備忘録 第二章までの設定・登場人物まとめ

舞台設定など


香川県船出市

 物語の舞台。モデルは坂出市。

 瀬戸内海沿岸に位置し、多くの工場が建ち並び船舶が行き交う工業都市。しかしバブル崩壊や外国企業の台頭を受けて工場が閉鎖、その後は慢性的な人口減少に悩まされている。最盛期は7万人近くが居住していたが現在は5万を切っており、駅前を除いて過疎が進んでいる。

 新市長がかなりの強硬派であり、緊縮財政を公約に当選した。市職員の削減や私有地の売却、そして郷土博物館の閉鎖と話が進んでいる。

 伝統産業として塩田があり、江戸時代には高松藩の庇護で大きく栄えた。他に雨が少なく水はけの良い土地を利用した畑作が盛んで、讃岐うどんも零細の名店が多い。造船所や化学工場が今も稼働しているが、全盛期に比べるとかなり下火。

 観光業はあまり盛んではなく、旅行者にとっては素通りするだけの地域となっている。

 マスコットキャラクターはえんでんおじさん。ゆるキャラっぽさの無いただのおっさんともっぱらの評判。


船出市立郷土博物館

 船出市の所有する博物館。民具を中心に歴史資料を所蔵している。開館は1987年で、教育委員会が運営。

 かつて好景気の頃に設立されたため規模は意外と大きいが、現在は校外学習に利用される程度で人の入りも疎ら。入館料は大人250円で中学生以下は無料。休館は年末年始および月曜日、祝日の翌日など。

 職員は館長と市職員2名、嘱託職員の計4名のみで、他に委託業者の清掃スタッフが来る。2階建てであるが使われていない部屋も多く、常設展示も長らく変更されていないため、じっくり見ても1時間は潰せない規模に落ち着いている。収蔵品は4万点と言われているが、長らく倉庫にしまいっぱなしである。市職員にとっては「癒しの空間」と呼ばれている。

 年間5000人という来館者数が市議会で槍玉に挙げられたため閉鎖の話が進んでいるが、今年度5万人以上の入館を条件に存続を勝ち取った。

 物語開始時点では学芸員が常駐していなかったため、博物館法上では博物館類似施設となっていた。


船出市の歴史

 江戸時代 高松藩の支配下。製塩業が栄える

 1890年 町村制により船出町が発足

 1940年 周辺複数の町村と合併、市制により船出市となる

 1960年代 沿岸部を埋め立てて工業地域として整備し始める。以降市の産業の中心に

 1980年代 最盛期。人口7万人を突破するが、日米貿易摩擦により以前ほどの成長は滞る

 1990年代前半 バブル経済崩壊。複数の工場が閉鎖され、人口が減少に転ずる。

 2018年 人口5万人足らずにまで減少。税収も激減し、6月の市長選で緊縮財政を公約に松岡市長が当選する。


船出市議会

 船出市を運営する市議会。毎年2月、6月、9月、12月に定例会が開かれている。議員定数は20。


船出市教育委員会

 船出市の教育委員会で、5人の教育委員が選出されている。新市長はまだ委員の選出を行ったことはない。

 学校だけでなく博物館やキャンプ場、運動公園も管理している。緊縮財政を掲げる市長とは折り合いが悪い。




登場人物(年齢は物語開始時点)


辰巳あずさ

 船出市博物館の嘱託職員でこの小説の主人公。船出市生まれ船出市育ちの19歳の女性で159cm。普段は受付で居眠りと戦う日々。高校卒業後、非正規の嘱託職員に採用され、もうすぐ丸一年が経過する。

