第2話

「えっと...」

「お客さんですよね!どうぞどうぞ!」

「え、いや、あの、君は...」

「こっちですよー」


 謎の少女に腕を引かれながらあれよあれよという間に居間らしきところに連れてこられた。机と座椅子だけのシンプルな和室。だがいかにも作家らしい。そして、座椅子には一ノ瀬時雨が─────


「お父さん!お客さんだよー」

「小春が連れてきてくれたのか。ありがとう。」

「.........え、あ、え?お、おと、おとと...」


 今、この子は何と言った?おとうさん?お父さん...?お父さん!?

 俺は開いた口が塞がらないとはこういうことかと身を持って理解した。


 確かに、年齢的には娘がいたっておかしくは...ない。だが、そういう話など一切聞かなかったし。

 ミステリアスな人ではあるけども!!


「お前が五十嵐睦月?」

「えぁっ!?は、はい!」

「おとーさん、小春、あっち行ってた方が良い?」

「ん?いや、ここに居て良いぞ。ほら、こっちにおいで。」


 また、目を見開く。

 あんな優しい顔をした一ノ瀬時雨は見たことないぞ...。何だろう。あのでれでれの顔。


 胡座をかき、娘を膝の上に乗せた一ノ瀬時雨は愛しそうに娘を見ている。


 ああ。やはり父親なんだな。


「あ、五十嵐睦月と言います。これからよろしくお願いいたします...!」

「....いや、まだ決めたわけじゃない。」

「へ?」

「これから話すことを聞いて、それでもここに居られるというのなら、置いてやる。」

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一ノ瀬父娘は普通じゃない あも @Huzisaki

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