第39話 心の傷、癒えない爪痕 6/7

 色々やっている内にもう二二時半になっていた。そろそろ寝ても良い頃だろう。この時間帯になると心配になってくることがある。

 そうミーナの事だ。現に面持ちが暗くなってきている。

 昨日の事があったとはいえ本人からは言い出しにくいだろう。かと言ってあからさまにこちらから言うのも良くないし、ましてや行動に出すのも駄目だろう。


 こういう時は少ない言葉で伝えた方がいいのだと私は思う。


 事は掘り下げない、掘り下げると痛みが出る。

 相手の今、正に今、辛い悲しい寂しいというそれだけを受け止める。

 それらの証拠や根拠をミーナが言う必要などない。

 それらを受け止めるために証拠や根拠を私は求めない。

 そしてそれらが分かっていても言わない。阿呆なりに出る言葉は一つだ。


「私のそばが落ち着ける場所なら何も言わずに使ってくれていい」


 飾らず構えずいつもの調子で言った。

 これが私に出来るたった一つの事だろう。

 これ以上の事は阿呆な私には出来ない。


 私の顔を見て膝から崩れ落ちかけたミーナを抱かえ、部屋のベッドに横たわった。

 ミーナはとても小さくそして脆い。治っては崩れる、それを繰り返している筈だ。


 崩れてしまったミーナの落ち着く場所が私ならば私はそれであり続ける。

 それ以外何も出来ぬ阿呆故に。


 やがてミーナは眠りにつき、私も明かりを消して眠りについた。

 睡魔は大忙しだろう。

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