第12話 武具作製(金砕棒)

 さて、まずは造り難そうな鎧よりも簡単そうな金砕棒を造ろうと思う。

 とはいっても、型を作った後そこに溶かした金属を流し込むだけなんだけれども。

 というわけで次はできた金砕棒(青銅製)にルーン文字を刻んでいこうかと思う。

 刻む文字はもちろん打破する力や克服を意味するルーンであるN《ニード》である。

 これが武器に刻まれているのとないのとでは打撃力はもちろんのこと破壊力も段違いになってくる。

 ルーンを刻む人の熟練度にもよるが授業を担当していたベーレンス教官がルーンを刻んだ石斧は鋼鉄でできた鎧を一発でひしゃげさせたあげく穴を開けていたのだからその違いは一目瞭然のものであった。

 Nを金砕棒に刻み終えた後、今度は停止や忍耐強さを意味するルーンであるI《イス》を俺は金砕棒に刻んでいった。

 これはトレントとの戦闘によってメイスが壊れてしまったことを反省してできるだけ壊れにくい武器を作ろうという考えからである。

 N《ニード》とI《イス》の文字を刻み終えた後は最終チェックとしてルーンがちゃんと発動するのかや効力はどの程度か、武器として扱いにくくはないかなどを見て問題がないとわかると俺は一度休憩することにした。


◇◇◇


 休憩を終えた俺は次に鎧を造り始めた。

 俺が覚えている鎧兜はこどもの日に出す五月人形であり、小学校以来まったく見ていなかったのではっきり言って鎧兜の姿形どころか色合いすらうろ覚えであった。

 なので俺は日本人が持っている漠然とした鎧兜の姿形を基にこの世界の鎧兜の知識や技術を用いて再現を試みることにした。

 この世界の鎧兜は日本人が西洋甲冑としてまず頭に思い浮かべるであろうプレートアーマーまたは俗にフルプレートアーマーと呼ばれる全身を覆うものが一般的であると思われるだろうが実際は異なる。

 なぜならこの世界は前世とは異なり姿かたちの異なる多種多様な人種たちが存在しているからである。

 それ故にその種族ごとの姿かたちや戦闘方法によって様々あり一様にこれといった鎧は存在しないのだ。但し武器の代表格と言ったら剣という謎の常識は存在するが。

 それに少し考えてみてほしい、樽型体型で手足が短いうえに鈍足なドヴェルグが全身金属鎧など来たものならその足の遅さに磨きがかかるどころが歩くのすら大変になるだろうことは想像に難くないだろう。

 そのため今回は防御力よりも軽さや扱いやすさを重視したものを造っていくことにする。

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