いた。


「はぁー……。こちら【レイヴン】、宙流生物1体の排除を完了」

〔ありがとう。予想外の事態でも冷静に対処できるのは流石と言ったところか。帰還してくれ〕

「了解です。【レイヴン】、帰還いたします」


 残るは、タイガとフェルウェインだけだ。


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