 のんびりと張り合いの無い職場に慣れきっており、早く結婚相手を見つけて寿退社したいと漠然と考えていたところ、博物館閉鎖の報せを聞く。

 愛想はよく受付として周囲から可愛がられているが、腹の内は意外と打算的。

 中学高校と吹奏楽部でクラリネットを持っており、今でも時々吹いている。

 化学工場勤務の父、専業主婦の母、高校生の弟の4人暮らし。生まれてからずっと船出市で暮らしている。


シュウヤ

 28歳のポスドク。177cm。

 船出市出身の男性。東京の大学院で歴史学を学び、地元の歴史研究のために戻って来た。

 小さい頃から郷土博物館が好きで、今も足しげく通っている。現在は研究資料を閲覧しに博物館に通っている。

 中学生の頃に森重館長のフィールドワークに参加し、近隣の山城跡地を見学、本格的に歴史研究者になることを志す。

 郷土博物館閉鎖の動きを知ると断固反対し、署名運動をするなど真っ向から市長と対立していた。彼の尽力によって来館者5万人をクリアすれば存続の約束を得た。

 在学中は頻繁に東京国立博物館に通っており、またそこでインターンを受け学芸員資格も取得している。

 高校大学と登山部に所属していたため、体力は結構ある。だが怪談は大の苦手。


森重館長

 地元の歴史を長く研究してきた中学社会科の元教員。72歳だがまだまだ元気で、去年から館長を務めている。しかし博物館経営に関しては素人。

 子ども向けのフィールドワークにも参加しており、街の歴史を教えて回っている。むしろそっちの方がメインで平日も休日も引っ張りだこであるため、博物館の運営まで手が回り切っていない。

 眼鏡をかけたぽっちゃり禿げ頭のお爺ちゃんで、いつもにこにこした見た目通り温厚な性格だが、市長の強引なやり方には頭を抱いている。


渡辺里美

 市の正規職員。大卒直後から船出市に務めている32歳。あずさ曰く30代とは思えない美人の165cm。

 以前は人事課での激務もバリバリこなしていたが、現在は異動して博物館で勤務している。なお旦那も市役所の会計課に所属しており、同期の中でも出世頭と言われている。

 保育園に5歳の子供を預けており、毎日送り迎えしている。


池田航

 博物館に出向している市職員で35歳の独身。166cmの小太り。人当たりが良く憎めない愛されキャラ。


松岡市長

 船出市の市長。60歳の退職と同時に市長選に立候補し、一発で当選した。フルネームは松岡才蔵。

 神戸大学経済学部を卒業後、地元信用金庫に就職。そのまま出世を続け、ついには理事長まで上り詰めた。

 緊縮財政を公約に当選し、かなり強硬な締め付けを行っているため市職員からの評判は良くない。だが信用金庫時代に培った人脈のおかげで地元商工業界からの支持は圧倒的。

 シュウヤとの論争の末、来年度の博物館の入館者数が5万以上になれば閉鎖の議案を出さないことを約束する。


宮本教育長

 船出市教育委員会のトップで58歳の女性。博物館やキャンプ場など市内の教育施設を管轄している。小学校教師でもあり、前任校では校長も務めた。10年前、小学生だったあずさの担任でもある。

 何よりも子どものことを真っ先に考える人で、穏やかな性格の持ち主だが、教育予算を削る市長には強く反対している。


掃除のおばちゃん

 博物館に委託を受けている清掃会社の職員で60歳。職員とも親しく、あずさのことは実の娘のように可愛がっている。

 長く専業主婦をしていたが子供も独立したため、非正規雇用で働いている。3歳の孫もおり、渡辺さんから育児について相談を受けたこともあるらしい。


佐々木哲哉

 地元の交番に務める警察官。階級は巡査で23歳182cm。高校を卒業してからずっと警察官。

 あずさの従兄で、母親の姉の息子に当たる。小さい頃からよくいっしょに遊んでおり、あずさからは今も「てっちゃん」と呼ばれている。

 見た目は良いがちょっと抜けた感じの苦労人で、いつも貧乏くじを引いている。


石塚さん

 シュウヤに次いで博物館ボランティアの代表を務める70歳のお爺さん。元市役所の職員で、市の今のやり方が気に食わないという理由でボランティアに参加。

 実は30年前の博物館設立に際し、最も動いていたメンバーの一人で、博物館に強い愛着を持っている。


あずさの父

 坂出市内の化学工場に勤める50歳で179cm。生まれは徳島で農家の次男。

 高校卒業後就職のため坂出に移り住み、30年以上工場で働き続けて一家を支えている。あずさが生まれてしばらくしてから自宅を購入。ローンも着実に返済している。

 仕事に関しては妥協しないが、家ではおおらか。


あずさの母

 専業主婦の46歳。坂出生まれ坂出育ちで154cm。短大卒業後、事務員としてあずさの父と同じ工場に就職し、社内恋愛の末結婚した。

 家ではのんびり屋の夫と違い、かなり几帳面。


あずさの弟

 丸亀市内の高校に通う高校1年生。男子バスケ部に所属し、ポジションはポイントガード。だが身長は168cmとバスケ部としてはやや小柄。

 年相応の短絡さは備えているが、これでも成績優秀で東京大学理科一類を狙っている。


えんでんおじさん

 船出市の公式マスコット。いわゆるゆるキャラで6年ほど前から採用されているが、実際ただのおっさん。一部ゆるキャラマニアの間ではそれなりに有名だが、一般受けは最悪。

 着ぐるみは市役所の観光課が管理している。

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